工業生産
(写真=Thinkstock/GettyImages)

7月の鉱工業生産指数は前月比-0.6%と、マーケットコンセンサス(同+0.1%)を若干下回った。3月同-0.8%、4月+1.2%、5月-2.1%、6月+1.1%と、不安定な輸出環境を反映して振れが大きくなっている。

7月の実質輸出も同+0.6%と、5月同-5.1%と6月+1.0%の弱さを引きずっており、7月の生産も弱めになった。海外の需要動向が不安定で、海外での部品・製品を含めた在庫投資(7月は前月比-0.8%、6月は同+1.5%)に企業は慎重であるのだろう。7月の政府月例経済報告では生産の判断が、「このところ一部に弱さがみられるものの、持ち直している」から、「このところ横ばいになっている」へ下方修正された。

8月の経済産業省の判断は「一進一退」から変更はなかった。今後の生産動向は、中国経済が底割れを回避できるのか、そして米国景気の回復により輸出がどれだけ力強く回復するかにかかってくる。そして内需も総賃金の拡大を背景に堅調であり、生産動向は徐々に持ち直していくと考えられる。

持続的な経済成長、そして物価・コストも持続的に上昇することを企業が予測し始めれば、在庫管理システムの更なる効率化を考慮しても、在庫削減から投資に変化してくるはずだ。ましてや、完全雇用や過度な円安によるコスト上昇が企業の将来の活動を抑制してしまうリスクとなるほどであれば、在庫を削減するのは企業にとって合理的ではないはずだ。コストや価格が上昇する前の生産活動の拡大による現在の在庫投資(製商品、流通在庫、仕掛品、素原材料のどれでも)は、将来のコスト削減や利益増加につながると考えられるからだ。

実質GDPの民間在庫の変化はまだマイナスになっており、プラスに変化していくと考えられる。企業の期待成長率と期待インフレ率が上昇してきているため、在庫に対する方針が、調整から投資に徐々に変化してくるとみられることは、生産活動を支えていくことになるだろう。

8月の経済産業省予測指数は同+2.8%と堅調である。しかし、海外経済の不安定化は続いており、8月の生産の伸びはこれよりもかなり弱いものとなろう。9月の予測指数は同-1.7%と弱く、振れが大きい「一進一退」の展開が続くことが予想されている。いずれ生産は持ち直していく可能性は高いが、そのスタートは遅くなると考えられる。

8月の輸出・生産が強いリバウンドを示さず、グローバルなマーケットの不安定感が続けば、景気不透明感が強くなる。10月までの政府月例経済報告で、「このところ改善テンポにばらつきもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」という景況判断が下方修正されれば、10月末の追加金融緩和に向けた日銀の背中を押す可能性もある。

アベノミクスの政策は、期待に働きかけて、企業活動を押し上げ、その力を使ってデフレ完全脱却に向かう枠組みであり、景気の「改善テンポにばらつき」が見られ、生産動向の「一進一退」が続くのであれば、追加的な政策対応の十分な根拠となりうる。

堅調な景気の気(センチメント)の部分に対して実体経済や物価の動きが弱いにもかかわらず、日銀が追加金融緩和に動かず、2%の物価目標達成までの果断な政策コミットメントが疑われてしまうと、マーケットと企業の失望などによりセンチメントが悪化し、デフレ完全脱却への原動力が失われてしまうリスクとなろう。

それほど追加的なコストが大きくないにもかかわらず、最後の政策の一押しを怠って、デフレ完全脱却を失敗し続けた歴史があることを、政府・日銀はしっかり意識する必要があるだろう。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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