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(写真=Thinkstock/GettyImages)

◆先週金曜は、米5月雇用統計で非農業部門雇用者数と平均時給が市場予想を上回ったことから、ドルが全般的に大幅上昇し、ドル/円は一時125.86円へ上昇した。

◆米雇用統計発表直後は、円よりもユーロや豪ドルの方が対米ドルで大きく下落したことから、ユーロ/円や豪ドル/円は下落したが、発表前に上昇していたことから、各々139円台半ば、95円台後半で概ね前日比横ばい圏内の動きとなった。

◆本日は、良好な米雇用統計を受けたドル高トレンドの追随と、ドル利食い売りが拮抗し、ドル/円はもみ合いの展開となりそうだ。

◆トルコリラは、週末の総選挙で与党AKPが過半数割れとなり、政権不安定化懸念が高まったことから、対ドルで2.75リラと史上最安値へ下落しているが、対円では先週金曜の米雇用統計後に47円台へ上昇した後に45円台への下落に留まっており、4月27日の安値である43.47円には達していない。


昨日までの世界:ドイツ10年債利回りとユーロ/円は不発

ドル/円は、東京時間は124円台半ばで横ばいとなったあと、欧州時間に124円台後半へ小幅高となった。

そして米5月雇用統計で、非農業部門雇用者数が+28.0万人増、平均時給が前年比+2.3%といずれも市場予想(+22.6万人、+2.2%)を上回ったことから、米早期利上げ期待が再び高まり、米中長期債利回りの上昇とともに一時125.86円へ急上昇した。過去計数も+3.2万人分上方修正され、市場では9月利上げ開始期待が更に高まったようだ。

ユーロ/ドルは、欧州時間入りにドイツ10年債利回りが再び上昇に向かったことや、ドイツ連銀がドイツの成長率見通しを引上げ、今年分について昨年末時点の+1.0%から+1.7%へ上方修正されたこともあって、1.12ドル台前半から1.12ドル台後半へ強含んでいた。

そして米雇用統計を受けて下落し、一時1.1050ドルの安値をつけた。但し引けにかけては1.11ドル台を回復した。この間、ギリシャ支援問題に関しては、EU側が提示した財政改革案についてTsiprasギリシャ首相が不条理で非現実的、と述べたが、焦点が米雇用統計だったことから市場の反応は限定的だった。

ユーロ/円は、139円台半ばから欧州時間入りにかけて上昇し一時140.70円の高値をつけた。もっとも、その後米雇用統計を受けて、対米ドルで円よりもユーロの方が大きく下落したことから、ユーロ/円は下落し一時139.04円の安値をつけた。引けにかけては139円台半ばへ小反発し、ほぼ前日の終値の水準を回復した。

豪ドル/米ドルも、ユーロ/ドルと同様に欧州時間にかけて0.76ドル台後半から0.77ドル台へ強含んだ。もっとも、米雇用統計の予想比上振れを受けた米ドル高により急落、一時0.7599ドルの安値を付けた。

豪ドル/円も豪ドル/米ドルと同様に、95円台半ばから一時96円台乗せへ上昇したが、米雇用統計を受けて、対米ドルで円よりも豪ドルの方が大きく下落したことから、豪ドル/円は95円台半ばへ反落した。


きょうの高慢な偏見:円安はリラを救えるか?

ドル/円は、先週金曜以降のドル高トレンドへの追随とドル利食い売りが拮抗しそうだ。材料面では相場を動かしそうなのは日本の経済指標しかなく、4月分経常収支や1QGDP改定値の発表が予定されているが、いずれも大きな方向性を生み出す可能性は低そうだ。

経常収支は前月の大幅黒字からは縮小するものの1兆円超の黒字(市場予想は季節調整後で+1兆4488億円)、GDPも1日発表の法人設備投資調査の大幅上振れなどを受けて小幅上方修正(市場予想は前期比年率で速報+2.4%から+2.8%へ)が予想されているが、目先の日銀の金融政策に対するインプリケーションは小さく、かつ現在は市場の注目が米金融政策に偏っているため、円相場には影響なさそうだ。

ユーロ/ドルも、米雇用統計を受けたドル高とドイツ10年債利回りの上昇からくるユーロ高圧力が拮抗しそうだ。本日はConstancio・ECB副総裁発言が予定されているが、先週のECB定例理事会での利回り上昇放置姿勢が維持される可能性が高く、どちらかというと利回り上昇とユーロ高材料となりそうだ。

ドイツ4月鉱工業生産も、前月のマイナス0.5%から大幅プラス転(前月比+0.6%)が予想されており、ドイツ利回り上昇に繋がりそうだ。

豪ドル/米ドルは、中国5月輸出入統計が予想比大きく振れる場合には大きく動きそうだ。豪州の輸出・交易条件および景気に影響する輸入は前年比で前月の-16.2%から-10.0%へマイナス幅縮小が予想されている。

今年入り後中国の輸入統計はマイナス幅が拡大傾向となっており、予想通りにマイナス幅が縮小しない場合には、4月2日の直近安値である0.7533ドルを試す展開となりそうだ。

トルコリラは、週末7日の総選挙で、95%開票時点でエルドアン大統領率いる与党公正発展党(AKP)が41%、259議席(総数550、過半数は276議席)しか取れず過半数に満たなかったことから、再検挙の可能性も意識されるなど政権不安定化への懸念から早朝に大きく売り込まれ、対ドルでは2.66リラから一時2.7562ドルへリラが史上最安値へ下落した。

対円では、先週金曜の米雇用統計後のドル高局面でも46.5円から47円台へ上昇していたが、本日早朝には45.55円へ急落した。それでも4月27日につけた安値である43.47円を上回って推移している。

なお、AKPの過半数割れは悪いことばかりではなく、強権政治を行ってきたエルドアン大統領の中銀への利下げ圧力後退や、連立政権が迅速に樹立されれば海外投資家の信頼回復に繋がり得る(詳細は 投資戦略テーマ「トルコリラ:AKP276?」 を参照)。また円安トレンドが継続すれば、リラ/円の下落はある程度食い止められそうだ。

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山本雅文(やまもと・まさふみ)
マネックス証券 シニア・ストラテジスト

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