実際の事例で学ぶ!こんな経営課題に対してM&A提案を検討しよう【後編】
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事例3 適正価格が出ず引退できない印刷業

市場で広く買い手を募り適正価格で株式譲渡

C社は創業48年の老舗印刷業者である。典型的な町の印刷業者で、周辺中小企業からDMやチラシ、封筒印刷を受託し、デザインから印刷までを自社で対応していた。三代目のC社長は38歳で大手印刷会社を退社し、43歳のときにC社の社長に就任。C社長の子どもは女の子一人だったため、家業を継いだ際に「三代続く会社を私が終わらせるのは忍びない。第三者に売れるような会社にしていこう」と決めていた。

ちょうど印刷機械の更新時期であったこともあり、まずは社内製造をやめ印刷工程は外注(ファブレス)とした。社内製造により安定した売上は確保されるが、印刷機械の維持費用は高額で低収益の仕事も受けざるを得ないためだ。売上のボリュームは減っても、経費を削減して高収益が残る仕組みを目指した。それが差別化となり、来たるべき将来の第三者承継にも有利に働くと考えたためだ。

20年間試行錯誤を繰り返し、C社長の理想に近い会社となった。自身が引き継いだときには社員4人、売上1・5億円、売上総利益3000万円、役員報酬600万円、営業利益300万円の会社だったが、現在は一人の機械オペレーターが高齢で退職。残り三人の社員は全員営業職で、売上1・2億円、売上総利益4500万円、役員報酬2000万円、営業利益1200万円という高収益体質となっていた。

安心できる買い手が良い買い手ではない