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(写真=PIXTA)

◆非農業部門雇用者数 7月 +21.5万人 市場予想 +22.5万人 前月 +23.1万人(上方修正)

◆失業率 7月 5.3% 市場予想 5.3% 前月 5.3%

◆U-6失業率 7月 10.4% 前月 10.5%

◆平均時給(前年同月比) 7月 +2.1% 市場予想 +2.3% 前月 +2.0%


まずまずの内容だった雇用統計

7日に発表された7月の米国雇用統計は米国労働市場が堅調な回復を続けていることを示唆する内容だった。マーケットでは9月利上げの可能性が高まったとの声が多いようだが、やや気になる部分もある。順にご紹介したい。

まず、非農業部門雇用者数は前月差21.5万人増と市場予想の22.5万人増を下回って前月から伸びが鈍化した(グラフ参照)。

ただ堅調な回復の目安とされる20万人を上回り、さらに6月分は22.3万人増から23.1万人増へ、5月分は25.4万人増から26.0万人増にそれぞれ修正され、累計では1.4万人の上方修正となった。7月の非農業部門雇用者数についてマネックス証券では20万人増程度と予測していたが、実際はそれをやや上回る結果だった。

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また、失業率は5.3%で前月から横ばい、本来は正社員を希望しているが止むを得ずパートタイマーとして働いている人を失業者に含めたU-6失業率は10.4%と前月から0.1%改善した。労働参加率は62.6%で前月から横ばいだった。

概してみると、「労働市場の回復が加速」といえるほどの強い内容ではなかったが、労働市場の改善トレンドが継続していると判断できる堅調な内容だった。

FOMCは直近の声明文で利上げ開始の条件について、「労働市場の改善がさらにいくぶん見られた際に」と「いくぶん」という文言を付け加えた。7月分の雇用統計にはおそらく労働市場の「いくぶん」の改善は見られており、これをもって9月の利上げ開始の可能性が高まったとの解釈がマーケットには多いようだ。ただ、数箇所やや気になる指標の伸び悩みや悪化が見られた点もある。


低い平均賃金の伸びと増加した長期失業者

労働者の平均賃金は前年比2.1%の上昇と前月の2.0%の上昇から改善したものの、市場予想の2.3%は下回った。グラフをご覧いただければわかるとおり、労働者の賃金は伸びが加速するような状況にはなっていない。

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イエレン議長以下FOMCメンバーが労働市場を重視する理由は、「雇用の最大化」という1つ目のFRBの責務の達成はもちろん、労働市場の改善が賃金インフレに結びつくという2つ目の責務である「物価の安定」にも寄与すると考えているからである。足下のデータを見る限り賃金インフレが加速するような状況にはなく、この状況をFRBとFOMCメンバーが重視するとなれば9月利上げ開始を行なわないという可能性もある。

そして、あまりマーケットの注目度が大きいわけではないが、7月の雇用統計では27週以上に渡って失業している長期失業者と失業者に占める長期失業者の割合がともに悪化した点が特徴的だ。長期失業者の割合はイエレンFRB議長が重視するとされる労働関連指標「イエレンダッシュボード」にも入っている指標である。

まず、7月の長期失業者は218万人と前月から5.9万人増加した(グラフ参照)。

前月から増加したのは1月以来6ヶ月ぶりである。そして長期失業者が失業者に占める割合は26.9%とこちらも前月の25.8%から1.1%の悪化となった。同割合が前月から悪化したのは昨年12月以来7ヶ月ぶりである。金融危機発生前の2007年の1年間の同割合の平均は17.6%で、現在よりも10%近く低い水準であった。

他の労働関連指標の改善を見ると、同割合の7月の上昇は6月の大幅低下の反動で、大きな問題とはならない可能性が高いと思われるが、来月の雇用統計でも悪化が続くようであれば労働市場の改善が不十分であるとして、9月利上げが行なわれない材料となる可能性もある。

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マーケットでは9月利上げの可能性が高まったとの声が支配的なようだが、筆者は賃金インフレが起きそうな気配がないことから、9月利上げが見送られ12月利上げとなる可能性が十分にあると考えている。いずれにせよ、実質的に9月のFOMC前の最後の判断材料となるとみられる8月分の雇用統計(9月4日発表)への注目が一層高まった。

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用語解説

◆雇用統計(米国)

米政府による雇用環境を調査した統計。発表される統計のなかでも、失業率(働く意欲がある人口に占める失業者の割合)と非農業部門雇用者数変化(農業従事者を除いた雇用者数の増減)が市場で注目されやすい。通常は月初の金曜日に前月分が公表される。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部

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