ビジネスパーソンにとって、笑顔からこぼれる歯の見栄えは重要ですが、それ以上に重要なのが歯の健康です。特に、自覚症状が少ない「歯周病」は口周りの健康を脅かすだけではなく、放っておくと体全体に影響する重大な病気を引き起こすこともあることが、最近の研究でわかってきました。30代、40代では身近な話題の歯周病。しかし、甘くみていると恐ろしいことになるのです。30代ビジネスパーソンの歯と口から健康を考える当シリーズ、第1回では、この歯周病のメカニズムと全身への影響をとりあげます。

目次

  1. 30代ビジネスマンは「歯の見栄え」を重視しがち
  2. 歯周病の患者は日本でどのくらいの割合?
  3. 知っておきたい歯周病の発生するメカニズム。「プラーク」とはなにか
    1. 直接的な原因
    2. 間接的な原因
  4. 歯周病がもたらす恐ろしいこと
    1. 歯を失う
    2. 動脈硬化・心筋梗塞
    3. 動脈硬化・脳梗塞
    4. 低胎児出産
    5. 糖尿病を悪化させる
  5. 「健康投資」の視点で歯に対する意識を高く持とう

30代ビジネスマンは「歯の見栄え」を重視しがち

歯周病
(画像=buritora/stock.adobe.com)

働き盛りの30〜40代のビジネスパーソンは「歯の見栄え」を重視します。確かに歯の見栄えは重要です。歯並びが良く、歯も黄ばんでいなければ、会う相手から良い第一印象を持ってもらえます。

特にまだ独身のビジネスパーソンにとっては、30代は婚活などに積極的になる時期であることもあり、身だしなみに加えて歯の見栄えを気にする人は多いでしょう。しかし、見栄えを気にするだけではなく、歯の健康に気をつかうことも非常に重要です。

「歯周病」は、特に要注意です。歯周病になると口臭がきつくなったり、歯肉が腫れたりすることがありますが、虫歯と違って痛みを伴わないケースが多く、初期段階では自分が歯周病であることに気づきにくいからです。

そのため歯周病は、気がついたときには症状がかなり進行していることがあります。さらに歯周病の恐ろしいところは、歯周病が原因で体全体に影響を与える重大な病気の引き金にもなることです。

歯周病の患者は日本でどのくらいの割合?

では歯周病を患っている人は、どのくらいの割合でいるのでしょうか。

日本では「国民の8割が歯周病」と言われることがあります。こう言われる理由は、歯科疾患実態調査(2005年・2011年)における医師の所見で、「歯肉出血」や「歯石」、「歯周ポケット」のどれかが認められた人の割合が約8割であったからです。

もちろん、歯石が少しついているからといって歯周病であるとは限りませんが、歯周病の原因となる歯垢は、歯のでこぼこに付きやすいため、歯周病となる可能性は高まってしまうといってよいでしょう。

歯周病の進行度合いの目安となるのが、上記で指摘された歯周ポケットの深さですが、4ミリ以上の歯周ポケットがある人の割合は、25〜34歳で30%台前半、35〜44歳では40%台前半となっています。30代、40代では、歯周病が多くの人に関係する口腔内のトラブルであることがよくわかります。

知っておきたい歯周病の発生するメカニズム。「プラーク」とはなにか

気づくのが遅れれば歯を失ってしまう可能があり、全身疾患への影響も指摘される歯周病ですが、その原因はなんでしょうか。まずは歯周病発生のメカニズムを知り、対策を考えていきましょう。

直接的な原因

歯周病の直接的な原因とされているのが、生きた細菌の塊である「歯垢」(プラーク)です。歯垢は酸素が少ない歯と歯ぐきのすき間にできやすく、歯垢の細菌が毒素を出すことで炎症が起きます。

プラークに潜む細菌のほとんどは酸素の少ない場所を好み、活動をします。歯と歯ぐきのすき間にもぐりこんだプラークが毒素を出し、歯ぐきが炎症をおこすと、この歯と歯ぐきのすき間が深くなっていきます。これが歯周ポケットとなります。深い歯周ポケットはそれだけ酸素も少ないので、細菌の活動がより活発化します。歯ぐきはますます後退し、歯は支えを失い、ついには脱落してしまう、となるのです。

対策としては正しい歯みがきの徹底はもちろんのことですが、歯周ポケットの定期的な確認が必要です。これは自分で行うことができないので、定期的に健診を受けることが求められます。

間接的な原因

歯周病の原因は、歯や歯ぐきの周辺に付くプラークだけではありません。口腔内の環境や生活習慣なども歯周病の間接的な原因となり得ます。

口腔内の環境に関しては、歯石や歯並びの悪さや、噛み合わせの悪さなどが要因となります。でこぼことした歯は、もともと歯磨きも十分にはしにくいものです。ここに歯石が付いたり、歯並びのせいで、歯ブラシがあたりにくい箇所があれば、それだけプラークを除去することが難しくなります。また嚙み合わせが悪いと一部の歯に偏った負担がかかることから、歯周病を悪化させやすいとされています。

生活習慣に関しては、ストレスや運動不足、食生活、喫煙などが要因になりえます。プラークに潜む歯周病菌による毒素に対して、体は免疫力で対抗しますが、睡眠不足や不規則な生活などでストレスが多いと、免疫力が低下しやすくなります。

また、喫煙は歯周病の最大要因とされています。タバコに含まれるニコチンは、歯ぐきの抵抗力を大きく弱めさせ、また唾液の分泌も量も抑えてしまいます。プラークが付きやすくなり、細菌の繁殖もしやすい状況となるのです。

歯石や歯並びの課題は、個人の努力で解決するにも限界があるので、歯科医師への相談が必要でしょう。また、禁煙に限らず、ストレスの少ない、またはストレスを上手にコントロールできるような生活習慣が、歯周病への対策として重要となるといえるでしょう。

歯周病がもたらす恐ろしいこと

では続いて歯周病が歯や口、身体全体にもたらす症状や病気について説明していきます。プラークに潜む細菌が出す毒素は、歯のみならず全身へ悪影響を与えます。症状が進行するとどうなってしまうのかかについても触れていきます。

歯を失う

歯周病が進行すると、膿が出たり歯がグラグラしたりします。こうした症状は、歯肉に炎症ができたり、歯を支える骨が溶けたりすることで起き、症状が進行すると最終的には歯を抜く必要が出てきます。

歯を失うと、もう元に戻すことはできません。入れ歯やインプラントなどの治療を行う必要があり、人生の長期間に渡り影響を及ぼします。その経済的な損失を考えるだけでも、歯周病対策は必須といえます。

動脈硬化・心筋梗塞

これまでに触れた通り、歯周病は体全体に影響を与えることもある病気です。歯周病の原因菌は動脈硬化を誘導する物質を発生し、この物質によって血管が傷つき、コレステロールなどの沈殿物が沈着しやすくなります。こうして動脈硬化が進み、血液の通り道が狭くなったり閉塞したりして、狭心症、心筋梗塞や脳梗塞などを起こしやすくなります。

動脈硬化では食生活や運動不足、ストレスなどが原因としてクローズアップされがちですが、歯周病が原因となることもあるのです。

動脈硬化・脳梗塞

歯周病菌の活動により発症しやすい動脈硬化は、当然ながら、脳梗塞も引き起こす可能性があります。日本臨床歯周病学会の公式サイトによると、歯周病の人は歯周病ではない人より脳梗塞に2.8倍なりやすいとされています。その上で同学会では「血圧、コレステロール、中性脂肪が高めの方は、動脈疾患予防のためにも歯周病の予防や治療は、より重要となります」としています。

低胎児出産

妊娠している女性は、特に歯周病に注意が必要です。歯周病を患っていると「早期低体重児出産」のリスクが高まります。その危険率はアルコールや喫煙よりもはるかに高く、歯周病でない場合の7.5倍になるとされています。歯周病がかなり進行するとリスクも高まりますので、注意が必要です。

早期低体重児出産につながる可能性があるのは、歯周病の細菌が血液の中に入り、胎児が胎盤を通してその細菌に感染することが原因だと言われています。

糖尿病を悪化させる

歯周病は糖尿病の合併症として発症する病気でもありますが、そうして発症した歯周病の症状を放置して悪化させると、糖尿病の症状がさらにひどくなる可能性があります。

「健康投資」の視点で歯に対する意識を高く持とう

このほかにも、歯周病は「誤嚥性肺炎」につながるなど、さまざまな悪さをします。そんな歯周病によって口や歯、そして体全体の健康を脅かされないためには、歯周病にならないための予防と、歯周病を患った場合はすぐ治療を始めることが重要です。

歯周病を防ぐためには、歯磨きを正しい方法で毎日行い、歯に歯垢のない状態を維持することが非常に大切です。また、歯ぐきと歯の周辺にある歯石を取り除くこともポイントです。

また、歯周病を発症するプロセスでも解説したように、生活習慣も歯周病の原因になり得ます。全身の健康の視点からも、喫煙を避ける、積極的に運動する、睡眠を十分にとるなどストレスをコントロールする、食生活の見直しなども、これまでの生活習慣の見直しを、あらためて考えていきたいところです。

歯に異常が感じられなくても、定期的に歯科に検診に出向くことも推奨されます。手間も診察料もかかりますが、早期に歯周病を発見できるのであれば、「健康投資」としては決して高くない投資です。歯科だけでなく、体全体の健康リスク管理を考えるなら、歯や口腔環境の診察までしっかり行う人間ドックを検討することも、重篤な症状を避けるためのリスクコントロールにつながります。

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30代のビジネスパーソンの健康を歯から考える当シリーズ。次回第2回は、歯周病が全身疾患へつながる理由についてくわしく解説していきます。歯と口にとどまらない歯周病対策と、より長く、アクティブにビジネスにまい進するための健康管理のコツを学びます。

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