
今回取り上げる取引先は…
売価体系が複雑で来店客単価が伸びないI社
事業内容:豆腐の製造・販売
資本金300万円
年間売上高6,500万円
従業員数15名
主要顧客は地元住民
I社は高齢化が進む地方都市X市で、現社長の祖父が創業した豆腐の製造・販売会社だ。X市にある清流を水源とする地下水は良質な軟水で、滑らかな豆腐づくりに向いており、地元産大豆や地元の良質な水でつくる豆腐は品評会で度々表彰されてきた。現在でも地元丸大豆にこだわった高品質な豆腐を製造し、1丁ごとに自社店舗で販売している。
I社の豆腐は、廉価な凝固剤を使用する普及品の並豆腐と、天然にがりで凝固させる高級品に大別される。高級品は、鰹(かつお)だしや枝豆などの食材を加えた特上変わり豆腐と、何も加えない上豆腐とに分類される。特上変わり豆腐は、季節ごとに3種類から7種類程度を揃えている。各豆腐には絹と木綿の2種類があることや、厚揚げ・油揚げなど揚げ豆腐もあることから、多いときに20種類程度と多種類の商品を販売しており、店内は商品を選ぶ顧客でにぎわっている。売価設定は、各種類の豆腐の原価に一定の利益を加算するコストプラス法で行っており、売価は商品ごとに異なる。
豆腐の品質や味は地元住民の常連客から支持されており、I社は一定の業績を維持してきた。ところが、最近の原材料費をはじめとする各種コストの上昇はすさまじく、I社は売価・商品体系の再検討を始めた。顧客からは「売価と商品の種類が多くて買う商品を迷うときがある」「売価に見合う高級品の味か試せないので並豆腐ばかり買ってしまう」などの声が集まった。これらは、販売数が最も多いのが並豆腐であることや、店内観察でいろいろな商品を見ながら結局買わない顧客が一定数存在するという事実と一致している。I社では「顧客が迷わない」「味を試しやすい」点で売価・商品体系を見直し、来店客単価(来店客1人あたりの平均購入額)向上を図る方針を決めたが、売価・商品体系をどうすればよいか悩んでいる。