
(画像=PIXTA)
役員の役割を問うことから組織の“襟”を正すサポートができる
筆者は、企業の顧問として社長と向き合う際に必ず、「御社の専務・常務はそれぞれ経営において何をする人ですか?」と質問している。中小企業でこの質問に明確に回答できる社長は稀(まれ)で「専務は副社長で、常務は経理部長をしています」といった回答が大半だ。
しかし筆者は、組織図上の職位を問うているのではなく、「経営における役員としての役割」を聞いている。例えば、「専務は現場統括の立場として対応可能な現実論を述べる存在であり、常務は徹底した顧客目線の立場から理想論を述べる存在である」といった回答がほしい。
企業の意思決定は、役員間でなされる理想論と現実論の討議を踏まえ、社長が決定する——という形であるべきだ。専務・常務の本質的な役割は、担当部署の実務をこなすだけでなく、意思決定プロセスの一翼を担うのが望ましい。
基本的なことだと思われるかもしれないが、実際にその答えが返ってこないのだから、社長の知識不足では済まされない深刻な問題だ。そのような企業は適切な意思決定を行っておらず取締役会などの経営会議が機能していない状態だ。実際、経営会議とは名ばかりで、「社長の一方的な目標発表会」というケースが大半だ。そもそも経営会議を行っていない中小企業もある。こうした中小企業の実態は、支援する側の金融機関が再認識すべき問題であると筆者は思う。