Brooklyn bridge and Manhattan at dusk
(写真=PIXTA)

5月の米消費者物価は、足元の消費増と原油価格反転で上昇持続を示す結果となった。景気に遅れる雇用と賃金が堅調なため、消費者段階での物価動向は悪くないように見える。

ただ昨年後半からの流れで見れば、金融引締め方向で内需減速は否定できない。これに今後の利上げが加われば、労働市場縮小と物価下押しにつながる恐れがある。


足元の消費増と原油価格底入れで物価下落に歯止め

米労働省発表の5月消費者物価指数(季節調整値)は、全品目を含む総合で前月から0.4%伸び、4カ月続けて上向いた。食品は横ばいにとどまったものの、エネルギーが4.3%と2カ月ぶりに値上がりしたことが大きい。

原油価格(WTI)が前月比で、4月:13.4%、5月:9.3%と上昇が続いており、これまでの下落基調が収まっている。それを反映してガソリンが10.4%と上昇し、エネルギー価格、ひいては物価全体を底上げした。

こうした変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は0.1%と伸びて、物価の基調としても上向きを維持。中古車や衣料などの値下がりを、家賃や医療サービスなどの押し上げでカバーし、拡大のトレンドを持続。

堅調な雇用や賃金に支えられて消費がやや戻りインフレ傾向を維持し、原油価格も底入れして全体の下落にストップをかけている、というのが現状だ。


消費者物価だけでは測れない米経済の懸念

上述のように、消費者物価は悪くない傾向に見えるが、米経済全体を俯瞰すれば必ずしも安心してはいられない。量的緩和終了前後の14年度の前半と後半について、主な指標の前月比(企業収益は前期比、物価関連は前年比)の平均値を比較してみよう。

景気に遅れる雇用や賃金がまだ堅調なため、それが下支えとなって、コア消費者物価は1.8%から1.7%とさほど落ちてはいない。

だがマネタリーベースは0.6%から0.1%と増加幅が縮小し、それに伴い個人消費や設備投資も減速し、企業収益は5.8%から-3.6%へとマイナスに転落。

ダウ平均株価も0.6%から0.8%と低い伸び率にとどまる。そうした企業段階の停滞を反映し、コア生産者物価は1.8%から1.5%へと拡大ペースが鈍化。

つまり、労働市場と消費者物価を見れば問題ないと思われても、実体経済全体の動向を見渡せば、昨年後半から後退の流れが出始めているのだ。

15年度は始まったばかりだが、4~5月の平均値は、マネタリーベースが-1.5%と減少に陥り、ダウ平均株価も0.4%と上げ幅が抑えられている。コア生産者物価は0.7%にまで伸び率が低下。コア消費者物価は1.8%とほぼ変わらないものの、個人消費支出価格指数のコアで見ると(4月のみ)1.2%にまで落ちている。

このように、金融引締め方向と実体経済後退で、生産者段階を通じて消費者レベルにまで物価抑制の兆候が見え始めているのだ。


金利引き上げのペースとインフレ率への影響に要注目

消費者物価の動向は、やはり金融政策と内需の動向に左右される。上述のように、マネタリーベースは絞られて来ており、ゼロ金利解除でさらに引き締まれば、金銭の価値が上がり物価を押し下げることになる。

個人消費は足元では持ち直しているものの、そのように引締めが強まれば、消費や投資は後退しインフレ率の低下を招く。

これに加えて原油価格が反転していけば、一時的に総合の物価が値上がりするものの、いずれ消費マインドを悪化させ、コアの物価下押しにつながりかねない。

現状の良好な雇用とCPIを見れば、年内利上げの動きは変わらないだろう。ただ、すでに出始めている懸念材料に加え、利上げがそれに追い打ちをかければ、内需低迷が明らかになり、企業業績や株式市場にも悪影響を及ぼす恐れが強い。だからこそ、利上げのペースと実体経済への影響に注目していかなければならない。(ZUU online 編集部)

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