ここに100万円の高級腕時計と5万円の腕時計がある。どちらか一方を購入するとしたら、あなたはどちらを選ぶだろうか。どちらを購入するほうが高いリターンを得られるだろうか。

この記事では、特に金額が大きいときの買い物に活かしたい価値検証の考え方を考察していく。

目次

  1. 「100万円の高級腕時計」と「5万円の腕時計」どちらを買うべきか
  2. 重要な要素は「リセールバリュー」
  3. 3年後に売却すると?
  4. ビットとアスクのスプレッド
  5. 金額が大きい買い物の際はしっかりと価値検証を

「100万円の高級腕時計」と「5万円の腕時計」どちらを買うべきか

高級腕時計
(画像=PIXTA)

まず「100万円の高級腕時計」を購入したときに得られるメリットを考えてみよう。

100万円もする高級時計を身につけることで、自信がついたり、自尊心が満たされたり、自分の気持ちにポジティブな影響が発生するだろう。「良い時計をしていますね」と周囲からの目も変わるかもしれない。

職業によっては、ある程度良い時計を身につけないと格好がつかないという場合もあるかもしれない。このようなステータスに関わるメリットはもちろん、高級時計ならではの機能性も堪能できる。

しかし、「上記のメリットは理解できるが、これらのメリットを得るために100万円も投じるべきか」と感じる人もいるのではないだろうか。

重要な要素は「リセールバリュー」

「100万円も投じるべきか」と感じる人は、ある視点が抜けているのかもしれない。それは「リセールバリュー」だ。

資産運用、特に有価証券の世界では、発行体が新たに発行した証券を直接または仲介者を通じて投資家が取得する市場を「プライマリーマーケット(一次市場)」、すでに発行された証券などを投資家間で売買する市場を「セカンダリーマーケット(二次市場)」と呼ぶ。

この考え方は、腕時計や車などの実物資産の取引においても応用できる。腕時計や車などの実物資産において、セカンダリーマーケットで売却できる価格をリセールバリューと呼ぶ。

近年はインターネットオークションやフリーマーケットアプリなどが広く浸透しており、あらゆるものがセカンダリーマーケットで売買されるようになっている。特に腕時計のように比較的単価が高い商材は、そのようなC2Cマーケット(個人間取引)でなくとも、ブランド品再販会社に売却できる。なお、その売却先もセカンダリーマーケットの一つと定義する。

冒頭の二択では、プライマリーマーケットでの購入か、セカンダリーマーケットでの購入かの指定はなかったが、いずれにせよ、売却するときはセカンダリーマーケットで売却することになる。

3年後に売却すると?

例えば3年使用した後に売却することにしよう。このとき、リセールバリューが以下のようになっていたとする。

・100万円で買った高級腕時計は95万円で売れた
・5万円で買った腕時計は1万円で売れた

一般的に、希少性が高いものは、リセールバリューが大きく下がらないと考えられる。100万円で購入した高級腕時計が3年後に95万円で売却できたとすると、実質的に5万円で「100万円の高級腕時計」を3年間使用できたということだ。

一方で5万円の腕時計は、決して安物ではないものの希少性は低く、売却額は購入時の5分の1である1万円だ。実質的に4万円で「5万円の腕時計」を3年間使用できたということになる。

・実質的に5万円で「100万円の高級腕時計」を3年間使用できる
・実質的に4万円で「5万円の腕時計」を3年間使用できる

こう考えれば、「100万円の高級腕時計」と「5万円の腕時計」の価値の差は1万円だ。この二択なら、高級腕時計を選ぶ人が増えるのではないだろうか。

もちろん、この話は例として高級腕時計が「希少性が高く、リセールバリューが大きく下がらない」ことが前提となっているが、あらゆる買い物において、リセールバリューを意識することは重要である。

ビットとアスクのスプレッド

資産運用の世界には「ビット」と「アスク」という言葉がある。ビットとは買値(顧客が売却できる価格)のことであり、業者が価格を示して商品を買いつける申し出をすることだ。アスクとは売値(顧客が購入できる価格)のことであり、業者が価格を示して商品を売りつける申し出をすることだ。

平たく言えば、リセールバリューとビットはほぼ同義と言えるだろう。そしてビットとアスクのスプレッド(差)が小さいほど、売買にかかる取引費用が小さくなり、取引費用が小さいほど流動性が高いと言われている。

この考え方は、あらゆるモノの売買の際にも応用できる。上手に買い物をしたり、資産運用したりするコツとしては、以下の2点が挙げられる。

(1)リセールバリュー(ビット)に注意する(あまり下落しない、むしろ上昇するものを買う)
(2)ビットとアスクのスプレッドに注意する(スプレッドが大きいものはその理由を考える)

特に(2)は、プライマリーマーケットで購入するときに発生しやすい。

例えば、有名ではないブランドの腕時計の新品(=プライマリーマーケット)を買って、一度も使わずにすぐセカンダリーマーケットで売却しても、購入価格を大きく下回ってしまう可能性が高いだろう。これはビットとアスクのスプレッドが大きいということだ。

現実的にはすぐに売却することは少ないだろうが、「なぜスプレッドが大きいのだろうか。スプレッドが大きいということは現時点のリセールバリューが低いということだし、それを許容できるリターンを得られるだろうか」と考えることが重要だ。

金額が大きい買い物の際はしっかりと価値検証を

この記事では「100万円の高級腕時計と5万円の腕時計どちらを買うべきか」を例に、価値検証の考え方を考察してきた。

すべての消費をこのように計算するのは疲れてしまうかもしれない。しかし、特に金額が大きい買い物(資産運用を含む)をするときは、このような思考を巡らせてから購買判断を下すと良いだろう。