
Q&Aで理解する経営者保証の基礎知識
ここでは、経営者保証を理解するうえでの基本的な知識をQ&A方式で取り上げ解説します。
1. 経営者保証って何? どのような目的があるの?
経営者保証とは、中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が会社の連帯保証人となる「個人保証」です。企業が倒産して融資の返済ができなくなった場合は、経営者個人が企業に代わって返することが求められます。
経営者保証は融資慣行となっており、融資審査を行ううえでの効果や目的は必ずしも明確ではありません。通常、経営者保証に「経営者の資産・収入の裏付けがなければ会社への融資ができない」「その裏付けがあれば融資額が増やせる」といった効果は求めません。
また、金融庁による地域金融機関へのアンケート(2019年4月)の結果を見ると、経営者保証による回収率は、105行のうち73行は回収率を把握しておらず、把握している32行のうち20行は回収率1%未満と回答しています。
この結果から、各地域金融機関が、必ずしも経営者保証を保全手段として重視しているわけではなく、実際の保全効果も限定的であることがわかるでしょう。
つまるところ、法人融資における経営者保証徴求の主たる目的は「モラルハザードの防止」と言えます。これは、企業への融資の保証人となってもらうことで、経営者に債務の履行責任ひいては経営責任の自覚を促すことと言い換えられるでしょう。
特に中小企業においては、企業と経営者等との関係が明確に区分されてないことや適切な情報開示が不足していることも理由とされてきました。
中小企業庁による調査(2022年3月)では、経営者保証は諸外国でもみられる融資慣行であると報告されています。
報告内容を詳細に見ると、例えばアメリカやイギリスにおいても保全効果への期待よりは、経営の健全性の証明の観点から設定されています。フランスは資産性のある担保がない零細事業者に、せめてもの信用補完の仕組みとして保証を求めることが多いようです。
経営者保証の考え方は、各国の融資慣行ならびに金融機関毎のポリシーによって変わりますが、中小企業や小規模事業者への規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与してきたことは、共通して認められるところです。