仕組債は、上手に活用すれば有用な金融商品です。しかし資産運用初心者にとっては、やや難しく感じるかもしれません。例えば「いろいろな専門用語が出てきてよくわからない」「どのパターンだとどのように償還されるのかがよくわからない」といった理由があります。そこで今回は、仕組債の用語と償還パターンについて分かりやすく解説していきます。

目次

  1. 仕組債とは何か?
  2. 仕組債に関する用語をわかりやすく解説
  3. 仕組債における3つの償還パターンをわかりやすく解説
    1. パターン1:早期償還判定日において参照指数の終値が早期償還判定水準以上となった場合
    2. パターン2:一度も早期償還判定水準以上とならず、観測期間中にノックイン事由が発生しなかった場合。または、ノックイン事由が発生した場合で、最終評価日の参照指数が当初株価以上の場合
    3. パターン3:一度も早期償還判定水準以上とならず、観測期間中にノックイン事由が発生した場合で、最終評価日の参照指数が当初株価未満の場合。
  4. 仕組債の用語と償還パターンを理解して資産運用に組み入れていこう
菅野陽平
監修者・菅野陽平
日本最大級の金融webメディア「ZUU online」編集長。株式会社ZUUM-A取締役。経営者向けメディア「THE OWNER」編集長。幼少期より学習院で育ち、学習院大学卒業後、新卒で野村證券に入社。リテール営業に従事後、株式会社ZUU入社。メディアを通して「富裕層の資産管理方法」や「富裕層になるための資産形成方法」を発信している。自身も有価証券や不動産を保有する個人投資家でもある。プライベートバンカー資格(日本証券アナリスト協会 認定)、ファイナンシャルプランナー資格(日本FP協会 認定)保有。編集著書に『富裕層・経営者営業大全』(一般社団法人金融財政事情研究会、2020年7月31日発売)

仕組債とは何か?

仕組債とは、文字通り一般的な債券にはない特別な「仕組み」を持つ債券のことです。債券とは、国や企業などが投資家からお金を借りるために発行する有価証券。そこにスワップやオプションなどのデリバティブ(金融派生商品)という「仕組み」を加えたものが仕組債です。仕組債は投資家や発行者のニーズに合う満期やクーポン(利子)、償還金などを比較的自由に設定することができます。メリットは、一般的な債券に比べて比較的高いリターンを期待できることです。しかし、前述の「仕組み」の影響等で元本割れが発生する可能性もあるため商品性をよく理解する必要があります。

仕組債の詳細については、以下の記事もご覧ください。

【第1回】仕組債とは?仕組みとメリット、リスクを解説
【第2回】仕組債のノックイン事由・早期償還とは 勘違いしやすいポイントを説明
【第3回】仕組債と投資信託の違い それぞれの特徴を徹底解説!

仕組債に関する用語をわかりやすく解説

仕組債の「仕組み」を理解するためには、各用語の意味をしっかりと把握することが必要です。ここからは、仕組債に関する主要な用語の意味を解説していきます。

  • 期間
    満期までの期間です。仕組債の種類によって満期までの期間が異なります。

  • 利率
    対象となる仕組債に投資をすることで得られる利率です。仕組債によって、固定利率のものや変動利率のものがあります。例えば変動利率の仕組債の利率は、複数回ある利率決定日のそれぞれにおける参照指数が利率判定水準以上の場合は年率6.00%、未満の場合は年率0.20%等と変動します。 複数の利率が記載されている場合は「どのような場合に利率が変動するのか」についてしっかりと理解したうえで商品購入を検討しましょう。商品内容については、各商品の説明資料や目論見書等に記載があります。

  • 利払期日
    投資家に利息を支払う期日です。例えば「毎年1月、4月、7月、10月の各26日(利払期日が営業日でない場合は翌営業日)」などと設定されます。

  • 発行者
    対象となる仕組債を発行した企業等のことです。債券は、国や企業などが投資家からお金を借りるために発行する有価証券なので、仕組債の購入はこの発行者に対しお金を貸すことにあたるともいえるでしょう。どこが発行しているのか確認するようにしましょう。

  • 参照指数
    仕組債で参照する指数です。参照指数がどのように動くかによって「高い利率が得られるか(変動利率の場合)」、「元本割れしてしまうか」などが決まります。参照指数は、一つの場合だけでなく複数の場合もあるため、必ず投資する仕組債の商品概要を確認しておきましょう。例えば「日経平均株価とS&P500の2つを参照指数とする」などと設定されます。

  • 最終評価日
    文字通り仕組債の最後の評価日です。償還について「元本確保で満期償還を迎えるか」、「元本割れで満期償還を迎えるか」は「最終評価日に参照指数がどのような値になっているか」で決まります。

  • 最終償還期日(満期償還日)
    文字通り最後に償還される日のことです。最終償還期日(満期償還日)を迎えると仕組債に投資した資金は戻ってきます。ただし早期償還の判定条件が付与されている仕組債の場合は、条件が満たされると最終償還期日よりも前に資金が戻ってくるため、注意しましょう。

  • 当初株価
    利率や早期償還、満期償還額等を判定する基準となる参照指数のことです。一般的には、その仕組債の発行日の株価となります。例えば、「2021年4月28日における日経平均株価とS&P500の終値」などと設定されます。 なお、参照指数が株価・株価指数以外の場合もあり、その場合は「当初指数」「当初レート」等と呼ばれます。

  • 早期償還
    ある条件を満たすことで満期を待たずに仕組債が償還されることです。仕組債ごとに定められた早期償還判定日に参照指数が早期償還判定水準以上の場合、早期償還となることが一般的です。

  • 早期償還判定日
    早期償還を判定する日です。

  • 早期償還判定水準
    早期償還の判定水準です。例えば「早期償還判定日において日経平均株価とS&P500がそれぞれ当初株価×100%」などと設定されている仕組債があります。仕組債の中には、早期償還判定日ごとに早期償還判定水準が逓減していくものもあります。

  • 償還額
    償還されるときの金額です。「早期償還」、「満期償還」など償還の条件ごとに金額の算定方法が記載されています。仕組債の「仕組み」の肝といえる部分となるため、しっかりと確認するようにしましょう。(本稿後半で3つの償還パターンに分けて解説しています)なお償還額は、いずれの場合においても額面金額(投資元本)を上回ることはありません。

  • ノックイン事由
    観察期間中の参照指数が一度でもノックイン判定水準以下になることです。

  • ノックイン判定水準
    あらかじめ決められている参照指数の水準のことです。例えば「日経平均株価とS&P500がそれぞれ当初株価×55%」などと設定されます。

仕組債における3つの償還パターンをわかりやすく解説

ここまで仕組債に関する用語を解説してきました。ここからは、仕組債の用語を使いながら償還のパターン別に3つ解説してきます。架空の仕組債を例に挙げますので、これを基に考えてみましょう。また、読み進めていくと「この用語はどういう意味?」となることもあるかもしれません。そんなときは、前章の用語解説に戻って用語の意味を確認してください。

期間 約2年
利率(固定) 年率2.50%(税引前)
発行者 ZUU信託銀行(架空の金融機関)
利払期日 毎年2月、5月、8月、11月の各28日(利払期日が営業日でない場合は翌営業日となる)
参照指数 日経平均株価、S&P500
最終評価日 2023年4月25日
当初株価 2021年4月28日における日経平均株価およびS&P500の終値
参照株価 2023年4月25日における日経平均株価およびS&P500の終値
早期償還条件 早期償還判定日における日経平均株価およびS&P500がいずれも早期償還判定水準以上となった場合
早期償還判定水準 日経平均株価およびS&P500についてそれぞれに当初株価×100%
早期償還判定日 毎年2月、5月、8月、11月の各10日
償還額(早期償還の場合) 早期償還判定日直後の利払期日(早期償還判定日の10営業日後)に額面金額の100%で早期償還
償還額(満期償還の場合) ① ノックイン事由が発生しなかった場合、額面金額の100%で償還
② ノックイン事由が発生し、
(A) 最終評価日における日経平均株価およびS&P500の終値が、いずれも当初株価以上の場合、額面金額の100%で償還
(B) 最終評価日における日経平均株価およびS&P500の終値のうち、双方またはいずれかが当初株価未満の場合、以下の計算式で算出された金額で償還
償還金額=額面金額×(最終評価日における償還額算出対象指数終値÷償還額算出対象指数の当初株価) (ただし、額面金額の100%が上限)
ノックイン判定水準 日経平均株価およびS&P500についてそれぞれに当初株価×55%
ノックイン事由 観察期間中の日経平均株価およびS&P500の終値のうち、双方またはいずれかが一度でもノックイン判定水準以下となった場合
観察期間 2021年4月29日~最終評価日まで
償還額算出対象指数 日経平均株価およびS&P500のうち、パフォーマンス(参照株価÷当初株価)が低いほうの指数
  • パターン1:早期償還判定日において参照指数の終値が早期償還判定水準以上となった場合
  • パターン2:一度も早期償還判定水準以上とならず、観測期間中にノックイン事由が発生しなかった場合。または、ノックイン事由が発生した場合で、最終評価日の参照指数が当初株価以上の場合
  • パターン3:一度も早期償還判定水準以上とならず、観測期間中にノックイン事由が発生した場合で、最終評価日の参照指数が当初株価未満の場合。

パターン別に表にまとめると以下の通りとなります。

パターン 早期償還 ノックイン事由 最終評価日の参照指数終値
パターン1 早期償還条件 充足
パターン2 早期償還条件 充足せず 発生せず
発生 当初株価以上
パターン3 当初株価未満

パターン1:早期償還判定日において参照指数の終値が早期償還判定水準以上となった場合

ノックイン事由の発生有無にかかわらず「早期償還判定日において参照指数の終値が早期償還判定水準以上となった場合」は、早期償還されます。この場合は、額面100%で償還されるため、元本割れは発生しません。また前章の用語解説でも述べたように参照指数が複数ある仕組債もあります。その際は「いずれの参照指数も早期償還判定水準以上であること」が条件であることが多いです。 元本割れはありませんが、仕組債自体の運用が終わってしまうため、早期償還日以降の利息が受け取れないことには注意が必要です。

あおぞら銀行
(画像=ZUU online作成)

パターン2:一度も早期償還判定水準以上とならず、観測期間中にノックイン事由が発生しなかった場合。または、ノックイン事由が発生した場合で、最終評価日の参照指数が当初株価以上の場合

一度も早期償還判定水準以上にならなかった場合、仕組債は満期まで運用されることになります。 ノックイン事由が発生しなければ、満期償還額は額面100%で、元本割れはありません。 さて、ノックイン事由が発生した場合はどうなるでしょう。この場合でも、「最終評価日の参照指数が当初株価以上の場合」は、額面100%で満期に償還されます。つまりノックイン事由が発生してもその時点で元本割れが確定してしまうわけではありません。

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(画像=ZUU online作成)

ノックイン事由が発生して元本割れしてしまうのは、以下のパターン3です。

パターン3:一度も早期償還判定水準以上とならず、観測期間中にノックイン事由が発生した場合で、最終評価日の参照指数が当初株価未満の場合。

「ノックイン事由が発生し参照指数が当初株価未満の場合」は、元本割れで満期償還されます。参照指数が複数の場合、いずれか1つでも当初株価未満になると、元本割れになります。 元本割れで償還される金額の算定方法は、一般的には「額面金額×(最終評価日における参照指数の終値÷当初株価)」となります。上記架空の仕組債の例のように参照指数が複数ある場合、「参照指数の終値」は「パフォーマンス(最終評価日における参照指数の終値÷当初株価)」が低いほうの指数(「償還額判定対象指数」といいます。)です。 商品説明資料等に「想定損失額のシミュレーション」が載っているはずです。参照指数がどこまで下落すると、どれくらいの元本割れが発生するのかも事前に確認しましょう。

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(画像=ZUU online作成)

なお元本割れで満期償還を迎えるケースでも償還するまでに利息を得ているため、仕組債のトータルリターンが必ずしもマイナスになるとは限りません。諸条件によっては「償還金額が元本割れしたものの受取利息と償還金額を合わせると投資元本より増えていた」となる可能性もあります。

仕組債の用語と償還パターンを理解して資産運用に組み入れていこう

ここまで仕組債の用語と償還パターンについてわかりやすく解説してきました。仕組債は、複雑な内容の金融商品となるため、各用語の意味をしっかりと理解して「どのような仕組みとなっているのか」を押さえておくことが大切です。用語を理解できれば商品説明資料を見たときに「利率の条件」や、「償還方法」などの償還パターンの理解も深まるでしょう。

仕組債は、一般的な債券に比べて高いリターンを得ることができるメリットを持つ金融商品です。用語と償還パターンを理解して上手にポートフォリオの一つに組み入れていきましょう。


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株式会社あおぞら銀行BANKウェブサイト:https://www.aozorabank.co.jp/bank/

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