コロナ禍で働き方や暮らし方を見直す動きが広がる中、注目を集める地方の空き家。投資物件としても価値が高まり始めていますが、その実態や将来性はいったいどうなのか。前編に続き、空き家活用株式会社の代表取締役 和田貴充さんにお話をうかがいました。

空き家活用株式会社 代表取締役 和田社長 インタビュー
(画像=YANUSY編集部)

目次

  1. 投資に環境的・感性的な価値を足していく
  2. ただ貸すだけではない可能性が空き家にはある
  3. 今その町にあるものでまちづくりの役に立ちたい

投資に環境的・感性的な価値を足していく

――地方に貢献するという意味ではマンションへの投資でも空き家と同じようにメリットは得られるのでしょうか。
いえ、マンションよりも絶対に戸建てにすべきです。考えてみてください。地方に移住したいと考える人がわざわざマンションに住みたがるでしょうか。せっかく田舎で暮らすのであれば、多くの人は庭付きの戸建てのような物件に住みたいと考えるはずです。庭で畑をつくったりできたらもっといいでしょうね。

――マンションの利回りに関して価格との釣り合いがとれなくなってきているという状況もあります。そうしたことも空き家への注目につながっているのでしょうか。
それもあるかもしれません。投資用マンションが供給過多になる中、もし同じような立地や間取りの物件ばかりを複数所有した場合、一つの物件の利益率が下がったら他の物件も同じように下がりかねません。需要が満たされているところで同じような物件を買っても、いずれ空室で悩むだけなんです。それなら、利回りが多少低くても立地のいいところで買うほうが圧倒的にいい。

「サラリーマン投資家さんでもしっかり収益が回せますよ」というような説明をされて都内のマンションを買ったけれど、実際そこまで利回りはよくなかったというような経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。営業に言われるままに購入するのでなく、きちんと自分の意思を持って投資をすることが僕は重要だと考えています。人と同じようなものではなく、個性的で少し尖ったぐらいの収益物件を持つということですね。地方の空き家や古民家なら、それが実現できるのではないかと想定しているんです。

――きれいさや高級さにどうしても価値観が向きがちですが、そうではないところに価値観を見出すということですね。
はい。お金一辺倒で考えるから、うまくいかなくなってしまうということもあるのかなと感じています。その土地の人は気づいていない「埋蔵不動産」の魅力に都会に住んでいる人が気づき、お金というよりも空き家そのものの魅力に対して投資をする。それはその地域を盛り上げることや活気づけることにつながりますし、儲かることにもつながります。

そんな発想で、お金儲けや老後の資産というところからもう少し視野を広げて考えていただきたいですね。投資にお金の価値だけでなく環境的な、または感性的な価値を足していくというか。もちろん損をしてはいけない、儲けないといけない部分はあるでしょうが、お金だけではない、豊かさも踏まえた投資物件、収益物件を時代は求めているのではないか、それを叶えるのが空き家ではないかと考えています。

空き家活用株式会社 代表取締役 和田社長 インタビュー
(画像=YANUSY編集部)

ただ貸すだけではない可能性が空き家にはある

――地方ならではの、また戸建ならではの活用法もありそうですね。
普通賃貸だけではなく、民泊や部分貸し、シェアハウスといった貸し方もあるでしょう。空いている期間は自分が使ってもいいし、イベントに使うような貸し方でもいい。

たとえば、イベントに1ヵ月貸して、その1ヵ月で3ヵ月分の家賃を稼いでくれたら、あとの2ヵ月は貸さずに自分で使うということもできるかもしれない。住まいとしてだけでなく、そうしたコンテンツによって全体収益を上げていくという可能性も視野に入るでしょう。

――他に和田さんがご存知の空き家の活用事例はありますか?
まだ検討レベルのものもありますが、ゴーストレストランやシェアハウス、コワーキングスペース、図書館などのアイデアがこれまでにありました。また、カフェや障害者向けの老人ホーム、グループホームなどを手掛ける事業者からのお問い合わせもあります。集会所やサードプレイス的な使い方もあるでしょうね。

――空き家活用に関して、もしデメリットがあるとしたらどういったことが考えられますか?
地方の木造物件の課題はファイナンスです。ファイナンスさえクリアできれば、利益率、収益率の高い空き家はいくらでもあると想定しています。地方には賃貸物件が圧倒的に少なく、あったとしてもほとんど発信されていません。その状況を考えれば、300万円~500万円ぐらいの価格で購入でき、収益率10%程度で回せるような地方の物件をつくれば、住む人は必ずいると僕は考えています。

ファイナンスがつきにくい現状は、当社でもなるべく早く打破したいです。地方銀行に保証していただき地方創生の観点で貸し出すような仕組みをつくってファイナンスが回れば、地方の空き家市場を十分に活性化できると感じています。

あとは、そもそも空き家の情報がまだまだ少ないですね。家族との関係や本家の問題などによる心理的な要因から所有者がまだ意思決定できていないケースも多くありますし、歳を取ると思い入れが増してどんどん売れなくなってくるんですよね。

若い頃はそうでもないけれど、40歳、50歳、60歳になってくると、感傷的な方向に気持ちが向かってしまう。それで対策が後手後手になってしまうんです。「こんな家は誰も相手にしてくれないだろう」と思って放置をしたままになっていたり、所有者自身が空き家の魅力に気がついていなかったりということも珍しくありません。そこは僕らが一生懸命動いて、価値を広く知ってもらう努力をしていかないといけませんね。

今その町にあるものでまちづくりの役に立ちたい

――今後の展望について教えてください。
空き家に関する相談窓口があることをもっと広く知らしめていくこと、また、引き続き空き家を掘り起こすことを続けます。その中で目指すのは、ただ空き家を売り買いするということではなく、空き家からまちづくりへつなげていくということです。

新しく建てるのではなく今その町にあるものを使い、点で動くのではなく点と点を線でつなぎ、町を面として変えていくことで、まちづくりの役に立つ。それが大きな目標です。

ただし、そのためにはやはり金融の仕組みが不可欠だと考えています。地方銀行のお話もしましたが、それ以外にもいわゆる地方創生ファンドのようなものや、クラウドファンディングプラットフォーム、ふるさと納税の仕組みを使うことなども考えられます。何がベストかはこれから検討していきますが、金融の仕組み化には必ず取り組んでいきたいと考えています。

また、空き家の課題は世界中にあるものですので、日本という社会課題先進国の中でこの課題が解決できれば、いずれ世界に向けてグローバルにサービスを提供していくこともできるでしょう。そんなことが実現できる会社へと成長していきたいです。

空き家活用株式会社 代表取締役 和田社長 インタビュー
(画像=YANUSY編集部)
和田貴充(わだ たかみつ)
1976年生まれ。大阪府摂津市出身。20歳で父が他界し事業を継承するも4年で多額の借金を抱え廃業。24歳で不動産業界へ飛び込み、2010年に株式会社オールピース、2015年に空き家活用株式会社を設立。自社が開発した調査アプリケーションを使用し16万件という膨大な空き家データを収集。そのノウハウを活かし、自治体が自ら調査し閲覧・管理ができるアプリケーション「アキカツCLOUD」を提供。YouTube「ええやん空き家やんちゃんねる」では空き家情報を発信し利活用希望者とマッチングを実現。3ヶ月で登録者10,000人超え、現在は総動画再生回数130万回を突破!

(提供:YANUSY

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