仕組債の一つに「デジタルクーポン型」というものがあります。利率が2つ以上存在するため、資産運用初心者にとっては、少し複雑で難しいと感じるかもしれません。そこで5回目となる今回は、仕組債におけるデジタルクーポン型について解説いたします。

目次

  1. 仕組債とは何か
  2. 仕組債の一つ「デジタルクーポン型」とは何か
    1. 利率の判定について
  3. 仕組債の一つ「デジタルクーポン型」のメリット
  4. 仕組債の一つ「デジタルクーポン型」の注意点
  5. 「どのようなときに、どの利率が適用されるのか」をしっかりと理解しよう
菅野陽平
監修者・菅野陽平
日本最大級の金融webメディア「ZUU online」編集長。株式会社ZUUM-A取締役。経営者向けメディア「THE OWNER」編集長。幼少期より学習院で育ち、学習院大学卒業後、新卒で野村證券に入社。リテール営業に従事後、株式会社ZUU入社。メディアを通して「富裕層の資産管理方法」や「富裕層になるための資産形成方法」を発信している。自身も有価証券や不動産を保有する個人投資家でもある。プライベートバンカー資格(日本証券アナリスト協会 認定)、ファイナンシャルプランナー資格(日本FP協会 認定)保有。編集著書に『富裕層・経営者営業大全』(一般社団法人金融財政事情研究会、2020年7月31日発売)

仕組債とは何か

仕組債とは、文字通り一般的な債券にはない特別な「仕組み」を持つ債券のことです。 債券とは、国や企業などが投資家からお金を借りるために発行する有価証券のことを指します。そこにスワップやオプションなどのデリバティブ(金融派生商品)という「仕組み」を加えたものが仕組債になります。 仕組債は投資家や発行者のニーズに合う満期やクーポン(利息)、償還金などを比較的自由に設定することができます。仕組債の大きなメリットは、その「仕組み」によって一般的な債券に比べて比較的高い利率を得ることができることです。 今回説明する「デジタルクーポン型」は、仕組債の中でも高い利率を得ることが可能な商品です。ただリターンの裏側には、リスクがつきものです。デジタルクーポン型にも注意点やリスクがあるため、しっかりと理解していきましょう。

仕組債の一つ「デジタルクーポン型」とは何か

デジタルクーポン型の仕組債とは、参照指数が利率判定水準以上かどうかで利率が変わる債券のことで、これまでのシリーズで説明してきた「変動利率」の仕組債の一つです。利率が2つ以上に分かれるため、0と1で数値を表現する2進法を採用しているデジタルコンピュータのようであることから「デジタルクーポン型」という名称になったといわれています。

この説明だけでは、なかなか内容を理解するのが難しいかもしれません。そこで「固定利率」の仕組債を設定して説明した 【第2回】仕組債のノックイン事由・早期償還とは 勘違いしやすいポイントを説明と同じように、今回も架空の仕組債を設定したうえで解説していきます。今回の設定は「デジタルクーポン型」です。

※仕組債に関する用語については、これまでの連載、特に【第4回】仕組債をわかりやすく説明!各用語と償還パターンについてを参考にしてください。

【デジタルクーポン型の仕組債】
※本稿を通じて「仕組債B」と呼びます。適宜、【第2回】仕組債のノックイン事由・早期償還とは 勘違いしやすいポイントを説明に登場した固定利率の「仕組債A」と比較しながらご覧ください。

期間 約3年
利率(当初約3ヶ月) 年率6.00%(税引前)
利率(以降2年9ヵ月) 年率6.00%または年率0.20%(いずれも税引前)
発行者 ZUU信託銀行(架空の金融機関)
利率決定日 毎年1月、4月、7月、10月の各16日
利払期日 毎年2月、5月、8月、11月の各16日(利払期日が営業日でない場合は翌営業日となる)
参照指数 日経平均株価、S&P500
最終評価日 2024年7月24日
当初株価 2021年7月29日における日経平均株価およびS&P500の終値
参照株価 2024年7月24日における日経平均株価およびS&P500の終値
利率判定水準 日経平均株価およびS&P500についてそれぞれ当初株価×85%
利率決定日において、日経平均株価およびS&P500の終値がいずれも利率判定水準以上の場合は、年率6.00%(税引前)
利率判定水準未満の場合は、年率0.20%(税引前)
早期償還条件 早期償還判定日における日経平均株価およびS&P500がいずれも早期償還判定水準以上となった場合
早期償還判定水準 日経平均株価およびS&P500についてそれぞれに当初株価×100%
早期償還判定日 毎年1月、4月、7月、10月の各16日
償還額(早期償還の場合) 早期償還判定日直後の利払期日に額面金額の100%で早期償還
償還額(満期償還の場合) ① ノックイン事由が発生しなかった場合、額面金額の100%で償還
② ノックイン事由が発生し、
(A) 最終評価日における日経平均株価およびS&P500の終値が、いずれも当初株価以上の場合、額面金額の100%で償還
(B) 最終評価日における日経平均株価およびS&P500の終値のうち、双方またはいずれかが当初株価未満の場合、以下の計算式で算出された金額で償還
最終償還金額=額面金額×(最終評価日における償還額算出対象指数終値÷償還額算出対象指数の当初株価)(ただし、額面金額の100%が上限)
ノックイン判定水準 日経平均株価およびS&P500についてそれぞれ当初株価×60%
ノックイン事由 観察期間中(2021年7月30日~2024年7月24日)の日経平均株価およびS&P500の終値のうち、双方またはいずれかが一度でもノックイン判定水準以下となった場合
観察期間 2021年7月30日~最終評価日まで
償還額算出対象指数 日経平均株価およびS&P500のうち、パフォーマンス(参照株価÷当初株価)が低いほうの指数

【第2回】仕組債のノックイン事由・早期償還とは 勘違いしやすいポイントを説明で登場した仕組債Aと大きく異なる点は「利率」です。仕組債Aは固定利率で年率2.50%(税引前)でした。今回説明する仕組債Bは当初約3ヵ月の利率は年率6.00%(税引前)で以降は年率6.00%または年率0.20%(税引前。以下同じですので「税引前」という表記は省略します。)となっています。

一概に仕組債Aと比べることはできませんが、参照指数は同じ(日経平均株価とS&P500)でノックイン判定水準の割合(仕組債Aは55%、仕組債Bは60%)も大きく変わらないことを考えると、仕組債Bの高い方の金利6.00%は仕組債Aの年率2.50%に比べてかなり高い数字といえるのではないでしょうか。

当初約3ヵ月以降の2年9ヵ月の利率は、年率6.00%と年率0.20%に分かれています。これは、状況次第で年率6.00%の利率を受け取れる可能性がある一方で、年率0.20%の利率しか受け取れない可能性があることを意味しています。デジタルクーポン型を理解する肝となる部分のため、図を交えて説明していきます。

利率の判定について

その前に、仕組債の利率の判定ルールを整理してみましょう。仕組債Bの場合、当初約3ヵ月は、日経平均株価およびS&P500の状況にかかわらず年率6.00%です。それ以降は、日経平均株価およびS&P500の状況により「年率6.00%」または「年率0.20%」のどちらかになります。

【判定ルール1】
当初約3ヵ月→日経平均株価およびS&P500の状況にかかわらず年率6.00%
【判定ルール2】
当初約3ヵ月以降、利率決定日において日経平均株価およびS&P500の終値が
①いずれも当初株価の85%以上の場合→年率6.00%
②双方またはいずれかが当初株価の85%未満の場合→年率0.20%

仮に日経平均株価およびS&P500が以下の図のように推移したとしましょう。仕組債Bを購入してからどちらも下落が続き約3ヵ月後の時点で利率判定水準(85%)を下回ってしまいました。しかし【判定ルール1】のように当初約3ヵ月は、参照指数の状況に関わらず年率6.00%です。

あおぞら銀行
(画像=ZUU online作成)

では、約6ヵ月後の利率決定日でも日経平均株価およびS&P500の双方が利率判定水準を下回ってしまった場合は、どうなるでしょうか。

こちらは、上記の【判定ルール2】の②に該当することとなり年率0.20%となってしまいます。その後、日経平均株価は上昇が続き、約9ヵ月後の利率決定日では利率判定水準以上となりました。しかしS&P500は、下落が続き利率判定水準を下回ったままです。 この場合も【判定ルール2】の②のうちの「いずれかが当初株価の85%未満」に該当するため、利率は年率0.20%となります。 その後日経平均株価およびS&P500どちらも上昇が続き約1年後の利率決定日では、いずれも利率判定水準以上になった場合はどうでしょうか。これは【判定ルール2】の①に該当し年率6.00%の利率を得ることができます。

仕組債の一つ「デジタルクーポン型」のメリット

ここからは、デジタルクーポン型のメリットについて見ていきます。これまでの連載で解説したように、仕組債の大きなメリットは「通常の債券よりも相対的に高い利率を得ることができる」ということでした。デジタルクーポン型のメリットは、【第2回】仕組債のノックイン事由・早期償還とは 勘違いしやすいポイントを説明で紹介した固定利率の仕組債よりもさらに高い利率を得られる可能性があるということです。

仕組債の一つ「デジタルクーポン型」の注意点

ここからは、デジタルクーポン型の注意点について見ていきましょう。デジタルクーポン型は、仕組債の一種であるため、これまでの連載で紹介してきた「仕組債全般に通じるリスク」には注意が必要です。仕組債には、主に以下のようなリスクがあります。

  • 元本リスク・信用リスク
  • 価格変動リスク
  • 流動性リスク
  • 早期償還による再投資リスクなど

他の仕組債と同様に参照指数の動向によっては、元本割れしてしまう可能性があることには注意しましょう。デジタルクーポン型の場合は、上記のリスクに加えて「利率判定水準」の確認も重要です。 デジタルクーポン型には、これまでの連載で紹介した「固定利率」の仕組債と異なり「ノックイン判定水準」と「早期償還判定水準」に加えて「利率判定水準」という新しい水準が登場します。 「参照指数が何を指すか」はもちろん、これらの3つの水準をしっかりと確認しましょう。

投資を検討する際は、つい高い方の利率ばかりに目がいってしまうかもしれません。しかし以下のことも確認するようにしましょう。

  • 高い方の利率だけではなく、低い方の利率は何%であるか
  • どのような条件がそろうと低い利率が適用されるのか

「どのようなときに、どの利率が適用されるのか」をしっかりと理解しよう

ここまで仕組債の一つ「デジタルクーポン型」について見てきました。仕組債の大きなメリットは、その「仕組み」によって一般的な債券に比べて比較的高い利率を得ることができることです。

また仕組債の中でもデジタルクーポン型は、一般的な仕組債よりもさらに高い利率を得ることが期待できます。しかし対象となる参照指数の動向によっては、必ず高い利率が適用されるわけではありません。

参照指数の状況によっては、低い方の利率が適用される可能性もあります。デジタルクーポン型で重要なことは「どのようなときに、どの利率が適用されるのか」をしっかりと理解したうえで投資することです。

デジタルクーポン型は、うまく活用すれば高い利率を得ることが期待できます。利率判定水準や利率判定のルールなどをよく確認してデジタルクーポン型を上手に資産運用に組み入れていきましょう。

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株式会社あおぞら銀行BANKウェブサイト:https://www.aozorabank.co.jp/bank/

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