「借金」と聞くと、ネガティブなイメージを持つ人も多いのではないだろうか。しかし多くの富裕層は、手元に資金があっても、あえて借金をして(借り入れをして)資産を買うことが多い。今回は、その理由について考察する。

目次

  1. 富裕層が購入する資産や借り入れ方法
  2. 富裕層がわざわざ借り入れをして資産を買う理由
    1. (1)歴史的な低金利
    2. (2)良い条件で借りやすい
    3. (3)イールドギャップが取りやすい
    4. (4)現金の価値を知っている
    5. (5)期限の利益
    6. (6)意外と現金は持っていない
  3. 「富が富を生む」仕組みを構築している

富裕層が購入する資産や借り入れ方法

富裕層,借金
(画像=PIXTA)

富裕層は、どのような方法で借り入れし、その資金で何を買っているのだろうか。典型的なものは不動産担保ローン(不動産投資ローン)を活用した収益不動産の購入だろう。

都心に位置する1億円の物件があったとする。1億円の現金が手元にあれば、現金購入も可能だが、多くの富裕層はあえて借り入れをして購入する。例えば、頭金を3割前後入れて、残りの7割前後を融資で賄うといった具合だ。昨今はややハードルが高くなったものの、1億円全額を借り入れて購入するフルローンという選択肢もある。

また、すでに多額の有価証券(株式、債券、投資信託など)を保有している場合は、それらを担保に資金が借りられる証券担保ローンも活用される。細かいルールは各社によって異なるが、資金用途は原則自由であることも多い。

借入金利や借入期間にもよるが、証券担保ローンで得た資金で、さらに有価証券に投資をする富裕層もいる。1億円分の国内上場株式Aを担保に5,000万円借り入れし、その5,000万円で国内上場株式Bに投資するといった具合だ。なお、担保対象有価証券や担保掛目は各社によって異なるので、数字はあくまで仮定である。

その他にも、自宅や別荘、高級車、クルーザーなどをローンで買うケースが考えられる。

富裕層がわざわざ借り入れをして資産を買う理由

なぜ富裕層は、手元に資金があっても借り入れで資産を買うことが多いのだろうか。借り入れに対する考え方や状況は、人によってさまざまなので一概には言えないが、以下のような理由が浮かび上がってくる。

(1)歴史的な低金利

現在は歴史的な低金利だ。日本国債の10年債利回りはほぼ0%と言って良い状況である。10年債利回りが各人の借入金利に直結するわけではないが、その恩恵は受けやすく「金利が低いのであれば、現金ではなくローンを活用しよう」となりやすい。これは、その他の理由にも関係する重要な要素だ。

(2)良い条件で借りやすい

富裕層は多くの資産を持っているため、金融機関は「貸付後に回収できなくなるリスクがマス層に比べて低い」と考える。従って、マス層に比べて相対的に良い条件(借入金額、借入金利、借入期間など)で借りやすいと考えられる。

(3)イールドギャップが取りやすい

イールドギャップとは、投資利回りと金利の差のことだ。不動産担保ローンを活用した収益不動産の購入においては、「借入金利と、借り入れして購入する収益不動産の実質利回りの差」を指すことが多い。

例えば、前述の「都心に位置する1億円の物件」の実質利回りが4%だったとする。もし、この物件を借入金利1%のフルローンで購入すると、単純計算で4%−1%=3%のイールドギャップが取れる。低金利環境と良い条件で借りやすいことを活かした資産運用方法だ。

(4)現金の価値を知っている

「キャッシュ イズ キング(現金は王様)」という言葉があるように、経済活動において、現金を手元に持つことには一定の価値がある。業績は黒字なのに、手元に現金がないことで倒産してしまう「黒字倒産」という現象もあるくらいだ。

また、手元に現金があることで周りからの信用力が増したり、想定外の急な出費にも対応できたり、マーケットが急落したときに果敢に下値を拾いに行ったりすることができる。

手元に現金を確保しておくということは、経済活動の選択肢を多く確保できるということだ。

(5)期限の利益

借り入れをすると、原則として「期限の利益」が発生する。期限の利益とは「一定の期限が到来するまで債務(借り入れ)を返済しなくても良い」という債務者の利益のことを指す。債務を返済しなくても良いという意味ではなく、「期限までの間であれば、いつ返済しても良い」という意味だ。

従って、借り入れ後にすぐ全額を返済する、少しずつ繰り上げ返済する、繰り上げ返済はせずに当初の取り決めどおりに返済する、といった選択肢ができる。

上記の「キャシュ イズ キング」と相まって「まずはできる限り借りて、できる限り多くの選択肢を持っておこう」と考える富裕層も多い。

(6)意外と現金は持っていない

これまでの説明とは趣が異なるが、意外と現金は持っていない富裕層も存在する。資産を多く持っているので富裕層と呼ばれるわけだが、資産の大半を現金で持っているとは限らない。

むしろ、株式や不動産といった現金以外が資産の大半を占めるという富裕層も多い。それらの資産を売却すれば現金を確保できるが、自社株はガバナンス(企業統治)の関係で売却できなかったり、純投資資産も税金や売買タイミングの関係で売却しにくかったりする。そのため、消去法でローンを活用するというわけだ。

「富が富を生む」仕組みを構築している

ここまで、なぜ富裕層は手元に資金があっても、あえて借り入れで資産を買うことが多いのかを考察してきた。

消去法で借り入れを選択するパターンを除き、富裕層は借り入れをすることで選択肢を増やす。それとともに、低金利環境と属性の良さを活かした借り入れ条件で「富が富を生む」仕組みを構築していると言えるだろう。