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(写真=PIXTA)


今週の特徴:アベクロ(安倍・黒田)からオバクロ(オバマ・黒田)へ

今週は、Obama大統領のドル高牽制発言報道と黒田総裁発言を受けたドル/円の下落が顕著だった。もっとも、ドルが全般的に下落したことから、ユーロ/円や豪ドル/円の下落は限定的だった。この間、トルコリラが7日の総選挙結果を受けて大きく下落したほか、NZドルもRBNZによる十分に織り込まれていなかった利下げを受けて下落した。

■ドル/円:今週レンジ122.46~125.68円(想定より下値が1円程度下振れ)

(前週時点の予想123.5~126.0円)

ドル/円は、8日にObama米大統領が強いドルが問題だとG7首脳会合で発言したとの仏当局者発言を受けて(Obama大統領は否定したが)、前週金曜に米雇用統計後に付けた高値である125.86円から124円台半ばへ反落、雇用統計後の上昇分が帳消しとなった。

そして10日に黒田日銀総裁が国会答弁で「実質実効為替レートでみるとかなり円安」「ここから更なる円安は普通に考えるとありそうにない」「これまで円安が経済にプラスだったから、更なる円安で更にプラスということではない」などと事実上の円安牽制発言を行ったことから急落、一時122.46円の安値を付けた。

11日には米コア小売売上高の予想比上振れを受けて一時124円台を回復する局面も見られたが一瞬で終わり、123円台に押し戻されて推移している。この間、米利上げ期待や景気見通しを反映する米2年債利回りは一時0.75%へ上昇し直近高値を更新、2011年来の高水準となったが、Obama大統領と黒田総裁発言の影響の方が大きかった。

■ユーロ:今週レンジ1.1082~1.1386ドル、138.43-141.01円(想定より上値が下振れ)

(前週時点の予想1.105~1.150ドル、137.0~143.0円)

ユーロ/ドルは、8日にNowotnyオーストリア中銀総裁が金利上昇容認発言を行ったことから、ドイツ10年債利回りが10日にかけて一時1.06%へ急騰したのに伴い、1.1386ドルへ上昇し前週の高値を更新した。

もっとも、11日には米コア小売売上高が市場予想を上回ったことに伴うドル高や、その後のドイツ10年債利回りの0.9%割れへの急反落もあって、一時1.12ドル割れへ反落したが、どちらかというと底堅い地合いが続いている。

ユーロ/円も、ユーロ/ドルと共に9日にかけて141.01円へ上昇、前週の高値である141.06円に近づいた。もっとも、その後の黒田総裁発言を受けた円急騰を受けて139円割れへ下落した。その後は対ドルでユーロと円が同様の動きとなったことから、139円丁度を挟んで上下に振れつつ方向感のない展開が続いている。

■豪ドル:今週レンジ0.7603~0.7793ドル、94.52~96.11円(概ね想定通り)

(前週時点の予想0.755~0.780ドル、94.5~97.0円)

豪ドル/米ドルは、週前半は概ねユーロ/ドルと同様の動きとなり、0.76ドル台前半から0.77ドル台後半へ上昇した。そして11日には豪5月雇用統計で、豪準銀(RBA)の政策金利と連動性が高いことから注目度が高い失業率が6.0%へ予想外の低下を示したことから、利下げ期待が後退し、一時0.7793ドルの高値を付けた。

その後米コア小売売上高の上方修正を受けた米ドル高で一旦0.77ドルを割り込む局面も見られたが、底堅い展開が続いている。

豪ドル/円は、週前半は概ね95円台後半で推移していたが、10日の黒田総裁発言を受けた円高で94.52円の安値を付けた。もっとも、その後の豪失業率の予想比低下を受けて再び95円台後半を回復している。

(今週のレンジ実績は月曜から金曜昼頃まで、数値はBloombergより)


来週の見通し:ミセスYellenと元ミスターYen

来週は、米FOMCと日銀決定会合後の黒田総裁記者会見が注目だ。FOMCでは参加者のFF金利予測が注目で、下方修正されるリスクの方がやや大きいほか、かつ黒田総裁記者会見でも6月10日の発言が修正されなければ、ドル/円は122円割れを試す展開もありそうだ。

■米ドル/円:予想レンジ122.0~125.0円

ドル/円は、米FOMCと日銀決定会合後の黒田総裁記者会見が注目だ。FOMCではまだ利上げ開始は予想されていない中で参加者のFF金利予測(ドットチャート)が注目で、年末時点のFF金利が0.625%(中央値)と年内2回の利上げを示唆した前回3月分から上下どちらに修正されるか判然としないが、どちらかというと下方修正されるリスクの方が大きいとみられドル安リスクがある。

また元ミスター円(財務省財務官)の黒田総裁の記者会見では6月10日の発言に関する質問が中心となりそうだが、明確な修正は行われない可能性が高く、これ以上の円安は望まず、追加緩和も考えていない点が改めて示されると、ドル/円は122円割れを試す展開もありそうだ。

なお、FOMCでは冬場の経済指標悪化を反映して下方修正された前回4月の声明文からは景気認識が上方修正される可能性が高いが、そうした強気化が実際にFF金利予想に反映されなければ、ドル押し上げ要因にはならないだろう。

■ユーロ/ドル予想レンジ:1.115~1.145ドルユーロ/円予想レンジ:137.0~140.5円

ユーロ圏関連では、15日のDraghi総裁発言、16日のドイツZEW期待指数、18日のECB資金供給オペ(TLTRO、テルトロ)そして18日のギリシャ支援関連が中心的議題になるとみられるユーロ圏財務相会合などが注目されるが、戻り高値圏でのもみ合いが続きそうだ。

ユーロ押し上げ要因となっているドイツ10年債利回り動向が重要だが、Draghi総裁が利回り上昇を抑制しないようだと、利回り再上昇とユーロ上昇につながる。他方、ドイツZEW期待指数は前月の41.9から38.5へ3ヶ月連続で悪化する予想となっており、ユーロ圏景況感のピークアウト観が強まると、利回り上昇抑制要因となる。

テルトロ結果は解釈が難しく、低めの市場予想である500億ユーロの供給額を上回ると、予想よりもECBのバランスシートが拡大すると言う点ではユーロ売りだが、これを元手に銀行貸し出しが増加し景気下支えに繋がるのはユーロ買い要因だ。因みに過去3回(昨年9月、12月および今年3月)の供給額は各々826億ユーロ、1298億ユーロ、978億ユーロだった。

ギリシャ関連ではユーロ圏財務相会合で支援合意に向けて何らかの進展がみられればユーロ下支えとなるが、6月末まで時間があることから切迫した状況にはならないかもしれない。

■豪ドル/米ドル:予想レンジ0.765~0.785ドル豪ドル/円:予想レンジ94.5~97.0円

豪ドル関連材料では週前半が勝負で、15日のKent総裁補発言(経済担当)、16日のDebelle総裁補(金融市場担当)および同日のRBA6月理事会の議事要旨で、今後の利下げを強く示唆する内容がない場合には、鉄鉱石価格の反発が続く中で堅調が続きそうだ。

米FOMCで市場の利上げ期待を高めるような内容とならない場合も、豪ドル/米ドル相場の押し上げ要因となる。他方、豪ドル/円は、黒田総裁の円安牽制発言が修整されない場合の円高リスクがあり、横這い圏内に留まりそうだ。

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山本雅文(やまもと・まさふみ)
マネックス証券 シニア・ストラテジスト

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