資金使途別 運転資金の案件発掘&適正額を見極める確認の進め方 1,2
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運転資金を使途別に分け、それぞれ見込先の開拓方法と、適正額の基本的な考え方を解説する。

①経常運転資金

多くの企業が見込先だが決算書の内容だけでなく資産の実態にも注目

小売業などの業種を除いた多くの企業では、商製品やサービス受渡し後の代金決済について、事前に取り決めた条件に基づき掛金や手形として処理している。商製品は作られてすぐに売上とはならず、販売機会を逃さないようにする在庫として保管される。商製品が売上となり、その代金が回収されるまでのタイミングには通常、ズレがあるものである。

これは支払いについても同様で、実際に原材料等を仕入れてからその代金を支払うまでの間には時差がある。一般的には売上債権(売掛金、受取手形)の回収に対して仕入債務(支払手形、買掛金)や人件費などの諸経費の支払いが先行することがほとんどだ。経常運転資金(正常運転資金)とは、その差を埋めるための資金である。

経常運転資金の融資見込先は、「常に売上債権や棚卸資産、仕入債務が確認できる企業」といえる。つまり、多くの企業が提案の対象だ。

経常運転資金は経常的に発生するので、約定弁済を求めず、主に当座貸越あるいは手形貸付で対応する支援の形が理想的だ。期日到来ごとに再度必要額を算出し、継続支援していこう。貸借対照表に受取手形の計上があれば、手形割引での支援も考えられる。

しかし、現実には約定弁済付きの証書貸付での対応が多いだろう。あらゆる資金使途に対してすべて証書貸付(ほとんどが信用保証協会付き)では、収益力の低い多くの中小企業では返済能力を超えた返済額となってしまい、資金繰りは不安定になる。もしこうした企業があれば、短期継続融資を提案し、返済額の適正化まで支援したい。

もし自行庫が証書貸付以外の融資に消極的であれば、返済分を含めた増額借換えが迅速に行えるよう、定期的に資金繰りについて経営者に確認しよう。

資産性まで加味して適正額を見極める