コロナ禍が長期化し、中小企業の破綻のほか、大企業であっても、
経営において明暗が分かれる事態となっています。
そんな中、マネー雑誌などではサラリーマンとしての収入に頼らない、
経済的自立を伴った上で早期リタイアする「FIRE」が頻繁に
取り上げられるようになりました。
「不労所得で暮らしていけたら…」
皆さんもそう思うことがあるのではないでしょうか。
そこで今回、サラリーマンながら11年で「FIRE」(経済的独立・早期退職)を実現した山田健二氏(41)にインタビューを実施しました。
山田氏が資産形成を意識したきっかけは「明日への不安」。
というのも当時の山田氏は投資経験なし・月収5万円の「崖っぷち会社員」だったといいます。
どん底のサラリーマンがどうやって経済的自由を手に入れるまでに至ったのか。
記事では山田氏がFIREに至るまでの投資遍歴を年表形式でご紹介。
コロナ禍で揺れる私たちの資産を防衛し、普通のサラリーマンがFIREに近づくためのヒントをお伝えします。
目次

【23歳~28歳】「何とか生き延びねば…」月収5万・会社員のどん底を経験
―山田さんにとって、新卒から20代後半までの時期はいかがだったでしょうか。
私は新卒で大手警備会社に就職したのですが、そこがいわゆる「ブラック企業」で…。書類をコピーするだけでも怒鳴られるような職場で、段々と心が削られていきました。そこで、27歳のとき、一念発起して転職することにしたのです。
選んだのは生命保険の営業職。給与は完全歩合制で、最初は「人の人生を守る仕事だ」と意気込んでいたのですが、成績は伸びず、28歳にして月収は5万円ほどにまで落ちてしまいました。
私の性格上、押し売りはしたくなかったですし、かといってお客さんからの紹介で回していけるようなコミュニケーション能力も持ち合わせていません。「何とかして生き延びないと」。その思いで、なんとか耐えていた感じです。この頃から安定収入が欲しいと強く考えるようになりましたね。
【29歳】父の勧めで分からないながらも投資用マンションを購入
―非常に壮絶な20代だったのですね…。そんな中、不動産投資を開始されました。
そうですね。私は後に転職する日本財託という不動産会社で物件を購入したのですが、元々私の父が物件を購入していて、父が不動産投資を勧めてくれたのです。当時は正直なところ、不動産投資がどういう仕組みで儲かっていくのか、ほとんど知らなかったですね。
ただ、父から毎月しっかりお金が入ってくるし、不動産は安定しているという話は何となく聞いていました。仕事は相変わらずうまくはいっていなかったですし、加えてこの年に結婚もして家族もできていました。そうしたことから、「安定してお金が入ってくる」という言葉が非常に魅力的だったのです。
そこで、なけなしの貯金や保険の返戻金などをかき集めて、不動産投資を始めることにしました。購入したのは東京都練馬区にある中古ワンルームマンションで、価格は1,067万円。うち600万円はローンを組むことにしました。
―思い切りましたね。不安はなかったのですか。
不安が全くなかった、といえば嘘になります。当時は妻も仕事をしていたので、話し合いをした結果、二人でやっていけば何とかなるだろう、との結論に至りました。今考えると少々楽観的だったかもしれませんが、不動産投資の先輩である父が上手くいっているのなら自分も、という感じでしたね。
【29歳~31歳】3年で1戸目を完済、不動産投資の面白さに気づく
―1戸目を購入後、3年ほどでローンを完済しています。かなり努力をしたのではないでしょうか。
楽ではない生活でしたね(笑)。私の給与は依然として安定していませんでしたから。
ただ、家賃はそのままローンの支払いに全て充てて、借金は毎月着実に減っていっていました。借金が減るということはそれだけ、自分の資産が増えているということです。また、不動産投資では「月利複利」の効果が働きます。借金の返済金額は利息支払い分と元本返済分に分けられるのですが、月利複利ではこの内訳が月ごとに計算されます。つまり、借金返済が進めば進むほど、利息支払い分の割合は減り、元本返済分が増えるのです。
この仕組みを理解してからは、もっと資金を投入して返済を進めたらどうなるのだろう、と興味が沸き、自分の収入の一部を借金返済に回すようになりました。もちろんその分、貯金もできないし、生活はカツカツになります。
それでもモチベーションを維持できたのは、不動産投資を始めたおかげだと思います。投資を始めると、やはりお金に対して敏感になりますからね。このとき初めて「お金」に対して真剣に向き合ったのではないかと思います。
そうして31歳の時に1戸目を完済し、夢にまで見た「安定収入」を得ることができたのです。確か管理費を引いた手取りで月々62,850円だったと思います。それだけでも、これまで苦労した分、安定してお金が入ってくるありがたみを強く感じたのを覚えていますね。以降は首都圏での中古ワンルームマンション投資で資産を築いていこうと思いました。
【32歳】2戸目、3戸目と所有物件を拡大、計5,000万円の借り入れでも不安はなし
―32歳のときには3戸まで所有物件を拡大していますね。
31歳のときに日本財託に転職し、固定給がもらえるようになったことが大きいですね。東京の高円寺に自宅を新たに購入することになり、それまで自宅として使っていた横浜市の弘明寺の2LDKのマンションを賃貸に出し、弘明寺のマンションを担保にして川崎市のワンルームマンションを購入しました。川崎市の物件は960万円で、そのうち850万円はローンです。
―借り入れ額がすさまじいことになっていそうですが…。
確か5,000万円ほどの借り入れだったと思います。ただ、弘明寺のマンションの残りの借金を高円寺の新たな自宅の住宅ローンに上乗せすることで、住宅ローンは会社員としての給与から支払う形にしました。また、3戸目の川崎市の物件と1戸目、2戸目の物件からの家賃収入があったので、それほど不安はありませんでしたね。
自宅や車などのローンは自分の稼ぎから捻出する必要がありますが、不動産投資でのローンは入居者が支払ってくれますから、借り入れの中身が全然違うんですよね。
【35歳】3戸目の物件を完済、家賃収入月21万円に。続けて4戸目も購入
―3戸目の川崎市の物件も3年半ほどで完済していますね。
日本財託に転職して前職より収入が上がったことと、あとは全くの異業種に飛び込んだことで、仕事が忙しくお金を使う暇がなかったことが大きいですね(笑)。加えて第一子が誕生したことも将来を真剣に考えるようになりました。以前は好きだった車や、時計などにお金を消費することがあったのですが、不労所得が拡大するにつれて「もっと不動産のお金を返したい」と思うようになりましたね。この頃の家賃収入は3戸で21万円ほどでしたから、もっといけるんじゃないかって。
―なるほど。順調に資産拡大をするコツはありますか。
私の場合は何年でローンを完済するかなど、自分の収支計画を立てたりしていました。加えて例えば銀行口座を生活費の口座とローンの返済口座とを分けて開設して、余ったお金をどんどんローンの返済に充てていましたね。なのでこの頃は最低限の貯金しかありませんでした(笑)。ただ、皆さんが不動産投資をチャレンジする際には無理をし過ぎないことをおすすめします。今の生活を切り詰めすぎて、幸せを逃すことはあってはなりません。
振り返ると、私がFIREできたのは「覚悟×努力×時間」があったからだと思います。覚悟は私の場合、40万円くらいの不労所得を50歳までにはつくるということで、努力はそのために支出を見直すことでした。時間に関しては、不動産投資は株などとは違いリスクが少ない分、ある程度時間が必要だということです。
―確かにその通りだと思います。4戸目はどのような物件を購入されたのですか。
東京都の中目黒のワンルームマンションを1,350万円で購入しました。うちローンは630万円でしたね。こちらも弘明寺の担保余力を使って購入しています。すでに完済した物件を担保に、次の物件を購入することができる、これは不動産投資の大きなアドバンテージだと思います。
【36歳~38歳】5戸目を購入、その後は貯金に専念
―36歳のとき、さらに5戸目を購入しています。
東京都品川区の武蔵小山のワンルームを購入しました。購入価格は1,270万円、うちローンは430万円ですね。こちらも弘明寺の物件を担保に購入しています。
―そこから3年ほどは新たな物件を購入していませんね。
そうです。理由としてはやはり子どもが生まれたことが大きいですね。それまでほとんど貯金がない生活でしたので、子どもが習い事とか、やりたいことができるように、また希望の学校にいけるように、教育資金をつくっておかないと、と考えたからです。そのために、一旦不動産投資で資産拡大するのをストップさせて、貯金に励んでいました。
目標を立てて実行するのはもちろん重要ですが、ライフスタイルの変化に合わせて収支を見直していくことも大切ですね。
【39歳】一気に3戸を購入。好機を逃さないことも重要
―39歳で一気に3戸、中古ワンルームマンションを購入しました。
はい、思い切って購入しました。内訳としては、東京都の両国の物件が1,850万円、三軒茶屋の物件が1,060万円、横浜市の鶴見の物件が1,020万円です。自己資金はいずれも10万円、全てフルローンでの購入でした。
―なぜこのタイミングだったのですか。
これは少々特殊な事情がありまして。たまたま金融機関が社員向けのキャンペーンで、通常よりも低い金利でローンが組める機会があったのです。これはチャンスだと思って、限界までローンを組んで購入しました。
私の場合に限らず、良い物件が見つかった、などチャンスがめぐってくることもあると思います。そうした好機を逃さないことも重要かと思います。
【40歳】4、5戸目のローンを完済。FIREを達成し独立を果たす
―昨年4、5戸目のローンを完済し、独立を果たしました。山田さんにとっては転機の年でしたね。
そうですね。仕事は楽しく、やりがいもありましたが、同時に家族の時間も大切にしたいと思いましたので、独立という道を選択しました。ローンに関しても、5戸で月に約30万円の家賃収入がある状態でしたので、入居者の力である程度返済できていましたので、それに自己資金を投入して4、5戸目を完済しました。
家賃収入で今後十分暮らせること、それほどがつがつと仕事はしないながらも、独立後の収入の予定も合わせるとFIREは達成できたのかなと思います。おかげで今は充実した日々を過ごせていますね。
思うのは、不労所得があるということは、私のように会社にしがみつくことなく、選択肢が増えるということが何よりのメリットだということ。私のようなダメな会社員からでも、FIREは実現できるのです。
今後は46歳で保険の満期が訪れるので、そのお金に加えて、自己資金も投入して、残り3戸のローンも完済する予定です。
10数年でFIREを目指すための2つの視点
―ずばり、山田さんのように10数年でFIREを目指すにはどうすればよいでしょうか。
要素としては2つあると思います。
まずは何歳までにFIREを達成するか、目標を決めてそれを実行するという覚悟です。
ここまでお話してきたように、着実な方法で、本気でFIREを目指すのであれば、多かれ少なかれ努力は必要です。ただ、私が担当したお客様にも通ずることですが、FIREをすると決めて、一歩を踏み出せば、自分の中のお金に対する向き合い方も変わって、割合楽しく資産形成を進めることができると思います。
人生100年時代と言われる今、何もしなければ70歳や80歳になっても生活のために仕事をしなければならないかもしれません。そのような未来は望まない、ということであれば、本業とは別の収入源をつくることで、豊かな老後を送ることができますし、努力次第ではもっと早くFIREを達成することができます。それだけ人生の選択肢が広がるということですし、その精神的な充実は計り知れません。
また、自分に万が一のことがあったとき、不労所得は家族がお金で困らないための保険にもなります。
もう一つの要素としては、信頼できる投資のパートナーを選ぶということです。
私は不労所得を築くには不動産投資がベストだと思っていますので、まずはどこの不動産会社と手を組むかということになります。信頼できるパートナーを見つけることで、どのように資産形成を進めるべきかというアドバイスももらえますし、モチベーション維持にもつながります。
―信頼できる不動産会社はどのように見分ければよいでしょうか。
実績があることと、物件の案内だけでなく、資産形成を進めるという観点でのヒアリングをきちんとしてくれる会社を選ぶことですね。
私の経験上、不動産投資を始めてみようと不動産会社の担当者と相談する際、多くの担当者が物件の紹介から入ります。それは間違っていると思っていて、例えばお医者さんが薬を処方する際でも、患者の状態を聞いたり、検査をしたりしますよね。
信頼できる担当者選びも同じで、まずはなぜ不動産投資をやるのか、いつまでにどれだけの資産を築きたいのか、といったヒアリングをしてくれる方を選ぶことです。不動産投資は長期戦なので、そうした姿勢で向き合ってくれるいわば「パートナー」から不動産を購入することで、FIREまでの道のりを確実なものとできると思います。