相続放棄
(写真=PIXTA)

2015年の税制改正によって相続税の対象が広がったことをご存じの方も多いだろう。6000万円の財産を3人で相続する場合の単純計算では、従来は税額がゼロ、税制改正後は120万円の相続税が発生する。この改正によって相続税の増加が見込まれるが、場合によっては相続をしない「相続放棄」をした方が有利なこともある。今回はこの相続放棄についてみていこう。

相続放棄の期限と注意点

相続とは、亡くなった人の財産(相続財産)を配偶者や子供などの「相続人」に分配する仕組だ。相続放棄とは、相続財産に対する権利を放棄することである。一定期間内に家庭裁判所に相続放棄の申出をすると、相続人ではなかったものとみなされる。

なぜ「権利を放棄する」という選択肢があるのだろうか。相続財産は持ち家や預金等のプラスの財産と、借金等のマイナスの財産がある。プラスよりマイナスの財産が多い場合、相続によって借金等を背負うことになり、相続するメリットがない。また、相続財産を特定の相続人に集約したり、相続による争いを避けたりといった事情に基づくこともある。つまり相続とは強制ではなく、状況に応じて財産を引き継ぐ権利と言える。

相続放棄ができる期間は、相続の発生を知った日(死亡日等)から3か月以内。この期間を熟慮期間とい、この間に相続をするかしないかを決定する必要がある。何もせずに3か月を超えた場合は、相続する選択をしたとみなされる。また、3か月以内であっても家庭裁判所に相続放棄を申し出る前に家を売る等の相続財産処分をした場合も、相続放棄はできなくなる。もし熟慮期間が3か月では足りなければ、熟慮期間内に裁判所へ申し立て、承認されることによって延長ができる。相続財産の把握等に時間がかかる場合は延長を申し立てるとよい。

相続放棄の注意は、取消ができないことだ。借金が多くて相続放棄をした後に、多額の財産が見つかっても、相続放棄をした場合は新たに見つかった財産を相続する権利がなくなる。ただし、詐欺や脅しによって相続放棄があった場合は、詐欺や脅しの事実を知った時から6か月以内であれば相続放棄取消の手続きが可能である。6か月を経過した場合や、相続放棄から10年が経過すると、取消はできなくなる。

生前に相続放棄できる?遺留分の放棄とは?

相続の発生前、つまり本人が亡くなる前に相続放棄はできるのだろうか。答えは「不可」である。生前に裁判所へ相続放棄の申出をしたり、相続放棄の書面を用意したりしておいても無効である。相続放棄は民法において「相続の開始を知った時から」3カ月以内と記述されているためだ。相続発生前に相続放棄ができると、相続財産の保有者から生前に相続放棄を強要されるおそれがある。

相続財産の配分を生前に決めるには「遺言」という方式があるが、自分のあずかり知らぬところで不利な遺言が作成されていた場合、法定相続分を請求することができる。法定相続分とは、民法で定められた相続人の取り分を指す。配偶者と3人の子供が相続人の場合、配偶者は2分の1、子どもは残りの2分の1を子どもの人数で割った6分の1ずつが法定相続分である。これを請求する権利は、生前に放棄することができる。これを「遺留分の放棄」といい、相続放棄とは別の手続きである。遺言で相続財産の配分を決めておき、他の相続人が遺留分の放棄をすることで、生前にある程度の配分は決めておくことができる。

相続放棄した方がいいケースとは

相続放棄をした方がいいケース、しない方がいいケースを見てみよう。

まずは相続放棄をした方がいいケース。プラス財産よりマイナス財産の方が多い場合、相続放棄をすれば負債を負わずに済む。この場合、他の相続人が負債を負うことになり、負債自体が消えるわけではない。また、同族会社の株式を分散させたくない場合は相続放棄を検討する。同族会社の株式は会社の運営権であり、これが分散すると経営上の意思決定に支障が出たり、事業を承継しない株主からの配当の要求など、事務手続きや経営上の不都合が起きることがある。

そのほか、亡くなった人に子どもがいない場合はその父母が相続人となり、それもいない場合は兄弟姉妹が相続人となるが、父母が相続した場合はその財産を再度兄弟姉妹が相続する可能性を考えると、父母が相続放棄を選択することも一手だと考えられる。

相続放棄を選択しないケースとして、相続の発生を知ってから3か月を経過した場合は、相続放棄の選択肢はない。また、プラスの財産よりマイナス財産の方が多ければ相続した方がいいだろう。

生兵法ではなく専門家に相談を

相続放棄は取消ができないため、相続財産を正しく把握するとともに、不明確な部分があれば熟慮期間の延長も視野に入れるとよい。また、相続は「争続」と言われることもあるように、親族で泥仕合になるケースもあると聞く。財産の内訳だけでなく取り巻く状況や相続人の関係性によって、答えは幾通りもあるはずだ。2015年税制改正によって対象が拡大され、税額も小さくないため、生兵法ではなく専門家に相談して進めるとよいだろう。(ZUU online 編集部)

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