
受注余力捻出のためムダ削減に悩む取引先~7つのムダによるムダ探しと削減
今回取り上げる取引先は…
ムダを削減して受注する余力を作りたいA社
事業内容:バッグメーカーからの受託生産、自社ブランド製品の企画・製造・販売
資本金2,500万円、年間売上高は約5億円、従業員は50名。
主要取引先はバッグメーカー、バッグ小売店
A社は、大手バッグメーカー数社を受託元とする低価格品受託生産(受託事業)と、高品質・高技術を活かした自社ブランド品の企画・製造・販売(自社事業)の2事業を運営する革製品メーカーである。直営店を始めるなど自社事業を強化する一方で、製造ラインに余力がないものの安定受注が見込める受託事業は、現状の受託生産量を維持して継続する方針であった。
しかし、受託元からの「受託生産量を増やせないか」という強い打診を断れず、A社は「ムダ削減で受託生産量を増やす余力を作れないか」と考え、現状のムダ探しを始めた。最初に、売上高に対する材料費や労務費、在庫の比率を調査した結果、材料費と在庫の比率が増加していた。次に、増加していた材料費と在庫の動きを中心に現場観察し、次の状況を確認した。
A社では、受託元から製造依頼があると、受託元とA社の営業部門で、受託量やデザイン、材質、価格、納期などの詳細を打ち合わせ、製造を開始する。製造開始後に受託元の都合で受託量の追加やキャンセル、仕様変更の連絡を営業部門が受けたときに、余力のない営業部門から工場への連絡の漏れや遅れがあり、製造ラインが混乱することが多い。生産管理担当者は、混乱軽減のため受託量の追加を見越して受託量より多めの製造を計画している結果、余った製品が在庫として増えている。
受託事業の製造ラインは、裁断→縫製→仕上げ→最終検査→包装・出荷の5工程である。裁断工程では、コンベア上を流れてくる材料の革を、パーツごとに型で抜き取っているが、コンベア上の革の状況により、抜き取った革パーツのサイズに微妙な誤差がでることがある。抜き取った革パーツのサイズ確認には明確な数値基準がなく、職人の勘と経験に頼っており、熟練職人以外が確認すると微妙な誤差を見過ごすことがある。微妙な誤差が見過ごされた革パーツは、縫製以降の工程を進み、最終検査工程で不良と判定され、不良率が増加している。