クイズ,QUIZ
(画像=boryanam/stock.adobe.com)

毎回、金融実務の基礎となる預金や為替業務の手続きについてのクイズを出題します。手続きの背景にある規程などもあわせて学んでいきましょう!

【預金編】当座勘定取引先の死亡に関する記述について正しいのはどっち?


A 当座勘定取引先が死亡の場合、金融機関は未使用手形・小切手用紙の回収義務はない
B 被相続人が生前に振り出した手形・小切手が支払呈示された場合でも、当座勘定規定により、支払金融機関は支払義務を負う

当座勘定取引契約は、「支払委託契約」と「消費寄託契約」が混合した契約であるというのが通説です。「支払委託契約」は、民法上の委任契約(正確には事務の委任であることから準委任にあたる)と解されていることから、委任者、つまり当座勘定取引先の死亡により当座勘定取引契約は終了します。解約後の当座預金の残高については、一時的に別段預金に留保することになります。

当座勘定取引を解約した場合、金融機関には未使用の手形・小切手用紙の返還を請求する権利はあるが、回収義務まではないとされています。したがって、クイズの正解はAです。

また、当座勘定規定では、当座勘定取引が終了した場合、当座勘定取引先は未使用の手形・小切手用紙があればそれをただちに返却しなければならない旨を定めています。なお、当座勘定取引は取引先の信用をもとにして行う取引ですから、一身専属的な取引であるといえます。

それゆえ、事業を引き継ぐ相続人から被相続人の当座勘定取引を継続したい旨の依頼があった場合、被相続人名義の当座勘定を相続人の名義に変更して相続人と取引するのではなく、被相続人の当座勘定取引は解約して、新たに相続人名義の当座勘定を開設します。

金融機関が当座勘定取引先の死亡届を受け当座勘定取引が解約されたのちに、被相続人が生前に振り出した手形・小切手が交換呈示された場合、当座勘定規定により、支払金融機関は支払義務を免れます。一方、小切手法では、振出人が死亡しても振出済みの小切手の効力に影響はないとしています。手形も同様と考えられています。

実務上は相続人の意向を確認したうえで対応する