(写真=Thinkstock/Getty Images)
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2015年1月より改正相続税法がスタートを切った。これに伴い、相続税の基礎控除が4割減となり、相続税・贈与税の最高税率も引き上げられた。従来は、相続の計算上法定相続人の取得金額が3億円を超えると最高税率の50%が適用されていたが、今年からは6億円を超えると最高税率55%が適用される。富裕層にとっては大きな負担を強いられることになった。

富裕層増加でプライベートバンカーにビジネスチャンス到来

野村総合研究所の2014年11月18日付レポートによると、純金融資産1億円以上の世帯数は全国で100.7万世帯である。安倍政権発足前の2011年と比較すると24.3%増にもなる。アベノミクス効果で、富裕層が増え続けているのだ。また、国税庁・総務省統計によると、全国の相続資産市場は年間50兆円といわれているが、高齢者増加も相まって、2030年までには1,000兆円市場にまで増幅すると推定されている。

プライベートバンカー


(資料:株式会社野村総合研究所「日本の富裕層は101万世帯、純金融資産総額は241兆円~ 2年間で世帯数は24.3%、純金融資産総額は28.2%増加 ~(2014年11月18日発表)」よりZUU online 編集部作成)

そこで急拡大しているのが「相続・事業承継」マーケットだ。増加する富裕層、相続を背景に、本格的に動き始めているのが「プライベートバンカー」である。プライベートバンカーとは、資産運用に限らず、税金、相続、不動産など総合的にアドバイスできる資産管理のエキスパートのこと。プライベートバンカーが「相続・事業承継」を資産運用に代わる新たなビジネスチャンスとして捉えているのには、2つの要因が挙げられる。

「相続・事業承継」が”熱い”理由

1つ目は、資産運用の提案には不向きな相場動向にある。アベノミクスが始まり、プライベートバンカー達も資産運用の提案を積極的に行ってきた。しかし、昨年から相場の動きが鈍くなってきており、資産運用の市場では収益を稼ぎづらくなってきている。企業オーナーをはじめとした富裕層も資産運用に対して以前ほど市場のうまみを感じていない。ニーズの多様化を受け、プライベートバンカーには新しい提案が求められているのだ。

そして、2つ目が富裕層への課税強化だ。国外財産調書制度もそのひとつで、平成26年から国税庁が租税回避の実態を把握するために、前年12月31日における5,000万円を超える海外保有資産について、預金口座や株式、不動産などといった財産内容や金額の申告を求めるようになった。偽りを記載し提出、あるいは正当な理由なく期限までに提出しない場合、懲役や罰金刑が科せられる。また、国税庁は、富裕層の海外移住による租税回避を阻止するため、出国時に株式などの金融資産の含み益に対して所得税を課す措置を導入する見通しとなっている。

そのため、富裕層には円安進行も加わって海外移住のメリットが減り、国内での税制対策に関心が集まっている。そのなかでも効果が大きい一石二鳥の「相続・事業承継対策」が注目されているわけだ。

相続・事業承継におけるプライベートバンカーの提案とは

では、このような厳しい環境下において、プライベートバンカー達は、富裕層にどのような提案をしているのだろうか。顧客の4割以上を占めるといわれる企業オーナーへよく提案されるのが、①資産管理会社の設立、②都心のタワーマンションの活用、である。

①資産管理会社の設立で相続・事業承継対策

■配当や株式評価に対する税効果
オーナーが経営する事業会社の株式を資産管理会社が一定数保有する場合、資産管理会社が受け取る配当金の100%、または50%が益金不算入扱いとなる。つまり、未上場企業のオーナーが個人として配当金を受け取る場合には総合課税が適用されるため、資産管理会社を設立することで大きな税効果が望めるというわけだ。


■ 事業会社株式の分散防止
事業会社の株主が個人の場合、相続が発生するたびに株主が分散する。それゆえ、会社にとって好ましくない者が株主となる場合もあり、経営が不安定になるリスクがある。資産管理会社に企業オーナー一族の株式を集約すれば、事業会社の株式の分散防止ができに、経営の安定化につながる。


■ 一族への所得分散で節税
オーナーの収入の一部を資産管理会社に移し、配偶者や子など親族を法人の社長や役員に就任させ、資産管理会社から給与として支払うことにより、所得分散効果が得られる。たとえば、1,000万円の課税所得に対する個人所得税は33%だが、これを妻と子に500万円ずつ分散することにより、一人当たりの税率が20%に下がる。一族全体でみると大幅な税効果が期待できる。

②都心のタワーマンションを活用して相続税対策

相続税や贈与税を算定する際に使用する土地の評価額「路線価」は国土交通省が発表する公示価格の8割が目安となる。とりわけ、都心では実際に取引される時価よりも公示価格の方が安いことが多い。

マンションの場合、敷地面積全体を路線価で評価し、各部屋の床面積に応じて敷地権割合を掛けるため、結果として土地の評価額が少なく計算され、土地と建物トータルの評価額も時価より大幅に低くなる。特に、都心のタワーマンションの場合には、土地の共有持分が相対的に小さく、建物価格の比重が大きくなるという立地メリットが大きい。こうしたことから、都心のタワーマンションなら購入価格の4割程度まで評価減を取ることも可能だ。

購入したタワーマンションを他人に貸し出すことでさらに評価額を2〜3割下げることができる。また、貸家の土地は小規模宅地の評価減の特例対象にもなり、そこからさらに5割程下げることが可能だ。このように都心のタワーマンションは評価額が下がる要素が多いので相続税の節税に大きな効果があるのだ。

注目を集めるプライベートバンカー、勝ち抜くカギは提案力

上述した、2つの提案はほんの一例にすぎず、ほかにもさまざまな対策がある。ビジネスチャンスを逃さないためにも、プライベートバンカーには高い提案力が求められるのだ。そこで今、プライベートバンカー資格の存在が注目されている。プライベートバンカー資格では、顧客の資産全体に関して提案できる知識を体系的・複合的に学ぶことができる。今回のように、制度改正や法律改正なども踏まえた旬の提案が必要となるため、知識のブラッシュアップは欠かせない。そのため、継続教育制度が充実していることも人気の理由だ。

増加する富裕層に複雑化する税制度、当分はプライベートバンカーの舵取りに熱い視線が集まることになりそうだ。