「忙しくて寝る暇がない」「ストレスで太ったかも……」多忙なビジネスパーソンの間ではよくある会話です。じつは睡眠不足が肥満を加速させる一因となっているかもしれません。睡眠時間とBMIの関連について興味深いデータも解説するので、自分自身の健康リスクと向き合ってみてください。

睡眠不足が肥満を加速させる仕組み

睡眠時間,健康
(画像=leungchopan/stock.adobe.com)

睡眠不足が肥満につながる仕組みは、意外と知られていません。ダイエットのため食生活を意識するビジネスパーソンは多いですが、「睡眠不足は盲点だった」という人が多いのではないでしょうか?

睡眠不足になると、食欲を抑制するホルモン(レプチン)の分泌が減り、食欲を増進させるホルモン(グレリン)の分泌が増えます。睡眠時間5時間と8時間では、たった3時間の差ですが、ホルモンは10%以上増減するという研究結果もあります。このような研究から、睡眠不足だとホルモンの影響で食欲が増し、太りやすくなるといわれています。

また、睡眠不足のときに限って、ケーキやポテトチップス、ラーメンや唐揚げが食べたくなった経験はありませんか?これも実はホルモンの働きによるものかもしれません。食欲を増進させるホルモン(グレリン)は、高カロリーな食べ物に対する食欲を高めるといわれているからです。

早稲田大学と花王株式会社の共同研究で、7時間寝た場合と3時間半しか寝なかった場合を比較すると、深部体温に変化がみられました。3時間半だと睡眠時に深部体温が十分に下がらず、日内リズム(体内時計)が乱れる傾向があったのです。

日内リズムの乱れは腸内細菌のバランスを乱し、肥満リスクを高める可能性があります。腸内細菌の中には、満腹感をつかさどるものがあり、満腹感によって自然と食欲が抑制されます。しかし、肥満の人はこの腸内細菌が少ないことがわかっています。

睡眠不足はダイエットの大敵であり、肥満を深刻化させてしまいます。もちろん、仕事の忙しさから睡眠不足に陥っている場合、ストレスも加わるでしょう。ストレスは胃を活発にさせるホルモン(コルチゾール)の分泌を促し、食欲を抑制するホルモン(レプチン)を減少させます。また、交感神経が優位になることで、脂肪が溜まりやすく太りやすい状態になります。

このように、睡眠不足とストレスがダブルパンチで肥満を加速させている可能性があります。

肥満によって生じる恐ろしい健康リスクとは?

肥満は多くの恐ろしい病気と関連があります。

一般社団法人日本生活習慣病予防協会によると、肥満症の人は高血圧の頻度が2.9倍になります。正常体重者に比べ、3倍ほども高血圧症にかかっているわけです。また、肥満、高血圧、高血糖、高中性脂肪血症のうち、3つ以上に該当する場合、どれにも該当しない場合に比べ、心筋梗塞・狭心症の発症率が36倍になります。

心筋梗塞や狭心症は、心臓突然死の5~6割を占める恐ろしい病気です。急性心筋梗塞で亡くなる人の多くは1時間以内に亡くなっているというデータもあり、突然死のリスクが高い病だとわかります。

肥満が大腸がんや前立腺がん、乳がん、子宮がんなどのがんのリスクを高めることも指摘されています。がんは言わずもがな、厚生労働省の調査でも日本人の死亡原因のトップです。

目標があり責任感の強いビジネスパーソンほど、つい睡眠時間を削って仕事にあてたくなるものです。しかし、睡眠不足で短期的な成果は得られても、将来の健康を害してしまっては意味がありません。健康を損なうと、自分の仕事や私生活に重大な影響が及ぶほか、会社の人間や家族に迷惑を掛けてしまうこともあります。

長く健康を維持して仕事も私生活も充実させたいと望むなら、適切な睡眠時間を確保しましょう。

睡眠時間とBMIの興味深い関連

睡眠時間とBMIの関連を指摘する研究もあります。興味深いのが、睡眠時間が短か過ぎても長過ぎても、BMIが増えるというデータです。睡眠不足の人だけでなく、睡眠過多の人も肥満になりやすいのです。

この傾向は、「睡眠時間とうつ病罹患率」「睡眠時間と糖尿病罹患率」「睡眠時間と寿命」など多くの指標で発見されています。睡眠時間が健康に及ぼす影響は、私たちの想像以上に大きいとわかります。

多忙を理由に睡眠時間を削るのは割に合わない投資

睡眠不足は肥満を加速させ、肥満は死に直結する病を引き起こす可能性があります。多忙だからと睡眠時間を削って仕事に時間を投資するのは、長期的に見て割に合わない投資と言わざるを得ません。

自分の健康にも目を向け、睡眠に時間を投資した方が、長期的にみて望むキャリアプランを歩める可能性が高まります。適切な睡眠時間を確保するとともに、肥満が気になる人は、精密検査ができる専門機関を受診することも検討してみてください。

健康診断を受ければ、将来悪化する危険性のある深刻な病のリスクに気づける可能性があります。リスクを正しく把握して、いまのうちから対策すれば、健康を維持して長く仕事で活躍できます。睡眠時間の確保とあわせて、適切な健康投資を始めましょう。