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投資の応用
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【或る編集者の独白】

七人の侍はどこに消えた? 新興国投資の本質とは何か

新興国,投資
(写真=Thinkstock/Getty Images)

よいか。
他人を守ることで、自分も生きることができる。
戦とはそういうものだ。
自分のことばかり考えている奴は、自分をも滅ぼす奴だ。

上記は、映画「七人の侍」で島田勘兵衛が農民を叱責する場面の科白である。志村喬演じる勘兵衛は戦国時代を生きる歴戦の智将だが、合戦は敗戦続きで浪人となり、ひょんなことから盗賊から農村を守る役を引き受ける。初老で普段は口数が少なく温厚だが、時には若い侍や農民を厳しく叱責する父親のような役回りでもある。

この映画の勘兵衛と若者のやり取りを観て改めて感じるのは、人間は葛藤のなかで成長するということだ。思うに、新興国経済は人間に例えるなら成長期を迎えた中学・高校生くらいの年頃ではなかろうか。少子高齢化が進む日本社会に生きる私たちからすると、新興国は育ち盛りで将来有望な投資先のようにも見える。事実、金融機関の窓口では新興国ファンドなどが飛ぶように売れた時期もあった。しかし、同時に新興国経済は思春期の子供にも似た意外なほどの脆さを内包している。

いま目の前で起きている新興国危機は、更なる成長に向けた思春期特有の葛藤といえるかもしれない。新興国だけではない。この葛藤は、私たち先進国を含む国際社会全体の問題でもある。国家も企業も個人も、この問題とどう向き合うべきか。ここで改めて考えてみたい。

いつまで経っても大人になれない子供

2007年、世界資源研究所と国際金融公社は、購買力平価で年収3000ドル未満が約40億人に達し、世界人口の72%を占めることを明らかにした。いわゆるBOP(Base of the Economic Pyramid)と呼ばれる層である。これらBOPには、新興国の人々が多く含まれている。新興国経済が成長して、BOP層の所得が増えれば消費も急速に拡大する……多くの投資家が、そんな期待を寄せた。ちなみに、2007年といえば日本で団塊の世代の定年退職が始まった時期でもある。戦後日本の高度経済成長期、池田内閣の策定した国民所得倍増計画のもとで爆発的に拡大した消費社会に、新興国経済の未来のイメージを重ねた人も少なくなかったのではないか。

だが、BOPの問題はその国の貧富の差に加えて、治安の悪化、政情不安といった危険と表裏一体でもある。すべてのBOP層が、日本人のように勤勉な国民性とは限らない。新興国投資の本質的なリスクとリターンがそこにある。

「環境が人を育てる」という言葉があるが、そもそも人は自分の生まれる環境を選ぶことはできない。すべての子供が恵まれた環境のもとで立派な大人に成長するとは限らないのだ。生活態度が乱れ、反社会的な行動をする者もいれば、筋の通らない屁理屈を捏ねて周りに迷惑をかける者もいる。国家も同じである。どこの国とは言わないが「いいかげん大人になれ」と言いたくなるような新興国が存在する。体格は立派だが、いつまで経っても大人になれない子供のように、いつまで経っても先進国になれない「万年新興国」も確かに存在する。すべての新興国が必ずしも将来有望というわけではない。新興国投資が人気化するなかで過大評価された国があるのも否定できない事実である。

木槌の音に怯える農民たち

反面、昨今の新興国危機に巻き込まれて、必要以上に売られた国もある。その新興国は、世界最大のBOP層を有すると同時に石油の純輸入国でもある。この国は、いまやモータリゼーションの真っ盛りであり、原油安はプラスに作用するはずであるが、新興国という理由で過剰に売られた嫌いがある。前述の子供のように周りに迷惑をかけている訳でもないのに、なぜ親の仇のように売られなければならないのか。

昨今の新興国危機と呼ばれる現象を見ると、どうにも首を傾げざるを得ない。木槌の音に怯え「盗賊がきたぁ」と大騒ぎしている農民たちのようにも見える。本当にこれが投資と呼べるのか。これが運用といえるのだろうか。

企業の生き残りをかけたBOPビジネス

一方、企業はどうか。先進国経済は成熟期を迎えており、大きな成長は望み薄い情勢にある。そうしたなかで、世界人口の72%を占めるBOPを巨大マーケットと捉え、活路を見出そうとする企業が増えている。

先に述べた通り、人は自分の生まれる環境を選ぶことはできない。しかし、「人を育てる環境」をつくることは可能なはずだ。BOPの人々に目線を合わせ、対話し、ニーズを汲み取り、彼らにとって有益な製品・サービスを提供する。ときには彼らを生産者や流通業者として取り込み、パートナーシップを構築する。同時に啓蒙活動を推進し、生活水準の向上に貢献する。こうした地域の持続的な発展を目指すBOPビジネスは、結果として市場を育て、企業業績の長期的な向上をもたらす。

裏を返せば、企業もそこまで踏み込まなければ、10年20年先を見据えたグローバル競争で生き残ることが難しい時代を迎えている。マスコミがこぞって新興国危機を取り沙汰するなかでも意に介さず、あくまで未来の成長を見据えたBOPビジネスを貫くことが、現地との信頼関係を構築し、新たなマーケットを育てることにつながるのだ。マスコミの叩く木槌の音など気にする必要はない。「他人を守ることで、自分も生きることができる」投資の一つの姿がそこにある。

決戦の日は雨だった

1983年、西側の7つの先進国はウィリアムズバーグ・サミットの政治声明で、ソ連がINF(中距離核戦力)削減交渉に応じない場合は、中距離核ミサイル・パーシングIIの配備で対抗すると発表した。ソ連が大陸間弾道ミサイル・SS20を欧州に展開したことへの対抗措置である。この年は当時の中曽根首相が訪米先でワシントン・ポストの取材に対し「日本列島そのものが不沈空母だ」との発言(※通訳の意訳)が大きく報じられて物議をかもしたほか、北海道宗谷岬沖で民間航空機がソ連のミグ23に撃墜されて乗員乗客269人が全員死亡するなど、東西冷戦が一段と厳しさを増した時期であった。

80年代は東西冷戦の最終決戦の10年だった。一つ判断を間違えれば人類を滅亡させることにもなりかねない核の脅威のなかで、西側の7つの先進国が結束してソ連経済を崩壊に追い込み、冷戦終結に持ち込めたのは、強烈なリーダーシップのもと政治・経済・軍事において緻密な戦略と連携があったからこそだろう。

「七人の侍」の決戦の日は雨だった。いま、世界の金融市場は新興国危機という豪雨に見舞われている。七人の侍はどこに消えた? まさかとは思うが、7つの先進国が将来有望な国の可能性を潰す老害にならないことを切に願うーー自分のことばかり考えている奴は、自分をも滅ぼす奴だ。(ZUU online 編集部)

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