オピニオン 中小企業支援の現場から
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“死の谷”にあるスタートアップ企業は財務の基本で救い出せる

筆者は、企業の財務コンサルタントを担う事業を運営しており、企業によっては筆者自身がCFO(最高財務責任者)を務めている。単発の助言にとどまらないコンサルティングを提供しており、経営者の良きパートナーであろうと取り組んできた。そこでクライアントに主張しているのは、企業が倒産するのは赤字を出したときではなく、資金がショートしたときということだ。現預金を積み上げる必要性は強く説いてきた。

ただ、昨今動きの激しいIT領域、特に設立間もないスタートアップ企業は資金調達に対する誤解も多い。その傾向を述べるので参考にしてほしい。

まず彼らの資金調達は、ベンチャーキャピタルなどをはじめとするエクイティファイナンス先行型である。出資元は企業の成長性を重視して判断している。一方で金融機関の融資、すなわちデットファイナンスでは、ビジネスによるキャッシュフローが基本であろう。

ここで、誤解が生じてしまう。

売上高成長率は年平均で200%もあるのだが、営業キャッシュフローは数百万円程度で、自己資本比率は5%。1期赤字になるだけでも債務超過に陥りかねない…。そんなスタートアップ企業が非常に多いうえ、当の経営者は出資を受けたときの感覚のままで、売上が伸びれば金融機関から融資を受けられると思っている。これでは、商品開発後に事業化するまでに資金や人材などの経営資源が不足する“死の谷”と呼ばれる時期に資金繰りに窮してしまう。その結果、撤退する企業も多いのが現実だ。

単月・通期黒字の必要性からアドバイス