ビジネスチーム,銀行員
(画像=oka/stock.adobe.com)

5. 起業希望者
経営・管理ビザや入出金される資金の概要なども確認する

このケースでは、日本で起業したいという外国人からの口座開設依頼への対応について考えてみます。

ここでのポイントは、事業を行うための口座開設であること、そのために通常に個人ベースで行われる入出金・送金とは違った資金的な動きも想定されることです。これらの点について検討していく前段として、まずは外国人のお客様自身の本人確認情報などについて整理しておきましょう。

外国人が日本国内で起業(会社を設立)し、経営者として国内に居住し続けるためには「経営・管理ビザ」の取得が必要になります。この根拠法令は入国管理法であり『本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動(入管法別表第一の二表の法律・会計業務の項に掲げる資格を有しなければ、法律上行うことができないこととされる事業の経営又は管理に従事する活動を除く)』というように定められています。

経営・管理ビザ取得の要件も押さえておく

またこの在留期間は、5年/3年/1年(他に数ヵ月単位あり)となっています。この経営・管理ビザを取得するためには、次の要件が必要になりま す。

①資本金500万円以上(本人の全額出資が前提だが、親族等から借用した場合でも可)
②出資者兼取締役が1名以上(本人1名のみで可)
③住民登録しており、個人実印の印鑑証明書が取れること
④事務所もしくは事務所兼住居の場所を確保できること

これらの要件を充たすことを前提に、会社を設立した後に、外国人自身が「パスポート・在留カード、その他定款・株主総会議事録・事業計画書・税務上の法人開設届一式など」を添えて申請を行います。

したがって、外国人が起業を目的として預金口座開設に来店した場合には、在留カードなど通常の本人確認書類に加えて、経営・管理ビザの確認を行う必要があるのです。

それでは次に、起業を目的とする口座の開設依頼において、個人として利用する口座の開設に加えて留意・確認すべき点を考えてみます。

この口座が外国人の個人名義である場合、口座の開設目的・入出金される資金の性格が、個人の生活上の使途と事業に関連するものと二重になる可能性が高くなります。

もちろん一般的には、法人と経営者個人の資金の貸借などのやりとりがなく、分離されていることが望ましいことは間違いありません。

しかし実際には、多少の混在が発生しているでしょう。まして外国人であれば、日本国内において、あまり多くの預金口座やカードなどの決済手段を持っていない事情もあると思われます。

よって、法人と個人の資金的なやりとりがある程度生じることは、やむを得ない部分もあります。それだけに、事業において入出金される資金の概要について、あらかじめヒアリングをしておくことが大切です。

具体的には次のような点が挙げられます。ただし事業がレストランなのか、英語教室なのか、あるいは母国への中古車販売なのかで、相当程度に変わってくる点についてはおさえておく必要があります。

①どのような商売を行うか、主な商流を確認する