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(写真=Thinkstock/Getty Images)

日比谷の日生劇場で『嵐が丘』の舞台を観た。主演の堀北真希はおっとりとしたお嬢さんのイメージだったが、この芝居では激しい役柄を見事に演じきった。イングランド北部ヨークシャーの荒涼たる風景が脳裏に浮かんだ。その地に立つ屋敷で繰り広げられる愛憎劇にどっぷりと引き込まれた2時間半だった。

イングランドといえば、注目された英国の総選挙はキャメロン首相率いる現政権の続投が決まったが、開票前はまれにみる混沌とした情勢だった。保守党も労働党も多数派を形成できず、議会が中ぶらりんの状態となる「ハングパーラメント」という言葉が盛んにメディアに流れた。ところが蓋を開けてみれば、保守党の単独過半数獲得という「まさか」の結果。

これは「ロイヤルベビー効果」だといわれている。キャサリン王妃の第2子誕生という慶事が、与党保守党への追い風となった「シャーロット効果」だというのである。

『嵐が丘』は作家エミリー・ブロンテが1847年に発表した「世界十大小説」のひとつと謳われる小説が原作。エミリー・ブロンテは英国のヴィクトリア時代を代表する小説家ブロンテ姉妹の1人で、3人とも早世だった。この他の兄姉もみな若くして死去した。短命だったブロンテ家で唯一、ブロンテ姉妹の父親だけが長寿だった。父パトリックは妻と6人の子供全員に先立たれた後も84歳まで生きたという。

晩年の彼の暮らしはどんなものだっただろう。面倒をみてくれる家族はなく、無論19世紀の英国に介護制度は確立していない。他人事ではない。150年余り隔てた現代の日本でも老後の不安が蔓延している。

先日、日経新聞・編集委員の田村正之さんが『老後貧乏にならないためのお金の法則』という本を書かれた。同書によると、2050年には女性の6割、男性の4割が90歳まで生きる時代になる。「死にたくなるほど長くなった老後」を生きるのは楽ではない。

短命だったブロンテ姉妹の中で最年長のシャーロットが最も長く生きた。エミリーの死後、シャーロットが第2版を編集したことが小説『嵐が丘』の再評価につながったといわれる。

日本でおなじみの「シャーロット」といえばNHK朝ドラ『マッサン』でヒロインを演じたシャーロット・ケイト・フォックス。こちらのシャーロットもブロードウェイミュージカル『シカゴ』の主役に抜擢されるなど活躍が続いている。

少子高齢化の問題は一朝一夕に改善しないが、ロイヤルベビーの「シャーロット効果」が日本にも波及して出生率が高まってほしいものだ。『嵐が丘』の舞台を観ながらそんなことを想った。堀北真希演じるヒロインの名はキャサリンである。

広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト

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