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融資を進める際に事業性評価に基づいた取組みが必要となる4つのケースを挙げて、それぞれの対応方法や提案の例を解説していく。
case1 担保・保証の提供は難しいが安定した顧客基盤のA社
仕入期間ごとの在庫帳を基に経常運転資金を算定し融資実行
A社は、宝飾品卸を営む年商5億円・経常利益800万円程の企業である。社長が同業大手から独立して約6年が経つ。順調に業績を伸ばしていたようでも、資金繰りは限界に達していた。個人資産を3500万円投下していながら現預金は底を突きかけていたのである。
社長は、将来的に年商を10億〜20億円まで拡大したいと考えていたが、業種柄とはいえ1億5000万円もの棚卸資産が資金繰りを圧迫していた状態。借入れは棚卸資産に対応する1億3000万円だが、マル保長期のみで、追加で提供できる担保はなく、銀行は追加融資が難しかった。
事業を拡大しようにも利益の範囲内でしか仕入れを増やせず、長期借入れの返済負担もあり、資金繰りは改善できない。また手元現預金が薄いことから、外的要因による売上減少が発生すれば、すぐに経営危機に陥りかねないという状況だ(図表左)。