(写真=PIXTA)
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安倍政権の経済財政政策は、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」といった3本の柱に基づく成長戦略として2012年に始まりました。その後、安倍首相はさらに経済成長を推進するために、2015年9月に「新三本の矢」を発表し、「2020年のGDP 600兆円」の目標達成を掲げました。

「GDP600兆円」達成に向けた国交省の動き

安倍政権の目標を受け、国土交通省は「2020年のGDP600兆円」達成に向けて、不動産投資市場の中長期的な成長戦略を話し合う有識者会議を設置し、2015年11月下旬に初会合を開きました。この有識者会議の目的は、「今後の不動産投資市場の持続的な成長に向け、当面講ずべき措置やオリンピック後まで見据えた中長期的な取り組みなど、目標設定を含む今後の不動産投資市場の成長戦略について、幅広い検討を行う」ためとされています。

不動産投資市場での成長戦略

日刊建設工業新聞の報道(2015年11月27日)によれば、この有識者会合で国交省は、成長戦略で重視するポイントとして、
・不動産投資市場の位置付けと目標のあり方
・成長分野等の不動産投資市場の拡大と国際競争力の強化
・資金供給の担い手の多様化
・不動産投資市場の透明性の向上

の4つを挙げています。

詳報は今後の議論の取りまとめを待つところですが、こうした会合では官僚が用意する筋書きを元に進められることが多いものです。過去の政策検討のレポートや前掲の報道から、どのような点が政策課題となるのかを推測してみたいと思います。

まず先の有識者会議の事務局は、国土交通省の「土地・建設産業局 不動産市場整備課」です。同じセクションで、2010年12月に「不動産投資市場戦略会議報告書」(以下、「報告書」と記載)というレポートを取りまとめています(当時の部署名は「不動産業課 不動産投資市場整備室」)。

テーマが「不動産投資市場戦略」と重なることから、この2010年の報告書での課題と施策を大まかに抽出してみます。

課題

・約2300兆円の不動産ストックが、不動産業や金融産業が成長していく上で生かされていない。
(約2300兆円の不動産のうち、不動産証券化資産のストック額は約33兆円)

方針(位置付け)

・「不動産と金融」を結び付ける機能の強化

具体的な施策(報告書で「具体的な施策のイメージ」として記載された7項目)

①長期的な資金供給策の検討(銀行融資の業種区分の詳細化等)
②不動産の再生に向けた新たな証券化手法の創設(不特法の改正)
③投資用不動産に関する取引報告制度の創設
④テナントにインセンティブが働く長期定期借家契約のあり方検討
⑤日本版アップリート制度の創設(米国のUP-REIT 等に相応する制度)
⑥公的年金等の投資促進(関係機関へのトップセールス等)
⑦国土交通省・金融庁による検討会の開催

個別の説明は省きますが、上記の具体的な施策の内容を読む限り、不動産ストックの中でシェアの大きい商用不動産を中心に不動産証券化を進め、金融市場から不動産投資の拡大を図ることに力点が置かれていたと言えます。

こうした内容を踏まえ、2016年以降の不動産投資市場での成長戦略では、どのような方向性が打ち出されるのでしょうか。

先の日刊建設工業新聞の記事で国交省は、
「今後、成長が見込まれる観光や物流、福祉・医療関連の不動産への投資や、不動産全般で環境・耐震・バリアフリー・業務継続性能を高めるような投資を促す具体策を検討するよう促した。人口減少で増大する自治体の不動産ストックの活用や、インフラ施設向けの不動産投資を実現するための具体策も探る。」

と、報じられています。こうして見ると、特定の不動産分野の投資を促すための不動産証券化の手法を、より細分化、深化させていくことがひとつの方向として考えられるでしょう。

このように、不動産投資の活性化によって発展が期待される分野として、
● 福祉・医療
● 観光
● 物流
● 環境投資

といった分野が挙げられていますが、こうした分野の一部では、すでに用途に特化した「単一用途特化型」の上場J-REITがあります。観光分野ではホテル特化型が該当し、物流分野も物流施設特化型のJ-REITがあります。今後、すでにJ-REITが運用されている特化分野への投資が加速するか、また、新たな分野での特化型J-REITが組成されるかどうかは注目すべきポイントでしょう。

まとめ

不動産への投資は、金融とともに国内の経済活動の基盤となりますので、国内外からの不動産投資を呼び込むことは、GDP拡大につながる礎となります。

2014年以降に都内オフィスビルなどへの不動産投資が特に活発化していますが、こうした投資を持続させることや、特定分野への不動産投資を加速させる証券化の推進などは、不動産投資市場の成長戦略として今後、検討されるべきでしょう。また、「自治体の不動産ストックの活用や、インフラ施設向けの不動産投資」分野や「都市再生・地方創生及び不動産全般で環境・耐震・バリアフリー・業務継続性能を高めるような投資」を促す具体策は、地方経済の活性化としても注目すべき点です。

このようにGDP 600 兆円という目標達成に向けた政府の不動産投資戦略を注視していくと、今後の不動産投資の対象や運用を見直すヒントが得られるかもしれません。

(提供: マンション経営ラウンジ

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