
大手との薄利多売競争に悩む取引先~相乗積による粗利益率シミュレーション
今回取り上げる取引先は…
厚利少売商品カテゴリ強化で大手と差別化したいB社
事業内容:首都圏郊外の単独店舗で営業するホームセンター
資本金5,000万円、年間売上高10億円、従業員数50名。
主要顧客は地元住民
B社は生活雑貨店として創業し、3代目の現社長が首都圏郊外への進出に伴って中小規模のホームセンターへと転換させた。DIY(自分で作る日曜大工)ブームに乗り、目的や用途に応じた多種多様な電動工具や木材・クギ・ネジの商品カテゴリ(DIY品)の厚利(高粗利益率)少売で展開しており、その弱点である来店頻度の低さは、日用品や園芸用品という商品カテゴリ(普段使い品)の薄利(低粗利益率)多売で補ってきた。
B社では工具の修理も行っており、DIYに詳しい従業員が多い。DIYについて、基本的な家具の作り方や工具の使い方、材料の選び方から高度な木工技術まで相談可能で、趣味でDIY制作動画を公開している従業員の相談対応は評価が高い。一方、店内ではメーカー制作の高価格電動工具の性能を宣伝する動画を流しているが、視聴する顧客は少ない。接客時に感想を聞いたところ、「使用時の高揚感がわかない」「完成品イメージの違いがわからない」などの回答があった。
近年、若いファミリー層などの人口増加が著しいB社周辺に、大型店が進出してきた。B社のような「普段使い品」に加えて「加工食品」を薄利多売で展開する大型店へと、B社の低価格志向顧客が流出している。また、使用頻度が低い高価格な電動工具を買って保有し続けることに疑問をもつ消費者や、高価格品の定額使用やレンタルを利用する消費者が増えている状況だ。
現状に危機意識をもったB社社長は、大型店への対抗策として、①現状の薄利多売の普段使い品重視から厚利少売のDIY品強化に転換するか、②薄利多売の普段使い品強化にシフトするかで悩んでいた。DIY品強化に転換する場合、「店舗全体の粗利益率が現状から4%以上増加すれば、転換に伴う増加費用を吸収できる」という試算が出たことで、B社は粗利益率のシミュレーションを始めた。