時を稼ぐ男 新時代の時間とお金の法則8
(画像=PIXTA)

Q 事業性評価というキーワードを聞くけど、どうして必要とされているの?どんなスキルが必要なの?

A 昨今の金融業界では「事業性評価」という言葉を日常的に耳にする。日常的な業務として金融機関の行職員に普及してきたが、導入の経緯や本質的な意義を理解していなければ、事業性評価は形式的な取組みにとどまってしまう。地域金融機関の現場の状況を見聞きしている筆者からすれば、事業性評価の考えはまだまだ浸透しているとは言い切れない。

事業性評価という言葉が表立ってきたのは、2014年ごろだ。この年に金融庁は、現在の金融行政方針に当たる「平成26事務年度金融モニタリング基本方針」を公表、重点施策の1つに「事業性評価に基づく融資等」を挙げた。

そこで事業性評価という言葉は、財務情報や担保・保証に必要以上に依存することなく、借り手企業の事業内容や成長可能性などを適切に評価することとして説明されている。すなわち、取引先企業に対して、過去の財務ばかりでなく企業の事業を分析したうえで将来キャッシュフローを把握すること、さらにその分析を活かして融資する「事業性評価に基づく融資」の重要性を説いたのだ。

こうした取組みが求められる背景には、地域経済の中核を担う中小企業を支えることこそ、金融機関の使命である――という考え方がある。そのカギを握る考え方が事業性評価だ。金融機関の担当者には、事業性評価が大きな期待が込められた取組みであることを改めて認識してほしい。

筆者は、これからの金融機関が取り組むべき本業は、企業の資金繰り支援にとどまらず、企業や産業の成長を支援するために借り手企業の経営に関する助言も欠かせないと考える。その文脈で必要とされているのが、事業性評価に基づく融資や、企業に寄り添い継続的に経営支援を行う「伴走支援」といえよう。

One Point
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