金融所得課税の一体化
(写真=PIXTA)

2016年1月から「金融所得課税の一体化」が始まる。金融商品ごとに異なっていた税制を統一しようとするものだが、投資行動や市場にはどのような影響があるのだろう。


「金融所得課税の一体化」で変わる2つのポイント

債券と株は税制上の取り扱いが全く異なっており、わかりにくい上に「不公平税制である」との指摘もあった。しかし「金融所得課税の一体化」が実現すると、株や債券、デリバティブなど金融商品毎に異なっていた複雑な税制がすべて同じになる。

大きく変わるのは次の2点。国債、外国国債などの公社債や、MMF、外貨MMFなどの公募公社債投資信託債券など(合わせて以下、債券)の譲渡益が非課税から課税になること、および、債券と株の損益通算が可能になることだ。では、この2点が可能になると投資家にはどのような影響があるのであろうか。


外債、外貨建てMMFの売却が進む

現状、債券の収入に関しては、譲渡益は原則として非課税、利子は「源泉分離課税」、償還益に対しては「総合課税」が採用されていた。その複雑な税制が、2016年から株式などと同様、20%の「申告分離課税」(確定申告が必要)になる。

このことを見据え、証券会社は個人投資家に含み益がある外債や外貨建てMMFの売却を勧めている。年内に売却するなら譲渡益に税金はかからないが、年が変わると譲渡益に対して20%の税金が課されるためである。アベノミクスによる円安で、外貨建てのMMFの中には利が乗っているものが多い事がターゲットになっている。

日本証券業協会によると、10月末の外貨建てMMF残高は2兆1648億円ある。この一部だけでも株に回るとしたらある程度の市場インパクトにはなりそうだ。その他の債券、公社債投信の一部が株にシフトする可能性も高そうだ。


資産のポートフォリオ化が進む

税が一体化されることにより、それぞれの税制の違いを考えなくてよくなり、金融商品というカテゴリーで商いできるようになる。源泉分離課税や総合課税から申告分離課税に変更された理由は「損益通算を可能にするためだ」と言われている。また、総合課税にしなかったのは、富裕層など所得税率が高い人の投資意欲を損なわないようにするためのようだ。

日本では、資産のポートフォリオという考え方は残念ながら個人投資家にはあまり普及していない。債券と株は通常、逆の動きをする。したがってポートフォリオの組みようによっては、損益通算によって節税効果が考えられる。債券と株式の損益通算が可能になったことで、資産のポートフォリオ化が進む可能性がある。

金融商品間の損益を通算して課税する事が可能になり、ポーロフォリオ運用やヘッジ取引などで市場が拡大するとの見方が強い。個人金融資産1700兆円を活性化し、「貯蓄から投資へ」の流れを本格化するためにも、NISAやこどもNISAとともに重要な施策の一つととらえられている。


デリバティブも損益通算の対象になる可能性

1月からには間に合わないかもしれないが、株式とデリバティブの損益通算についても承認される可能性が高い。

デリバティブについては2012年1月からの税制改正で、店頭デリバティブ取引等( FX 、CFDなど)と市場デリバティブ取引等(先物・オプション、商品先物など)の損益通算が可能となった。ただデリバティブと株との損益通算はまだ実現していない。

2015年8月に金融庁や経済産業省、農林水産省が公表した2016年度税制改正要望では、「金融所得課税一体化(金融商品に係る損益通算範囲の拡大)」として、上場株式等とデリバ ティブ取引等(先物・オプション取引、FX、商品先物等)との損益通算を正式に掲げている。

これに対応し2015年11月25日、「金融所得課税一体化」の範囲拡大に賛成する証券、FX、商品先物、銀行、プロバイダーなど合計44企業・団体は、当局の要望を後押ししようと、個人投資家の税制上に関するアンケート結果を発表した。

2万3981人が回答したこのアンケートでは、回答者の93%が株式とデリバティブの損益通算に賛成している。さらに、回答者の半数近く(45%)が何かしら投資行動を変える方針で、「これまで取引していなかった新たな投資商品に投資する」(25%)、「これまでより上場株式等の取引量を増やす」(19%)、「ヘッジ取引などの取引手法としての活用を検討する」(16%)などが多く寄せられている(複数回答)。

認可されるのもおそらく時間の問題だろう。

株とデリバティブの損益通算が正式に認められれば、保有ポートフォリオをデリバティブでヘッジする手法がさらに一般化してくる可能性が高い。ヘッジ手段が拡大するとともに、節税効果も期待される。

平田 和生
慶応大卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーを務める。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。日本株トップセールストレーダーとして市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスを行い、国内外機関投資家、ヘッジファンドから高評価を得た。現在は主に個人向けに資産運用のアドバイスをしている。

【関連記事】
・証券会社の営業があなたの「外貨MMF」の売却を促す理由
・投資家必見!IPO当選確率を上げる5つの方法
・スター・ウォーズ「フォースの覚醒」公開で株価が上がる?
・社会人注目!日経新聞・四季報などがネット上で全て閲覧可!その意外な方法とは
・国民年金保険料を滞納し続けるとどうなるのか?