現金給与総額
(写真=Thinkstock/Getty Images)

3月の現金給与総額は、名目ではプラスを維持するも実質では2年近く下落から抜け出せていない。今後適切なインフレが実現し、それを上回る賃上げが定着することで、初めて実質賃金も上向く。賃金と物価の双方の動向に注目が必要だ。


名目賃金改良と実質賃金低迷

厚生労働省が発表した3月の現金給与総額(従業員5人以上の事業所対象)は27万4,924円で、4カ月連続で改善したが、前年比0.1%の微増にとどまった。

基本給などの所定内給与は23万9,790円で、0.3%伸びて2カ月ぶりに反転。連合の集計では、定昇相当分込みの賃上げ率が、昨年の2.18%に続き今年も2.24%と上向くなど、賃上げの流れが出来つつあり、それが所定内給与改善に反映されている。

ただそれを打ち消すほどに、所定外給与1万9,681円の落ち込みが大きい。2.3%前年割れし、金融緩和開始前の2013年3月以来2年ぶりの悪化。昨年3月は消費増税前の駆け込み需要が頂点に達し、業務多忙で残業代も増えていた。今年はその反動で、所定外労働時間の2.4%減に伴い、その分給与も削減された形だ。

賞与などの特別に支払われた給与は1万5,453円で、1.6%増と拡大は維持。ただ2月の5.7%から上げ幅が縮小。3月は中国の春節休暇が明けて輸出が回復し、それに向けた生産活動も戻ったものの、鉱工業生産指数は対前月で2月の-3.1%から3月の-0.3%と戻りが弱かった。そのように企業の稼働が不十分で従業員の労働も抑えられ、上述の残業代やこの一時金が下押しされた可能性がある。

つまり、賃上げという好材料を駆け込み需要の反動減などで打ち消し、賃金の伸びが抑制されたといえよう。この名目賃金から物価変動を除いた実質賃金は2.6%減で、前月の2.3%減から下げ幅が拡大し、23カ月下落から脱却できていない。

ただ、これは上述の反動減という一時的要因が大きい。去年5月の4.0%減を底に2月は半分程度にまで回復しており、傾向としては悪くない。名目賃金の上昇率よりも、増税分を含む物価の伸びが効いてしまい、実質的な負担が大きいものの、それも徐々に和らいできているようだ。


外需依存の業績回復で賃金改善

円安に加え米国が堅調な景気を維持し、輸出は7カ月伸長。だが増税の影響が尾を引き、実質消費支出は12カ月連続底割れ。このように低迷する内需を外需で補い、企業は概ね好業績を維持しているのが現状だ。この外需を取り込むため、また同業他社との人材確保競争の点から、従業員の処遇を改める必要があり、その結果名目賃金が上がっている。

ただ増税の影響分だけ物価が上昇し、それに賃金アップが追い付かず、実質では下がり続けている。それでも原油安による物価下落や先述の賃上げで、事実上の重荷は軽減に向かいつつあるのも確かだ。


マイルドなインフレとそれを上回る賃上げが重要

やはり2%程度の物価上昇率とそれを上回る名目賃金の上昇により、適切な形で家計の負担が最小化される必要がある。そのためにも消費者のマインドが上向き、需要が増えて適度に物価が上昇し、企業業績が伸び、人材確保などに向けた賃上げにつながる流れが重要だ。

景気ウォッチャー調査の家計動向関連の先行き判断DI、消費動向調査の消費者態度指数ともに、去年12月から上昇を持続。そうした意識に基づき消費が実際に行われ始めれば、それに向けて人材を確保する動きも強まる。

日本政策金融公庫の中小企業景況調査の従業員判断DIも、不足が過剰を上回る状況が17カ月間続く。今後もその状態が維持されれば、就業条件をより向上させなければならず、名目賃金は今より伸びていく可能性が高まる。

消費が伸びる中で適切なインフレが実現し、それを上回るペースで賃金が拡大していけば、実質賃金もいずれはプラスに転じるだろう。そうなるには相当な期間を要する可能性が高いが、いずれにせよ増税の影響からいかに抜け出し、消費マインドが上向くかに注目が必要だ。(ZUU online 編集部)

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