株主優待
(写真=Thinkstock/Getty Images)

株主優待を実施している企業数は、2015年8月末時点で1227社で、国内上場企業のうち34%を占める。書店には株主優待を特集したマネー雑誌が並び、ネット上でも株主優待を特集した情報サイトが多く存在している。企業の業績上方修正に株価が反応しないことがあったとしても、株主優待を充実する企業開示に株価が反応しないことは少ない。個人投資家の中には株主優待マニアなる投資家も存在し、株主優待だけで生活する様子をSNSにアップしたりしている投資家も存在するほどの人気ぶりである。

ところで、機関投資家も株主優待をもらえるのだろうか? 仮に株主優待をもらった場合はどのように活用しているのだろうか?

株主優待は8割を占める機関投資家にも権利がある

株主優待は、株主が個人であろうとも機関投資家であろうとも権利は一緒だ。基本的には権利確定日の株主名簿に名前さえあれば、株主優待の権利が確定される。ただ海外投資家など非居住者には、発送していないことが多いようだ。

個人投資家の日本の株の保有比率は、2014年3月末の東証の株主分布状況調査によると金額ベースで17.3%程度。 残りの約8割が機関投資家である。そのうち外国法人が31.7% 、事業法人が21.3%、金融機関が27.4%となっている。ただあくまでこれは名義上の分布状況だ。たとえば、日本の時価総額530兆円のうち実質的な筆頭株主はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)で、2位が日銀と言われており、日本生命、三菱UFJ銀行がそれに続いている。どんな主力株の大株主をみたところで、GPIFや日銀の名前はでてこない。これは運用を委託されている信託銀行等の名義になっているためだ。同様に、外人投資家の名義は管理するカストディ口座名義、ヘッジファンドの名義はプライムブローカーとして管理する証券会社名義になっていることが多い。

株主優待では、ギフト券や商品券が最も多く、飲料・食料品、日用品などが続いている。この8割の機関投資家は、この株主優待をどうしているのだろうか?

優待券は可能なものは換金する

株主優待の処理に対する法的な義務はない。ただ、前述のGPIFの場合、国民のお金を運用していることから、運用者に対し「株主に配布される現金以外の便益は現金化する」ことを求めている。GPIFがそうなら、他の年金やファンドはそれに準ずることになる。受託側は商品券や交通チケットなどは他の顧客の分もまとめて入札を実施し、一番高値をつけた金券会社などに売却しているようだ。その売却代金を運用財産に組み込んでいる。金券以外でも換金性の高いものは売却しているようだ。

昔は、ガバナンスやコンプライアンスが今ほど厳しくなかったので、機関投資家や証券会社の内部で株主優待を社内で使用していたこともあったとは聞くが、現在ではそういったことはありえないだろう。

問題は、自社製品、コメ、季節のものといった換金性の低いものだ。会社によって扱いに微妙な差はあるだろうが、競争入札で売れるもの以外は一定期間保管して破棄するか、福祉施設などに寄付することが多いようようだ。

機関投資家には実質配当利回りは意味があまりない

個人には、実際の配当に株主優待の額を足した実質配当利回りという考え方がある。たとえば、個人に人気のあるディズニーランドを運営するオリエンタルランド株の場合、通常の年間配当が2016年3月期の予想ベースで35円。1単元100株あたり3500円。人気の株主優待として100株の株主に対し6900円の入園券年間パスポートが付与されるので、会わせると年間1万400円となり2月12日の7650円に対し実質配当利回りが1.35%になるという考え方だ。1.35%なら市場金利からしても、ディズニーランドに行く人にとっては好利回りだ。

ただこれはあくまで個人投資家の場合だ。機関投資家と言えば投資単位が大きい。たとえば、オリエンタルランドでみると、京成電鉄、三井不動産、千葉県という安定大株主に次いで、投資勘定名義と思われる日本マスタートラスト信託銀行名義で900万株のオリエンタルランド株を保有している。株主優待は100株でパスポート入園券が年間1枚のはずなので、パスポートを年間9万枚も来るのかと思ってしまう人もいるだろう。ただ、ほとんどの株式優待には上限がある。ディズニーランドパスポートの場合、100株で年間1枚の権利を獲得。400株で2枚となり、その後2400株保有の最大12枚までは比例する。しかし2400株以上の場合は、最大12株で終わりだ。900万株持っていてももらえるのは12枚。

実際には、900万株所有している投資家にとって、12枚の優待券は換金したとしても誤差のようなものであり、手間を考えると換金して信託財産に組み入れる意義も悩ましいところだろう。

株主優待は日本だけのガラパゴス

株主優待というのは、日本独自で発展しているようなのだ。ちなみにアメリカでは、スターバックスなどの一部を除き、ほとんど存在しないようだ。世界のスタンダードとしては、優待券や商品で実質配当増をするなら、本当に配当を増やせという株主要求が強い。

上場企業は少しでも効率よく利益を上げて、これを配当するか再投資することで、本業で株主に報いるべきだ。小口の安定株主を大事にする気持ちはよくわかる。優待メリットを享受する株主が、ユーザーを兼ねている可能性も高く、マーケティング効果も高いのだろう。ただ、機関投資家からは、個人投資家など少額株主へのメリットが高くなることから、アンフェアで無駄なコストと指摘されても仕方がない面があるだろう。日本に根付いたこの制度が将来にわたって存続するためにも、今後も株主優待は正しい方向へ発展していただきたい。自社製品や自社優待券ならわかるが、クオカードなどを配るなら実際に増配してもらいたいと思う。

平田和生
慶応大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。日本株トップセールストレーダーとして、鋭い市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスで国内外機関投資家、ヘッジファンドから高評価を得た。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

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