(写真=Thinkstock/Getty Images)
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信用取引の魅力のひとつに株主優待の権利獲得のための「クロス取引」がある。優待を低コストで取得できるため、雑誌やウェブサイトの株主優待特集で幅広く紹介されるようになり人気化している。ただ、クロス取引には落とし穴がある。逆日歩がつくと、株主優待以上のコストがかかってしまうことがよくあるのだ。

株主優待の「クロス取引」をおさらい

まずはクロス取引について解説しよう。クロス取引は資金の有効活用し、価格変動リスクなしで優待のみを取得する人気の手法だ。魅力的な株主優待は長期保有で得るのが理想だが、保有し続けることで資金を寝かせてしまったり株価変動リスクもある。

株主優待の権利は会社が発表する権利確定日に株主名簿に記載されていることで確定出来る。通常は中間期末、年度期末を確定日とすることが多い。株主名簿に記載されるためには、権利確定日の3営業日前までに買い入れをする必要がある。今年2016年3月末に優待の権利が確定する会社ならば、3月28日が権利付き最終日になる。

クロス取引は通常、買いたい優待会社の権利付き最終日に行う簡単な取引だ。前場か後場の寄り付きに、「現物の買い注文」と「信用の売り注文」を同株数、成り行きで注文を入れるだけだ。約定は売り買いともに同価格で出来る。そして、権利落ちとなる翌営業日に信用売りを現渡しにより決済すれば完了だ。株式売買手数料はコストとなるが、値動きによる損失のリスクはない。ネット証券で手数料が低下したことにより可能になった手法だ。気をつけなければいけないのは、空売りした株に逆日歩といわれる貸株料が課されることがあることだ。

逆日歩とはなに?

信用取引の売建をしている投資家が、空売り残高が増えたときに請求されるコストだ。通常、信用取引は、買建は証券会社から現金を借りて株式を買い、売建は証券会社から株券を借りて株を売る。したがって、買い方は融資の金利を支払い、売り方は売却代金を貸すことになるため金利を受け取る(現在はゼロ金利)。証券会社は、買い方が手に入れる株式を売り方に貸し、売り方の売却代金を買い方に貸し、社内で差し引き相殺して不足した分を証券金融会社である日本証券金融(日証金)から調達する。このような証券会社と証券金融会社との資金・株券の取引を「貸借取引」という。日証金は各証券会社からの貸借取引を内部で融通・相殺する。

ただ、空売りが増えると日証金でも株式が不足して融通できないことがある。その場合、日証金が株式を長期保有している機関投資家などから、入札で株式を借りてくることになる。その貸株料が逆日歩だ。株式を借りている売り方が支払わねばならない非常時のコストだ。

逆日歩が発生するかどうかは、毎営業日の取引終了後に売買を差し引いてわかる。したがって、逆日歩が有無や料率は翌日にならないとわからない。株券の需給状況が大きく売りに傾いている場合、高額の逆日歩が付く場合もあるので、具体的な例を挙げて説明しよう。

なんと逆日歩で牛丼が6000円に!

2013年8月に吉野家 <9861> で起こった逆日歩で説明しよう。吉野家は株主優待として3000円相当のサービス券を提供している。人気があるサービスのため、権利付き最終日にクロス取引が急増して株不足になり逆日歩がついた。

吉野家株は8月権利付き最終日に11万7100円で、現物株の買建と信用の売建であるクロス取引を入れられた。翌日、売建を現渡しで決済出来るため株価変動リスクがなく、3000円の牛丼券を低価格の売買手数料だけで獲得できるはずだった。ただ、クロス取引狙いの空売りが急増して、とんでもない株不足の状態に陥り、1株1日あたり2000円の逆日歩が発生してしまった。逆日歩は、株券の受け渡し完了までの日数となる。株券を借りている間は休日でも発生するためカレンダーによって発生する日数が違ってくる。

吉野家の場合逆日歩は3日分となり1株あたり6000円のコストが発生した。3000円の牛丼券のために現物買いと信用売りの株式委託手数料のほかに6000円のコストがかかってしまったのだ。

東京ドーム <9681> 株もジャイアンツのチケットがもらえるため人気がある。特に、6万株以上で当日指定席がもらえる優待が人気で、権利確定の1月末の逆日歩銘柄の常連だ。2012年には1000株1日あたり6000円という高額な逆日歩が発生した。200円の株価で6万株の現物買いと信用売りを建てた投資家は株価変動リスクなしで指定券の権利を獲得するはずが、36万円の逆日歩を払うことになってしまった。

これは極端な例にしても、2016年1月権利確定付き銘柄では、1月20日権利確定日のダイドードリンコ <2590> に逆日歩がついた。同社は3000円相当の同社製品が優待でもらえる。1月15日が権利付き最終日で、翌日4.7円の逆日歩の発生がアナウンスされた。

今年のカレンダーでは逆日歩日数は1日で済んだため、権利確定出来る100株のクロス取引にかかった逆日歩は470円だった。ダイドードリンコは1月と7月に優待が確定する。過去の逆日歩を見ると、2010年から2014年まではなかったが、2015年1月20分には100株1日あたり60円、2015年7月20日分には220円かかっており、今回が470円となった。クロス取引の人気とともに逆日歩リスクも上がってきているようだ。

信用取引の逆日歩の状況は日証金が毎日公表している。同社のホームページや日本経済新聞の株式欄にも毎日掲載される。ただ、逆日歩が発生してからではもう避けることはできないのだ。どうしたらいいのだろうか。

クロス取引で痛い目を見ないためにできる2つのこと

逆日歩の状態や値段は取引翌営業日に行われる入札によって決定する。日証金のホームページや証券会社のメンバーサイトなどで「証金残」として日々公表される。貸株残高が融資残高を上回っていないかといった直近の需給をチェックすることで逆日歩はある程度予想できる。貸株残高は個別銘柄のカラ売りのために貸し出されている株数の残高で、融資残高は融資で買っている株数の残高だ。貸株残高が融資残高上回っている状態を「貸株超過」という。これが株不足だ。

また、株不足とはあくまで証券金融会社の貸株残高が融資残高を上回っている状態のことで、東証が発表する信用取引残高の「買い残」、「売り残」の残高を比較した貸借倍率ではない。貸借倍率が1倍以下になれば逆日歩が発生するというものでもないので証金残をチェックすることと、過去の逆日歩のトレンドをみるしか防御策はない。過去のトレンドは各種金融系のウェブサイトなどでチェックが可能だ。やはりそう簡単に優待権利だけゲット出来るわけでないので注意しよう。

平田和生 慶応大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。日本株トップセールストレーダーとして、鋭い市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスで国内外機関投資家、ヘッジファンドから高評価を得た。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。(ZUU online編集部)

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