
資産運用における課税に馴染みのない層は、今後注意が必要になる可能性も。
GWの遊説中、ロンドンの金融街シティで岸田総理が「インベスト・イン・キシダ」と資産所得倍増プランを掲げた。「所得倍増」と聞いて、高度経済成長期、池田内閣下での所得倍増計画が思い浮かんだ人も少なくないだろう。
ただし、今回の岸田総理のスピーチの英文に目を通すと〝Doubling Asset-based Incomes Plan〟という表現が使われている。アセット、つまり株式などの資産をベースとした所得を倍増させるというものである。
物価上昇に反して賃金上昇率が伸び悩む中、労働所得ではなく資産所得にこだわる姿勢や、そもそも投資に余裕のない世帯が多いことなどから、一部批判の声もあがった。しかし、改めて「骨太の方針2022」において、「貯蓄から投資へ」の路線を強調する格好となった。
具体的には、NISAの非課税枠の拡充や、iDeCoの加入年齢の引上げなどの改革が行われる予定である。
NISAは2014年に始まり、iDeCoは16年に愛称が決まったことで定着してきた。「税制優遇」を入口として投資に興味を持つ層は確実に増えてきたといえるし、「貯蓄から投資へ」の流れを作るうえで一定の役割を果たしている。
しかし、「非課税枠の年間120万円以上の投資はしない」「非課税枠が残っても繰り越せないから、残りの枠で年末にまとめて投資したい」といった具合に、NISAの設計上のルールが、特に投資初心者層の適切な意思決定の妨げになっている傾向もある。今後の制度改正では、そういった投資家の動きも踏まえた改善に期待したい。
なお、併せて「金融リテラシーの向上」についても触れられている。デジタルツール活用による情報提供や、金融商品取引業者等による適切な助言や勧誘・説明を促す制度整備がそれにあたる。銀行や証券会社がこれまでの経験を踏まえ、販売側でなく購入する顧客側に寄り添うことができれば、「貯蓄から投資へ」の流れで大きな役割を果たすことができるだろう。
