実際の事例で学ぶ!こんな経営課題に対してM&A提案を検討しよう【前編】
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M&Aにより経営課題の解決やビジョンを実現した事例から、事業売却ニーズが見込める先の具体像を知ろう。

事例1 地域のために閉められない小売業

業績低迷も株式譲渡を選択して事業を引き継ぎ

創業30年を迎えた小売業A社は、バブル期に誕生した新興住宅街の中心地でスーパーマーケットを営んでいる。この新興住宅街は小高い丘を整地して作られた陸の孤島であり、幼稚園や小・中学校から居酒屋、さらには家電ショップのような生活必需品まですべて住宅街内で賄えるようになっていた。バブル期は人口が右肩上がりに増え、A社も売切れが続出するほどであった。

しかし現在では人口が流出し、少子高齢化が進んでいる。バブル期には1億円あったA社の年商は半分になり、社員3名でも手が足りないほどだった業務量も、パート二人で十分に回る程度に落ち着いた。人口減少だけでなく、車で数分の場所に大手スーパーや業務スーパーが進出してきたことも事業低迷の要因である。

とはいえ、住宅街に食品スーパーは必須だ。車に乗れない高齢者が増加しているほか、A社の総菜を楽しみにしている住民もいる。65歳のA社長には子どもが二人いるが、いずれも都心の企業に就職し後継ぎにはなれない。

こうした背景の中、「この街からスーパーをなくすわけにはいかない」というA社長の思いから、第三者承継に関する相談を受けた。筆者からは金融機関や事業承継・引継ぎ支援センター、A社の顧問税理士に声をかけ譲受企業を募った。業績が低迷しているのは決算書から明らかであり苦戦したが、結果的には40歳代前半と、まだ若い開業希望者に事業を引き継ぐことができた。

A社長は譲渡契約後、業務の引継ぎに追われている。若い経営者は力も元気もあり、店は活気付いた。また、配達業務を始めたことで足の悪い高齢者に喜ばれており、今後はインターネット販売も着手する計画だという。

本事例のポイント

業績は優れないものの、地域への貢献度から若手創業者に引き継ぎが実現した

事例2 費用の都合で撤退できないサービス業