日々激務に追われるビジネスパーソンの中には、健康診断の結果に気をもんでいる方も多いでしょう。パソコンを駆使して高い生産性を維持するワークスタイルは、ともすると運動不足や不規則な食生活になりがち。1年に一度の健康診断の数値から、健康のリスク、とくに慢性疾患である糖尿病リスクをしっかり見極めましょう。

この記事では、糖尿病リスクの発見につながる健康診断の数値の見方、そして、リスクがある場合の検査すべき項目、リスクが高いときの対処方法などを、わかりやすく解説します。ハードワークとなりやすい30代・40代のビジネスパーソンはぜひ参考にしてください。

目次

  1. 健康診断で糖尿病リスクはわかるのか?
  2. 30代、40代のビジネスパーソンでも、発症するリスクがある糖尿病
  3. 糖尿病リスクが表れる健康診断の数値とは?
    1. BMI
    2. 血圧
    3. LDLコレステロール
    4. 血糖値
    5. HbA1c
  4. 糖尿病リスクが高いとわかったときの再検査項目は
    1. 基本的に検査する項目
    2. より精密に検査する項目
  5. 糖尿病の合併症リスクを知る
  6. 恐ろしい糖尿病の合併症の確認のために必要な精密検査とは
  7. 精密検査、もししない場合……。医療費のリスクから糖尿病を考える
  8. 精密な健康診断を受けるなら、オフシーズンが狙い目

健康診断で糖尿病リスクはわかるのか?

糖尿病リスク
(画像=masamasa3/stock.adobe.com)

糖尿病は一般的に、進行した状態にならないと自覚症状が出ないため、早期発見が困難な病気といわれています。しかし、健康診断の結果をきちんと読み解くことで、糖尿病リスクを発見できる可能性が高まります。

健康診断の結果には、「今病気にかかっているかどうか」だけでなく、将来の病気のリスクも現れます。さまざまな数値を確認し、前回の診断結果とも比較しながら、糖尿病リスクをチェックしましょう。

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30代、40代のビジネスパーソンでも、発症するリスクがある糖尿病

健康診断の結果を読み解く前に、日本ではどれくらいの人が糖尿病のリスクを抱えているのか見てみましょう。

厚生労働省では、国民の健康増進を図るため「国民健康・栄養調査」を毎年実施しています。栄養や食生活、運動や睡眠のほか糖尿病等に関する状況を調査しており、2019年の調査結果によると「糖尿病が強く疑われる者」の割合は、男性19.7%、女性10.8%でした。

さらに注目したいのは「糖尿病が強く疑われる者」の治療の割合です。対象者のうち糖尿病の治療の有無について、なしと回答した割合は平均で23.1%、そのうち40~49歳は53.8%と、他の年代に比べて突出して高い印象でした。

つまり40代では糖尿病リスクを抱えているにもかかわらず、2人に1人が治療などを放置している状況です。仕事の責任の重さや忙しさが高まる年代では、病気が疑われるものの精密検査に行く時間をとれない、気に留められないなど、検査や治療を後回しにしている状況が想像できます。

また、昨今では、新型コロナウイルスの影響で外出自体も難しくなりました。通勤や移動がなくなった分、ほとんどの時間を家の中で過ごすことになり、毎日ほんの数百歩しか歩かないという方も増えてきています。

筑波大学大学院と健康機器メーカーのタニタが2020年に行った調査では、新型コロナウイルス流行前(2020年1-2月)の1日の歩数は平均約1万1,500歩でしたが、テレワークに切り替えてから(2020年3月)は29%減少していました。また、中には歩数が70%減少し、1日2,700歩程度になったケースも。厚生労働省が推奨する歩数は1日8,000歩なので、大きく下回っていることがわかります。

▽厚生労働省が推奨する歩数の目標

*目標値:男性9,200歩、女性8,300歩
注)1日当たり平均歩数で1,000歩、歩く時間で10分、歩行距離で600-700m程度の増加に相当
注)基準値:男性8,202歩、女性7,282歩(平成9年度国民栄養調査)

引用:厚生労働省 身体活動・運動「日常生活における歩数の増加」より

運動量の変化は体重増にもつながると考えられます。国立がん研究センターが行った研究調査では、20歳から体重が5kg以上増加した群で糖尿病発症のリスクが約2.6倍上昇するという結果が得られました。

▽20歳からの体重の変化と糖尿病発症のリスク

 20歳からの体重の変化  男性  女性
 20歳から5kg以上減少  0.91  0.70
 20歳から5kg未満の変化  1.00  1.00
 20歳から5kg以上増加  2.61  2.56

引用:国立研究開発法人国立がん研究センター予防研究グループ「成人期における体重変化と糖尿病との関連について」

このことから運動量が減り体重が増加すると、必然的に糖尿病リスクも上昇すると考えることができるでしょう。30代・40代のうちから糖尿病リスクに目を向け、新しい生活様式に適した新しい生活習慣を身につけ、代表的な生活習慣病ともいえる糖尿病の予防に努めましょう。

糖尿病リスクが表れる健康診断の数値とは?

糖尿病を予防するためには、まずは自分自身の糖尿病リスクを正しく認識する必要があります。続いては、糖尿病リスクの発見に役立つ健康診断の数値を紹介します。

BMI

BMIとは、身長・体重から肥満度を判定する指標です。BMIの計算式は次の通りです。

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
※身長はcmではなくmで計算します。

日本肥満学会が定めるBMIと肥満度の関係は次の通りです。

▽BMIと肥満度の関係
・18.5未満:低体重(やせ)
・18.5以上25未満:普通体重
・25以上:肥満

BMI=22が標準体重で、最も健康的で病気になりにくい状態といわれています。BMIが25を超えると肥満となり、糖尿病、高血圧などの生活習慣病のリスクが2倍以上になります。

BMIは健康診断で得た数値から自分で試算する必要があります。健診結果の身長と体重の数値か計算して、自分の肥満度をチェックしてみましょう。昨年よりも変化があったなら、当年の生活習慣の変化を振り返ってみる必要があります。

血圧

血圧とは、血液が血管の壁を押す圧力のことです。血液中の糖の割合が増えると循環する血液量が増え、血圧が高くなります。健診結果に記載されているので確認しましょう。

このような理由から、糖尿病は高血圧を合併しやすいとわかっています。糖尿病と高血圧を合併すると、脳卒中や心筋梗塞の発症リスクが3~4倍高まるともいわれています。

高血圧と診断されるのは、収縮期血圧(最高血圧)が140mmHg以上、拡張期血圧(最低血圧)が90 mmHg以上です(両方を満たす場合も、どちらか一方を満たす場合も高血圧となります)。

LDLコレステロール

LDLコレステロールとは、血液に含まれる脂肪分のうち、悪玉コレステロールを指します。健診結果の血液関連の項目に「LDL-C」などの記載があるので確認します。

このLDLコレステロールが高いと、脂質異常症になります。脂質異常症は生活習慣病の1つで、糖尿病の人が合併しやすい病気です。糖尿病と脂質異常症を合併すると、心臓病になるリスクが高まります。

LDLコレステロールが140mg/dL以上だと「高LDLコレステロール血症」となります。LDLコレステロールは120mg/dL未満が目標といわれており、値を下げるには食生活の改善や運動不足の解消が効果的です。

血糖値

糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)が異常に高い状態が持続する病気です。そのため、血糖値は糖尿病リスクを知る重要な指標です。

ただし、血糖値は食事の前後や睡眠時間等の影響を受けやすい指標でもあります。そのため、血糖値が低いからといって「糖尿病リスクが低い」と安易に判断するのは危険です。

健診結果の「空腹時血糖」などと記されている項目を確認しましょう。この空腹時血糖値が126mg/dLを超えている場合や、随時血糖値が200mg/dLを超えている場合、糖尿病リスクが高い状態で、再検査が必要になります。

HbA1c

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は、過去1~2ヶ月程度の期間の平均血糖値の指標です。値が6.5%以上だと、糖尿病の疑いが濃厚といわれています。健康な人の値の目安、4.3~5.8%です。こちらは健診項目に「HbA1c」と記載されているので、すぐに見つけることができます。

糖尿病リスクが高いとわかったときの再検査項目は

健康診断の結果や自覚症状によって、糖尿病リスクが高いとわかったら、どんな検査をするのでしょうか?続いては、糖尿病リスクが高い場合の再検査項目を紹介します。

基本的に検査する項目

基本的な検査項目は次の通りです。

・随時血糖検査
・早朝空腹時血糖検査

随時血糖とは、食後から時間を決めずに採血し、血糖値を測る検査方法です。200mg/dL以上ある場合、「糖尿病型」と診断されます。

早朝空腹時血糖とは、検査当日に朝食を抜き、空腹状態で血糖値を測る検査方法です。126mg/dL以上ある場合、「糖尿病型」と診断されます。

より精密に検査する項目

より精密に検査する場合の検査項目は次の通りです。

・OGTT
・グルコアルブミン
・1.5AG

OGTTは糖負荷検査とも呼ばれ、検査当日の朝まで10時間以上絶食し、空腹状態で採血して血糖値を測ります。その後、ブドウ糖液を飲み、30分・1時間・2時間後に採血し血糖値を測ります。

2時間後の値が200mg/dL以上だと「糖尿病型」と診断されます。2時間後の値が140mg/dL未満で、早朝空腹時血糖値が110mg/dL未満の時は、「正常型」と診断されます。

グリルコアルブミンでは、過去1ヵ月程の期間の平均血糖値の指標です。基準値は11〜16%で、値が高ければ高いほど、血糖値の高い期間が長かったと推定されます。

1.5AG(イチゴエージー)は、食後の高血糖を反映する検査です。血糖値やHbA1cが正常でも、1.5AGが低ければ、将来の糖尿病リスクが高いとわかります。基準値は14μg/mL 以上で、高血糖状態が続いているほど値は低くなります。

糖尿病の合併症リスクを知る

糖尿病で最も恐ろしいのは、合併症です。

たとえば、糖尿病性腎症が進むと、人工透析が必要になります。一度人工透析が必要になると、後戻りはできません。糖尿病性腎症の5年生存率は約50%、10年生存率は約25%です。糖尿病性腎症には、糖尿病発症後10年ほどでなるといわれています。

糖尿病性網膜症は、緑内障に続く失明原因第2位です。視神経がボロボロになり、悪化すると網膜が出血したり剝がれたりします。

糖尿病は末梢血液循環障害が起こります。手足指先に酸素が行きわたらなくなり、壊疽に至ることもあります。神経障害も加わるため、痛みがわからず、気がつくと、いつの間にか手足の先がミイラのように黒ずんでシワシワになり、最悪の場合は切断しなければなりません。そうすると、身体障碍者となり、日常生活にも大きな支障をきたすことになります。

糖尿病は、合併症の症状から判明するケースもあります。そのため、血糖値だけでなく、合併症にかかわる検査項目にも注目しておく必要があります。

恐ろしい糖尿病の合併症の確認のために必要な精密検査とは

糖尿病リスクがある場合は、次のような検査を継続的に行いましょう。合併症を発見する手掛かりになることもあります。日本糖尿病学会の「糖尿病治療ガイド」によると、以下の検査項目が推奨されています。

・血糖コントロール指標:HbA1cほか
・網膜症検査:OCT(眼底三次元画像解析検査)ほか
・尿定性検査
・尿蛋白・アルブミン定量

これらの項目は、糖尿病と診断された場合に定期的な検査が推奨されていますが、実際には網膜症検査、尿定性検査、尿蛋白・アルブミン定量検査の検査率が非常に低いというレポートも出ています。

▽糖尿病診療における合併症検査の定期検査実施割合

・血糖コントロール指標:96.7%
・網膜症検査:46.5%
・尿定性検査:67.3%
・尿蛋白・アルブミン定量:19.4%
(国立国際医療研究センター東京大学大学院医学系研究科の「全国レセプトデータにおける糖尿病診療の質指標を測定(2019年)」より)

糖尿病は合併症こそ恐ろしい病気です。精密検査を受ける場合、検査項目についても把握しておき、きちんと検査を受けましょう。

このほか、腎障害が進行する前の血流不全で尿中に排出されるL-FABP(エルファブ)も重要な指標です。L-FABPは、糖尿病性腎症の進行具合を把握する手掛かりになります。また、数十年後の死亡リスクにも影響を与える指標であることがわかっています。

一般的な企業の健康診断では、精密な検査は行われません。そのため、健康診断の結果を見て糖尿病に気づいた時には、すでに「今すぐ受診して治療する」か「放置して悪化させる」かという2つの選択肢しかない可能性があります。

治療する道を選んでも、通院や食事制限などでキャリアに影響が及ぶことが少なからずあります。放置する道を選べば、さまざまな合併症を発症し、莫大な治療費がかかるとともに、最悪の場合は死に至ります。

しかし、糖尿病リスクに気づいた時点で精密な検査を行うことで、このようなギリギリの状況にいたることを未然に防げる可能性があります。

精密検査、もししない場合……。医療費のリスクから糖尿病を考える

糖尿病は慢性疾患であり、徐々に体を蝕んでいきます。自覚症状が表れたときには、治療も長期にわたり、生活スタイルも大きく変えねばならないといったことになりかねません。進行度合いによっては、治療費も大きく増加します。

一例として全国健康保険組合 大阪支部による資料から(糖尿病)症状の進行度合いと治療費の目安を、次の通りまとめました。

  1. 糖尿病予備軍
    ・食事+運動療法で年間医療費は約6.5万円
    ・空腹時血糖の目安110mg/dl

  2. 糖尿病発症(例:糖尿病の最初の兆候から4年後)
    ・受診と服薬(1種類)で年間約15.5万円
    ・空腹時血糖の目安130mg/dl

  3. 血圧や脂質に異常発生、眼底出血(例:糖尿病の兆候から8~16年後)
    ・糖尿病腎症を発症し人工透析を行っている場合、年間約500万円
    ・空腹時血糖の目安170mg/dl

  4. 深刻な合併症を発症(例:糖尿病の兆候から20年後)
    ・治療費は症状によって異なる
    ・失明リスク、手足の切断リスク、生命の危険など

つまり糖尿病予備軍の時点で精密検査や治療をはじめることができれば、医療費を大きく抑えられる可能性が高まります。この医療費の観点からも、健康診断でリスクが認められた場合は、適切な施設にて、精密検査を受けることが賢明と言えるでしょう。

精密な健康診断を受けるなら、オフシーズンが狙い目

ここまで解説した通り、早期発見には健康診断がポイントとなる一方で、糖尿病はさまざまな検査結果を総合的に加味してはじめて発見できる病気です。糖尿病の疑いがある人や、少しでも体調に不安を感じる場合は精密な検査を検討しましょう。

糖尿病リスクが高い場合の再検査項目でも解説した1.5AGや、合併症検査に有効な尿中アルブミン、L-FABPを測れる精密検査を受けることで、現状の糖尿病リスクを正しく見極め、予防に向けて行動を起こせるはずです。

なお、5月と9月は健康診断が多い繁忙期です。そのため、5月、9月を避けたオフシーズンが狙い目です。

定期的に健康診断を受け、生活習慣の改善に取り組めば、糖尿病リスクは低減できます。糖尿病になると、仕事にも大きな支障をきたしてしまいます。キャリアにおいて重要な時期に差し掛かる30代、40代のビジネスパーソンこそ、糖尿病リスクを健康診断の結果から読み解き、必要な健康投資を検討しましょう。

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