仕組み債,仕組債
(写真=Thinkstock/Getty Images)

富裕層の間で人気が高い金融商品がある。「仕組み債」と呼ばれるデリバティブ(金融派生商品)が組み込まれた債券のことだ。通常の国債や社債は満期やクーポン(利子)が固定されているが、仕組み債はマーケット動向によってそれらが変化する。国債や社債は発行体がデフォルトしなければ、償還期限に元本が返ってくるが、仕組み債ではそれが保証されていない点に大きな違いがある。

それでも、低金利が常態化し運用が難しくなっていることから通常の債券と比較すると格段に高いリターン(高利回り)が期待できるため人気を博している。

そもそも仕組み債とは

仕組債の発行者は、主に海外の金融機関であり、発行者がアレンジャーと呼ばれる証券会社を通じ資金調達を行う。この仕組み債を購入した投資家は定められた期間に、固定の金利を手にすることができる。この条件だけを見れば通常の債券では実現できない高いリターンを狙えることが分かるだろう。

しかし、こうした仕組み債には通常の債券にはない「ノックイン価格」というものが設定されている。例えば、ノックイン価格は、「ノックイン判定水準日」の日経平均株価終値の75%などと設定されたりする。仮に10月29日が判定水準日とすると、その日の日経平均株価終値が1万8000円ならば、75%の水準である1万3500円がノックイン価格となる。

この仕組み債を保有している間に日経平均株価終値が一度でもノックイン価格である1万3500円を下回った場合には、「額面金額×最終日日経平均株価/当初日経平均株価」といった算式にあてはめた償還金額で満期時に償還されることになり、元本価格を下回る可能性があるのだ。また、満期償還額は額面金額の100%を超えることもない。つまり元本が増えることはない。

では、逆に日経平均株価が上昇した場合にはどうだろう。通常、利払い日の前に早期償還判定日というものが設定されている。この判定日に日経平均株価がトリガー判定水準を上回れば、債券は満期を待たずして早期償還されることになる。

上述の例の場合、トリガー判定水準は10月29日の日経平均株価終値の100%だ。10月29日の日経平均終値の1万8000円を、トリガー判定日の日経平均終値が上回れば早期償還されることになる。このように仕組み債においては「ノックイン」と「トリガー」の水準が重要である。

仕組み債は金利や通貨を交換するスワップやオプションといったデリバティブを利用することで投資家や発行者のニーズにあったキャッシュフローを生み出す構造となっている。満期やクーポン(利子)、償還条件は投資家や発行者のニーズに合わせて自由に設定することが可能だ。

販売時期や需給関係などからさまざまな条件の仕組み債が発行されている。数ヶ月前であれば日経平均株価は2万円を超える水準であったため、この時期に発行された仕組み債と現在のものでは当然条件が異なる。日経平均株価の終値が2万円の時に発行されたもので、ノックイン判定水準が75%であれば、日経平均株価終値が1万5000円でノックインする。

こうなれば満期時に額面金額を割り込む可能性がある。現在の日経平均株価の水準は1万7000円前後であるが、これならばまだ2000円の余裕があることになる。

しかし、トリガーの水準も相場環境や需給、仕組み債の期間によって変化する。商品によって、ノックイン水準が70%のものもあれば、50%のものもある。またトリガーについても同様に100%のものもあれば105%のものもある。期間についても1年もあれば5年もある。対象も、日経平均株価だけではなく、他国の株式指数や通貨など、さまざまな条件の仕組み債が発行されている。

仕組み債のリスク

仕組み債を購入するにあたり、投資家はリスクを過小評価しがちであることに警鐘を鳴らしたい。特にアベノミクスによる株価上昇で投資家は株価の下落リスクを過小評価するようになった。日経平均株価が金融緩和政策により大きく下落することがなくなってしまった悪弊だ。

一般的な債券に共通するリスクは①発行者が利払いや償還ができなくなる信用リスク、②途中売却の際の価格変動リスク、③外貨建て債券の場合は為替リスク、④債券の流動性が低い場合には思うように売却ができない流動性リスク、が存在する。特に仕組み債は流動性が低く途中売却は困難である点に注意が必要だ。

仕組み債にはこうした一般的な債券が持つリスクに加え、固有のリスクもあることを確認しておくべきだ。ノックインやトリガーといった条件次第では、参照指標次第でクーポン(利子)が変動したり、投資家が受け取る償還金に差損が発生したりするものもある。

冷静に仕組み債を検証すれば、実は投資家にとって不利な条件が設定されていることに気付くだろう。日経平均株価を参考指標とする仕組み債の場合、日経平均株価が下落すれば投資家は元本割れのリスクを負う。その一方で日経平均株価が上昇した場合には投資家が享受できるリターンはあまりに少ない。リスクとリターンのバランスが悪いのだ。

そして、最大の問題点は手数料だ。仕組み債において見かけ上は販売手数料は存在しない。投資信託では目論見書などにコストが明示されているが、仕組み債では証券会社は自身の組成コストを勘案して、あとは仕切り価格という形態で価格を設定し販売している。仕切り価格と組成コストの間の値ザヤが実質的な手数料となっているが、投資家はこれを知ることができないのだ。

高いリターンを得るには高いリスクが付きもの

かつて兵庫県朝来市が仕組み債で多額の評価損を抱え、証券会社と銀行に約4億8千万円の損害賠償を求める訴訟を起こしたことが話題になった。また奈良県市町村総合事務組合が退職手当基金の運用目的で保有していた仕組債を満期前に売却し、元本割れにより20億円が消失したという問題も生じている。他にも仕組み債に対しては金融機関の説明が不十分であるとしてさまざまな問題が発生している。

これらの不祥事からわれわれ投資家は何を学ぶべきなのだろう。金融機関側にも十分な説明義務が果たされていなかった可能性は否定できない。しかし、高いリターンを求めれば当然リスクも高くなるという真理から目を背けた運用者側の責任はより重大だ。公的な資金を預かり運用する立場であればなおのこと責任は重いはずだ。

決して仕組み債が悪い商品であると否定するつもりはない。低金利の現在ではこうした金融商品に対するニーズがあるのは事実だ。問題はリスクを過小評価しがちになることだ。高いリターンを得るには高いリスクを取る必要がある。それはどのような金融商品であっても変わらない不変の真実であることを肝に銘じておく必要がある。(ZUU online 編集部)

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