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(写真=Thinkstock/GettyImages)

◆昨日は、黒田総裁の唐突な円安牽制発言を受けてドル/円が124円台半ばから一時122.46円へ急落、円が全面高となった。

◆ユーロ/ドルは、ドイツ10年債利回りが一時1.06%へ急上昇したことから1.1386ドルへ上昇した。

◆NZドルは、本日早朝にRBNZが利下げを行ったことから、対円で88円台前半から一時86円丁度近辺へ急落した。

◆本日は、米5月小売売上高が注目で、市場予想以上の増加がみられれば、冬場の米景気鈍化が一時的との見方が更に強まり、ドル/円の下支え要因となりそうだが、124円台回復には黒田総裁の発言修正が必要だ。

◆豪ドル関連では豪5月失業率と中国5月主要経済指標が重要で、失業率が上昇したり、中国経済指標が市場予想を下回り更なる減速が確認されるようだと、利下げ期待が高まり豪ドル安となりそうだ。


昨日までの世界:ブラック・ホーク・ダウン(黒田総裁、タカ派発言でドル/円下落)

ドル/円は、黒田日銀総裁が国会(衆院財務金融委員会)で、事実上の円安牽制発言を行ったことから、124.50円近辺から一時122.46円へ急落した。

この間、黒田総裁発言について甘利経済再生担当相が「趣旨が若干曲解された」と若干の擁護発言をし、菅官房長官は「日銀総裁の責任の下で発言」とし必ずしも政府見解と一致しないことを示唆し、123円台を回復する局面もあったが一時的となった。

黒田日銀総裁は、「実質実効為替レートでみるとかなり円安」「ここから更なる円安は普通に考えるとありそうにない」「これまで円安が経済にプラスだったから、更なる円安で更にプラスということではない」などと発言した。

実質実効相場は平均回帰的傾向があるとされ、確かに円安に行き過ぎた場合には反発に向かう可能性が高いが、10年単位の議論で日々の相場には当てはまらない。かつ「実質で」という条件をつけており、インフレ率程度の名目相場での円安化は排除されていない(それでも2%程度か)。

とは言え、①財務官経験があるため史上最も為替相場に関する失言が少ないはずの日銀総裁からの発言であり、間違いであるはずがないと推察されること、②更なる円安をもたらすような日銀の追加緩和は予定されていないとも解釈されること、③政府に近い黒田総裁の発言であることから、政府も同様の見解を持っていると解釈され易いこと、④今後124円台では黒田総裁から同様の口先介入が出てくる可能性が意識され易くなること、等から、今回の黒田総裁発言は強力な円安抑止効果を持つ。

これまでのドル上昇局面でドルを購入できていない輸入業者などにとっては絶好のドルの買い場となるが、124円程度が上限として意識され上値余地が限定的となることから、今後ドル/円を積極的に買おうとする投資家が激減するとみられ、ドルの好材料が出ても、ドル/円は取引通貨として選択されにくくなるだろう。

ユーロ/ドルは、欧州時間入りにかけてドイツ10年債利回りが続伸し6月4日に付けた直近高値である1.0%を上回り一時1.06%へ上昇したことから、1.13ドル丁度近辺から1.1386ドルへ上昇した。

ギリシャ支援問題でTsiprasギリシャ首相は独仏首脳との会談を行うことに成功、特段進展はなかったようだが、ドイツ政府関係者がギリシャが債権者側の要求する改革案の一つでも合意すればドイツが資金供与に賛同する用意があると発言したことが伝わったことも、若干のユーロ下支えとなったようだ。

ユーロ/円は、黒田総裁発言を受けてドル/円と共に急落、140円台半ばから一時138.43円へ下落した。ドイツ利回り上昇を受けて一時139円台後半へ反発する局面もあったが、再び139円を割り込んだ。

豪ドル/米ドルは、Stevens・RBA総裁が、中国景気が想定より急ペースで減速しており、持続的成長にプラスとなるなら追加緩和の用意があると述べたことから、一時0.76ドル台半ばへ軟化する局面がみられた。もっとも、その後の対円や対ユーロでの米ドル安を受けて、0.7785ドルへ急反発した。

豪ドル/円は、米ドル/円と共に95円台半ばから94.52円へ下落したが、欧州時間の豪ドル/米ドルの上昇を受けて95円台を回復している。

NZドルは、本日早朝にRBNZが、十分には市場が織り込んでいなかった25bpsの利下げを行い政策金利を3.25%とし、声明文で「我々は更なる緩和が適切とみている」として今後の更なる追加緩和を示唆、従来よりも緩和バイアスが強化されたことから、対円で88円台前半から86.05円へ急落した。


きょうの高慢な偏見:バズーカ逆噴射は修復可能か?

ドル/円は、昨日の黒田総裁発言で水準感が一気に変わったが、米小売売上高が予想通り、あるいは予想以上の回復を示せば、冬場の米景気鈍化が一時的との見方が更に強まり、一定のドル下支え要因となりそうだ。

市場では総合で前月比+1.2%、コア(除く食品、自動車、ガソリン、建築資材)でも+0.5%と低調な前月(いずれも前月比ゼロ%)からの加速が予想されている。但し、124円の回復には、黒田総裁が昨日の発言を撤回あるいは大幅修正することが必要となりそうだ。

ユーロ/ドルは欧州時間のドイツ10年債利回りがどこまで上昇するかが注目され、1.14ドル台を窺う展開となりそうだが、米小売売上高が堅調な伸びを示すとドル高圧力により上値が抑制される、という展開となりそうだ。

豪ドル関連では、豪5月失業率と中国5月主要経済指標結果が注目される。

RBA政策金利との連動性が高い豪失業率(前月6.2%、市場予想6.2%)がRBAが想定するように更に上昇したり、中国の主要経済指標が概ね前月と同程度の伸びとなっている市場予想を下回り更なる減速が確認されるようだと、7月理事会でのRBAの利下げ期待が高まり、豪ドル安となりそうだ。

但し鉄鉱石価格の回復基調が続いていることから、豪ドルの下値余地は限定的となっている。

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山本雅文(やまもと・まさふみ)
マネックス証券 シニア・ストラテジスト

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