34a17fc4cc59e627d0afb7c510a33e5b_s


近づくレンジ下限

■ポイント

◆昨日は、米小売売上高の予想比下振れを受けてドルがほぼ全面安となり、中でも豪ドルやNZドルに対する米ドルの下落が大きかった。ドル/円は一時119.04円へ下落。

◆豪ドル/米ドルは、中国主要経済指標の下振れにも拘らず、米ドル安を受けて4月初め以降の反発基調が強まっている。

◆本日は米新規失業保険申請件数が注目され、改善傾向が続けばドル下支えとなるが、昨日に続き予想比悪化となると、ドル/円は3月末以降のレンジ下限を割り込みそうだ。


昨日までの世界:ダメリカ?

ドル/円は、欧州時間にかけては119円台後半で軟調に推移した後、米4月小売売上高が総合およびコア(除く自動車、ガソリン、建材)がいずれも前月比横ばいと、事前のプラス予想を下回ったことから、冬場の減速が一時的要因によるものだけではないとの懸念が広がり、米中長期債利回りの低下と共に一時119.04円へ下落した。

但し、引けにかけては米10年債利回りが上昇に転じたこともあって下落がとりあえず一服している。なお、米小売売上高は前月3月分が上方修正されたが、2月分は下方修正されており、1QGDPへの影響は中立的との見方が多いようだ。因みに、発表後のアトランタ連銀のリアルタイムGDP予測(GDPNow)によると、2QGDPは前期比年率+0.7%と、5日時点の+0.8%から小幅下方修正となっている。

ユーロ/ドルは、ユーロ圏1QGDPは前期比+0.4%と予想通りの加速だったが、その後の米小売売上高の予想比下振れを受けて、1.12ドル台前半から一時1.1383ドルと5月7日の直近高値である1.1392ドルに近づいた。欧州時間はやや低下していたドイツ10年債利回りも米小売売上高の発表後は大きく反発しており、目先は悪い金利上昇がユーロを支えている面もある。

ユーロ/円も、米小売売上高発表後のドル安が対円よりも対ユーロの方が大きかったことから、ユーロ/ドルとほぼ同様の動きとなり、134円台半ばから一時135.50円へ上昇した(直近高値は7日の136.00円)。

豪ドル/米ドルは、中国4月分主要経済指標は軒並み市場予想を下回ったが殆ど悪影響を受けず、むしろ欧州時間には前日の上昇地合いが再開し0.80ドル丁度近辺から0.80ドル台半ばへ上昇、そして米小売売上高の下振れを受けた米ドル安もあって一時0.8124ドルへ続伸、4月29日の直近高値(0.8076ドル)を上回り、4月初以降の反発基調が明確化したかたちとなった。

豪ドル/円も豪ドル/米ドルとほぼ同様の動きとなり、概ね95円台後半で推移した後、米小売売上高発表後に4月末以降のレジスタンスだった96円丁度を上抜けし96.78円へ上昇した。ポンドは上下に大きく振れた。前日の英3月鉱工業生産の上振れに続き、3月週平均賃金が総合で+1.9%、除く賞与で+2.2%と市場予想以上に伸びが加速したことから、1.56ドル台後半から1.57ドル台半ばへ上昇した。

その後発表のBoE四半期インフレ報告では、今年のGDP見通しが(弱かった1QGDPの上方修正の可能性を考慮しても)前回の+2.9%から+2.5%へ、来年のCPIが+1.8%から+1.6%へ、そして今年の週平均賃金も+3.5%から+2.5%へ大きく引き下げられたことから、ハト派的との捉え方から1.56ドル台前半へ大幅反落した。

もっとも、米小売売上高の下振れを受けて再び上昇し、一時1.5769ドルと日中高値を更新、4月半ば以降の底入れ、総選挙後の上昇基調が続いている。他方、ポンド/円はドル/円の下落の影響が大きく、英労働市場統計後に188.61円の高値を付け年初来高値を更新したが、NY時間には187.03円へ反落した。


きょうの高慢な偏見:近づくレンジ下限

ドル/円は、直近2週分が市場予想を下回る良好な結果が続いていた新規失業保険申請件数の減少基調が続くかが注目で、前週と同様に予想比少ない結果になると、小売売上高を受けて下落したドルが小反発しそうだ。逆に、予想を大きく上回る悪い結果になると、3月末以降のレンジ下限である118.50円を下割れするリスクがある。

コアPPIは余程大きく市場予想から乖離しない限り為替相場への影響は限定的だが、これまで物価押し下げ要因だった米ドル高、原油安などが反転してきており、既発表の輸入物価も小幅持ち直している。今後もこうした動きは続きそうで、インフレ統計の上振れリスクからくるドル高に注意する必要がありそうだ。

ユーロ/ドルは、引き続きギリシャに関する悪材料やECB高官からのドイツ利回り急騰やユーロ高に対する牽制発言の可能性には注意しつつ、ドル安とドイツ10年債利回りの上昇傾向から底固い動きが続きそうだ。

豪ドル/米ドルも、弱い中国経済指標にも拘らず強含みとなっており、米経済指標の下振れを受けた米ドル安が続くようだと、上昇基調が続きそうだ。

FX5-14-1

山本雅文(やまもと・まさふみ)
マネックス証券 シニア・ストラテジスト

【関連リンク】
ユーロ:「レジスタンス」運動とスイス衛兵
ほっと、一安心。
経済指標の底入れを受け米国株は上昇か
ハンセン指数、中国の再度利下げで買い先行か 鉱工業生産などに注目
日本企業の決算や米の経済指標にも要注目
米国の長期金利は上昇するか?