株式投資の定着に不可欠な利益と配当の安定的な成長
(画像=PIXTA)

業態・業種を問わず事業に影響が生じる目下のトピックについて、金融機関として押さえておきたい前提知識を解説する。

①外国為替 

輸出増の恩恵が少ない円安

目下、「悪い円安」論が盛んになっている。4月28日、日本銀行・黒田総裁による記者会見中、一時ドル円レートが131円台をつけたことでさらに関心を集めた。ただ、ドル円だけに注目するのは望ましくない。

「実効為替レート」は、国際決済銀行(BIS)が作成し、日銀統計にも使われる計数だ。貿易に焦点を当てると、日本の取引は米国だけではなく多数の国に及ぶ。そこで多数の国との貿易額(そのウエイト)を踏まえ、貿易の実態を反映した為替レートの指数を作成する(名目実効為替レート)。自国内の物価上昇が抑えられたほうが輸出には有利になるため、物価を反映した指数を作成している(実質実効為替レート)。

60の国・地域を対象に作成された実効為替レート(数字が大きいほど円高・小さいほど円安)を見ると、2022年3月時点の実質値は統計開始の1994年と同程度で、名目値では実はそれほどの円安水準ではない。リーマン・ショックや東日本大震災後の「円回帰」時期を除けば標準的な水準ともいえる。この間、中国や東南アジア諸国などの新興国が経済発展を遂げたことを考えると、むしろ「円安は思いのほか踏みとどまっている」といえるだろう。

「名目実効為替レートとの比較上、実質実効為替レート低下」が何を意味するか。「国内での価格転嫁は進んでいないが輸出する際の価格は抑えられるので輸出には有利な一方、国内の企業・工場の海外移転で輸出が伸びにくい」という構造だ。両レートともに変化の速度が速く、企業は事業見通しが立てにくい状況にある。リスク回避の姿勢となり、設備投資に影響が出かねない。

金融機関としては、資金繰り支援などのショックアブソーバー機能のほか、為替レートが円安に振れることで有利になる海外資産・外貨建資産の評価が重要になる。

近代セールス
(画像=近代セールス)

②資源・原材料