
金融機関において法人融資の貸出金利はどのように定められているのか、TIBORや長期・短期プライムレートといった基本的な要素を踏まえながら解説。実際にお客様への説明方法についても見ていく。
Q1 法人融資の金利はどう決まるの?当行所定利率って?
金融機関ごとの法人融資の基準金利、いわゆる「当行所定利率」を理解するには、まず融資金利の決まり方を知っておく必要がある。融資金利は一般的に、㋐調達金利+㋑調達経費+㋒個別企業貸倒れリスク+㋓求める収益──の要素で決定される。
まず、金融機関は預金者から集めた預金を原資として融資をするのが基本である。預金に対しては利息を支払わなければならないから、それが㋐調達金利となる。
一部の金融機関では、TIBOR(Tokyo Inter bank Offered Rate)市場からの調達もある。TIBORとは東京銀行間取引金利のことで、東京における主要銀行間で資金が不足した場合などに融通し合う金利だ。
このレートは、金融機関が短期資金をやりとりするコール市場で調達する際の金利を目安にして決定される。TIBORの期間には1週間、1カ月、2カ月、3カ月、6カ月、9カ月、1年物という種類があり、基本的に期間が長いほど金利は高くなる。
メガバンクや地方銀行は預金に加えTIBOR市場で資金を一部調達する一方、協同組織金融機関では預金が調達原資となる。預金を集めるためには㋑調達経費がかかるため、協同組織金融機関では調達金利が高くなりやすい。
㋑調達経費は、預金を集めるためにかかった人件費、オペレーションにかかる経費、営業店を維持するための経費などを経費率などとして算出する。金融機関は預金を資金源としそれを運用して収益を上げるため、金融機関経営のコスト(預金金利、人件費、その他の諸経費)を預金中心にみたものを「預金コスト」などと呼ぶ。
㋒個別企業貸倒れリスクは、融資する企業ごとに、貸倒れが起きた場合の損失確率(デフォルト率)をコストとして見積もる要素だ。格付けを踏まえた企業ごとの信用度合い(信用リスク)が主な基準となり、信用リスクに応じた金利を上乗せする。一番良い格付けほど0%に近く、格付けが悪化するに伴って上乗せ幅は大きくなる。
金融機関は自己査定によって債務者を、正常先、要注意先(この一部に要管理先を含む)、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先の6段階に区分する(債務者区分)。これらは金融機関ごとに、1~6格までを正常先、7~8格を要注意先、9格を要注意先(要管理先)、10格を破綻懸念先、11格を実質破綻先、12格を破綻先などと、より細かな信用格付けを設定する。
債務者区分の基準になっていた金融検査マニュアルは廃止になったものの、大枠の仕組みは変わらないと見ていいだろう。
最後に、㋓求める収益はいわゆる利ざや(スプレッド)であり、金融機関が収益として確保したい一定の利率を上乗せする。貸出金利による収益は金融機関にとって最も大きな収入となるため、どれだけの利ざやを金利として上乗せするかは、慎重に判断して決める。金融機関ごとの規模や経営体力、経営方針などで異なる要素だ。