事業性評価で使える雑談術
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Case4 直近は赤字だが成長が見込めるベンチャー企業D社

クロスSWOT分析で複数の成長戦略を見出し稟議の材料に

D社は幼児の知育玩具を貸し出す事業を展開しているベンチャー企業だ。定額のサブスクリプションをビジネスの主軸として創業したものの、2期目の決算では創業計画で定めた売上目標に届かず、赤字を計上していた。

そんなD社から、資金繰り安定のために運転資金の申し出を受けたのがY銀行だ。担当者はすぐに検討を開始。赤字を計上していたため、事業の成長性を精査し稟議に盛り込む必要があった。

事業の成長性を判断するためには、成功の鍵となる要因を見つけ出し、それを実行できるかを見極めなけれならない。そこで担当者はD社に関して、外部環境要因と内部環境要因を掛け合わせたクロスSWOT分析に取り組んだ。

まずはSWOT分析を実施した。D社は創業計画作成時に取り組んでいたものの、事業がスタートして初めて分かることも多い。D社の事業を取り巻く環境も変化していたので、改めてSWOT分析を行う必要があった。

分析のポイントは、「なぜ創業計画どおりの売上が達成できなかったのか」だ。そもそも計画(戦略・施策)自体に無理があったのか、施策は問題ないが実行力が伴わなかったのか――この両面から見ていく必要がある。

SWOT分析の結果は図表のとおりだ。この内容から、以下のことが判明した。

近代セールス
(画像=近代セールス)

①D社は「1歳からの知育教育」と宣伝していたが、競合他社は0歳からの知育教育プランを用意しており、顧客の囲い込みが遅れている

②コロナにより衛生管理の重要度が高まっており、レンタル品全般に対する信頼度の低さがネックになっている

③利用者アンケートなどからニーズを深掘り(細分化)したところ、IT教育や英語教育を見据えた小学校での知育教育のニーズが高い

④小学校入学前の5歳児向け知育プログラムの設計には、システムエンジニア出身の社員が設計に関わっており、特に意識はしていないもののIT教育を意識する顧客から評判が良い

強み×機会に成功要因を見出す