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(写真=Thinkstock/GettyImages)


今週の特徴:米金利低下の中でドル全面高

今週の為替市場では、米耐久財受注の上振れもあってドル/円が年初来高値を更新し125円に接近したのが特徴的だった。他方、豪ドルは全般的な米ドル高と豪経済統計の下振れを受けて、年初来安値に向けた下落基調が続いた。

■ドル/円:今週レンジ121.45~124.46円(大きく上振れ)

(前週時点の予想120.0~122.0円)

ドル/円は、26日にそれまでの年初来高値であった122.03円上抜けをトライする動きから122円台乗せとなり、更に冬場に落ち込んでいた米耐久財受注の4月分が市場予想を上回ったことで、先週の4月住宅着工件数の大幅上振れと共に米景気減速懸念を更に後退させ、123円乗せとなった。その後も特段の追加材料なく続伸し、28日にかけて一時124.46円をつけ、2002年12月以来のドル高円安水準となった。

この間、通常米利上げ期待を反映しドル/円とも連動性が高い米2年債利回りは横ばい圏内、10年債利回りに至っては10bps程度低下したにも拘らずドルがほぼ全面高となっており、米利上げ期待に関しては為替市場(ドル高)が突出したかたちとなっている。

ドル/円の急上昇を受けて日本の財務相、日銀総裁、官房長官から「急激な変動は望ましくない」という口先介入が相次いだが、スピード調整を企図したもので円相場の水準を懸念したものにはなっておらず、市場の反応も限定的となっている。

■ユーロ:今週レンジ1.0819~1.1010ドル、133.10-135.92円(対ドルは大幅下振れ、対円は想定通り)

(前週時点の予想1.100~1.130ドル、133.0~136.0円)

ユーロ/ドルも、米耐久財受注の予想比上振れを含めた26日から27日にかけてのドル上昇を受けて、1.09ドル台後半から一時1.0819ドルへ下落した。ドイツ10年債利回りの低下も、ユーロの上値抑制要因として意識されたようだ。ただしその後は、月末のギリシャにおける年金や公務員給与支払いへの懸念は残る中、ギリシャ政府側から債権者との合意に近づいている旨の発言があったこともあり、1.09ドル台半ばへ反発してきている。

ユーロ/円は、対ドルでの下落がユーロよりも円の方が大きかったことから、どちらかというとドル/円と同様の動きとなり、週初の133円台半ばから上昇基調が続き金曜早朝にかけて一時135.92円へ上昇した。ユーロ/円はちょうど先週19日のCoeure・ECB理事発言前の水準を回復したかたちとなった。

■豪ドル:今週レンジ0.7618~0.7846ドル、94.58~96.01円(対米ドルは大幅下振れ、対円は想定通り)

(前週時点の予想0.780~0.800ドル、94.5~96.5円)

豪ドル/米ドルも、米耐久財受注の予想比上振れを含めた26日から27日にかけての米ドル上昇を受けて、0.78ドル台前半から0.77ドル割れへ下落した。

更に28日には、豪1Q民間資本支出(CAPEX)サーベイで1Q分が予想を大きく下回っただけでなく、15年度の資本支出計画が2月の当初計画から予想外に下方修正され、今後成長のけん引役として期待されている非鉱業セクターの回復が不十分であることが示され、豪利回りの急低下と共に0.7618ドルへ続落、4月2日に付けた直近安値(0.7533ドル)に接近した。この間、鉄鉱石価格は先週半ば以降の持ち直し基調が続いたが、豪ドル押し上げには不十分だった。

豪ドル/円は、週半ばにかけては米ドル/円につれたかたちでじり高となり、95円丁度近辺から一時96.01円へじり高となったが、その後は28日発表の豪CAPEXサーベイが弱い内容だったことを受けて一時94.58円へ急落した。

(今週のレンジ実績は月曜から金曜昼頃まで、数値はBloombergより)


来週の見通し:急激な米回復は望ましくない、はずない

来週は米雇用統計で非農業部門雇用者数の月間20万人超の増加ペース、失業率の低下傾向、平均時給のじり高基調が確認されるかも大事だが、それ以上に、冬場の悪化から回復していないISM製造業景況指数や、前月大幅に悪化した貿易収支が改善するかが重要だ。

ISM製造業と貿易収支が明確な改善を示せばドル/円は125円超、豪ドル/米ドルは0.75ドル割れを試す展開となりそうだ。他方、ECB政策理事会やRBA理事会で追加緩和姿勢を示し通貨安誘導できるかも注目される。

■米ドル/円:予想レンジ122.5~126.0円

ドル/円は、まず米ISM製造業景況指数と米貿易収支が前月から大きく改善するかが焦点で、特にISM製造業は小幅な改善しか予想されていないことから、予想比上振れで回復傾向が明確化すると、ドル高の悪影響を受け易い製造業でも回復に向かうことが示されドル押し上げ要因となる。

また、西海岸港湾ストの影響も受けたとされる3月分の赤字が-514億ドルへ大きく拡大していた貿易収支が、4月にそれ以前の平均的水準である-400億ドル程度よりも縮小すれば(市場予想は-442億ドル)、更なるドル押し上げ要因となる。

米雇用統計では平均時給の伸びが加速するかが、将来のインフレ圧力を見る上でも最も注目だ(前月、市場予想ともに前年比+2.2%)。これらが確認されるベストシナリオでは126円乗せもありそうだ。ただしドル/円水準が上がることから、これまでは水準に懸念を示さなかった本邦当局が警戒トーンを強めないか、注意が必要だ。とはいえ、米景気回復主導で一段と円安が進行する場合、口先介入は無力となりそうだ。

■ユーロ/ドル予想レンジ:1.070~1.110ドルユーロ/円予想レンジ:133.0~138.0円

ユーロは強弱交錯でもみ合いとなりそうだ。ユーロ圏ではギリシャ支援問題では6月5日に対IMF債務の一部の返済期限を迎えること、および金融政策関連で2日のユーロ圏HICP速報値と翌日のECB政策理事会が注目される。ギリシャについては、対IMF返済が確実に行われるとの見通しが高まったり、債権者との合意に向けて進展(主にギリシャ側の妥協)がみられたりすれば、ユーロ下支え要因となる。

また5月分HICP速報は前年比で+0.2%と改善が進み前月のゼロから小幅プラスに転じる見込みであるのはユーロ下支え要因だ。もっとも、ECB政策理事会ではCoeure理事が19日に表明した資産購入プログラムの時期的調整(7、8月の流動性枯渇の前に前倒し)や9月の購入増加に関する何らかの追加情報が与えられるはずで、ユーロ安要因となる可能性が高そうだ。

■豪ドル/米ドル:予想レンジ0.750~0.780ドル豪ドル/円:予想レンジ93.5~96.0円

豪ドルは、米ドル高傾向に加えて、今週発表のCAPEXサーベイ結果が悪かったこともあり、2日のRBA理事会に向けて利下げ期待が高まるとみられ、下押し圧力を受けそうだ。なお、現時点での市場予想は2.00%で据え置きとなっている。ただし対円では、米ドル/円の堅調もあって下落は相対的に限定的となりそうだ。

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山本雅文(やまもと・まさふみ)
マネックス証券 シニア・ストラテジスト

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