NISAを利用する人が増えている。金融庁が2021年2月26日に発表した調査結果によると、2020年12月末時点でのNISA(一般・つみたて)の口座数は1,523万を超えた。

通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、売却益や配当には約20%の税金がかかるが、NISA口座にて、毎年一定金額の範囲内で購入した場合は非課税になる。

非課税というわかりやすいメリットがあるNISAだが、その一方、制度が複雑でわかりにくい部分も多い。この記事では、非課税制度NISAで陥りがちな4つの落とし穴について解説する。

目次

  1. 非課税制度NISAの4つの落とし穴
    1. (1)通常口座で購入した資産はNISA口座に移せない
    2. (2)投資枠は翌年に持ち越せない
    3. (3)損失が出ても損益通算ができない
    4. (4)通常口座に移したときに取得価格が変わる
  2. NISAは資産運用においてとても有利な制度

非課税制度NISAの4つの落とし穴

非課税制度NISA,落とし穴
(画像=PIXTA)

NISAには一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAの3つが存在する。このうち、特に一般NISAには注意点が多い。注意が必要な4つの落とし穴について見ていこう。

(1)通常口座で購入した資産はNISA口座に移せない

1つ目の落とし穴が、通常口座で購入した資産はNISA口座に移せない点だ。

NISAは新規での投資が対象で、通常口座で保有している株式や投資信託をNISA口座に移すことはできない。購入時から大きく値上がりしている資産をNISA口座に移して、税金の支払いを回避するといったことはできないので注意しよう。

(2)投資枠は翌年に持ち越せない

2つ目の落とし穴が、投資枠は翌年に持ち越せない点だ。

一般NISAの場合は毎年120万円まで、つみたてNISAは年間40万円まで、ジュニアNISAは年間80万円までの非課税枠が設定されている。その年の非課税投資枠の未使用分があっても、翌年以降に繰り越すことはできない。「限度額いっぱいまで資産を購入したかったのに、購入手続きを忘れてしまった」とならないように注意が必要だ。

しかし、「枠が残っているからもったいない」という理由で早急な投資判断をすると、誤った判断をしてしまい、パフォーマンスの悪化につながりかねない。あくまで非課税枠は計画的に使うようにしよう。

(3)損失が出ても損益通算ができない

3つ目の落とし穴が、NISA口座内の保有資産を売却して損失が出たときに、他の通常口座で出た利益と損益通算ができない点だ。

通常の課税口座(特定口座)では、利益と損失を通算することができる。例えば、A株の売買で100万円の利益が発生したとしよう。

本来であれば100万円に対して約20%の税金がかかるが、同じ口座内のB株の売買で100万円の損失が出ていれば、合算して課税所得はゼロとみなされる。損益通算をしても、なお控除しきれない損失については、翌年以降3年間にわたり、確定申告により繰越控除することができる。

しかし、通常口座で利益が100万円、NISA口座で損失が100万円出た場合は、損益通算ができずに、利益100万円に対して約20%の税金が課せられてしまう。損失を翌年以降に繰り越すこともできない。

特に、NISA口座で値動きの大きい個別株や投資信託を売買する際は注意が必要だ。損益通算ができないことを理由に、損切りすべきタイミングで損切りをためらい、結果として損失が広がってしまう可能性もある。

(4)通常口座に移したときに取得価格が変わる

4つ目の落とし穴が、通常口座に移したときに取得価格が変わる点だ。

一般NISAにおいて5年間の非課税期間が終わるとき、口座内の資産をどうするかは、以下の3つの選択肢から選ぶことになる。

①売却する
②翌年の非課税投資枠に移す(ロールオーバー)
③通常口座(課税口座)に移す

非課税のうちに売却する①が最もわかりやすいパターンだろう。購入時より値上がりしていれば、約20%の税金を支払うことなく売却できる。ただし前述のように、損失が出た場合でも通常口座との損失通算はできない。

それまで保有していた資産を新しい非課税投資枠に移すのが②だ。この場合、保有中に値上がりして、資産額が投資枠上限の120万円を超えていても全額を移行できる。売却することなく資産を保有し続けることが可能だ。なお、つみたてNISAにはロールオーバーの制度はない。

購入した資産の損益に関わらず、③を選ぶことも可能だ。このとき、通常口座に移した時点の市場価格が新たな取得価格になることに注意が必要である。

例えば、NISA口座で株式を120万円で購入し、5年の非課税期間終了時に150万円に値上がりしたとする。NISA口座から通常口座へ移す場合、取得価格は150万円に変更される。これに関しては感覚的にも理解しやすいだろう。

注意が必要なのは、非課税期間終了時に保有資産が値下がりしていた場合だ。例えば、NISA口座で株式を120万円で購入し、5年の非課税期間終了時に100万円に値下がりしてしまったとする。

この時点でNISA口座から通常口座へ移す場合、取得価格は100万円に変更される。その後、110万円に値上がりした場合は、値上がりした10万円に課税されてしまう。そもそもの投資元本は120万円のため、実際は10万円の損失が出ているのに、税金を支払わなければならない。

NISAは資産運用においてとても有利な制度

ここまで、非課税制度NISAの4つの落とし穴について解説してきた。

特に最後に説明した、実際は損失が出ているのに、取得価格の関係で税金を支払わなければならない点には注意が必要だ。「上昇期待がある資産は原則としてロールオーバーする。そうでない資産は通常口座に移してすぐに損切りし、損益通算に活用する」などと割り切っても良いだろう。

利益に対する約20%の税金を支払わなくていいNISAは、資産運用においてとても有利な制度だ。しかし、非課税が魅力のNISAにもいくつかの落とし穴がある。制度をよく理解して、資産運用に活かしていこう。