分散投資は、投資対象や購入方法を多様化させることで、資産運用に伴う価格変動リスクを低減させて、好リターンを目指す有効な方法と言われている。「資産運用において分散投資が重要だ」ということは言うまでもないだろう。

では、どのような資産をどれくらいの割合で保有すれば良いだろうか。収入、年齢、リスク許容度、金融知識などによって、適切な割合は各人で異なるため、明確な答えはない。しかし、有名な機関投資家のアセットアロケーションは1つの参考になるだろう。

それが、アイビーリーグの名門「ハーバード大学」の基金であればなおさらだ。今回は、ハーバード大学基金のアセットアロケーションを紹介し、個人投資家はどのような点を参考にできるのか解説していく。

目次

  1. 投資の王道・分散投資の種類
    1. 1.資産の分散
    2. 2.地域の分散
    3. 3.為替の分散
    4. 4.時間の分散
  2. ハーバード大学基金はどのようなアセットアロケーションを組んでいるのか
  3. ハーバード大学基金から個人投資家が学べること
  4. 全体の7割弱がオルタナティブ投資

投資の王道・分散投資の種類

分散投資
(画像=PIXTA)

その前に、投資の王道である「分散投資」にはどのような種類があるのかを確認していこう。分散投資には大きく分けて、以下の4つがある。

1.資産の分散

株式、債券、不動産といった異なるアセットクラス(同じようなリターンやリスク特性を持つ資産のこと)に分散する方法だ。分散投資の基本中の基本と言えるだろう。

2.地域の分散

資産の対象地域を分散する方法だ。たとえ同じ株式であっても、日本株式、米国株式、欧州株式、新興国株式など対象地域を分ければ、一定の地域分散が成されていると言える。ただし、同一のアセットクラスは地域が分散されていても、比較的同じような動きをする可能性が高いことには注意が必要だ。

3.為替の分散

日本円や米ドル、ユーロ、ポンドなど通貨を分散する方法だ。外貨預金のように通貨のみを保有するケースもあれば、米ドル建て債券のように通貨が指定されている金融商品(時には実物資産)を保有するケースもある。

4.時間の分散

積み立てなど購入時期を分けることで、価格変動のリスクを分散させる方法だ。上記3つの分散と異なり、「何を買うか」という視点ではなく「どのように買うか」にフォーカスしている。従って時間分散は上記3つの分散と組み合わせることも可能だ。

ハーバード大学基金はどのようなアセットアロケーションを組んでいるのか

分散投資は、資産運用初心者から巨額の資金を運用している機関投資家まで、さまざまな投資家に活用されている。409億ドル(2019年時点)を運用しているハーバード大学基金もその1つだ。

名門大学が基金を設立し、機関投資家として運用していることはあまり知られていない。彼らの運用は「エンダウメント運用」と呼ばれ、機関投資家の世界では非常に高いパフォーマンスを出し続けていることで有名だ。

エンダウメントのもともとの語源は「寄付金」であり、エンダウメント運用とは、主に卒業生からの寄付によって集まった資金の運用を意味している。現代においてエンダウメントと言えば、アイビーリーグの名門であるハーバード大学とイェール大学が双璧をなす。

ハーバード大学基金アニュアルレポート2019によると、ハーバード大学基金のアセットアロケーションは以下のとおりだ。

Public Equity(上場株式) 26%
Private Equity(非上場株式) 20%
Hedge Funds(ヘッジファンド) 33%
Real Estate(不動産) 8%
Natural Resources(天然資源) 4%
Bonds/TIPS(インフレ連動債) 6%
Other Real Assets(その他現物資産) 2%
Cash & Other(現金および現金同等物) 2%

最も資産割合が大きいのがヘッジファンド、次に上場株式、その次に非上場株式となっている。なお、この年度のリターンは6.5%だったようだ。

ハーバード大学基金から個人投資家が学べること

このハーバード大学基金から、個人投資家が学べることは何だろうか。今回は2つの点について言及したい。

1つは、オルタナティブ投資(上場株式や債券といった伝統的資産と呼ばれるもの以外への投資)の重要性だ。ハーバード大学基金で言うと、ヘッジファンド、非上場株式、不動産、天然資源、その他現物資産などがオルタナティブ投資にあたる。その割合は全体の7割弱にも及ぶ。世界最高峰の頭脳が集まるハーバード大学基金がここまで割合を高めていることを鑑みると、オルタナティブ投資をいかに重要視しているかがわかる。

しかし、一般的にヘッジファンドや非上場株式といったオルタナティブ資産は、個人投資家にとってアクセスしにくいアセットクラスだ。流動性が低い、回収期間が長い、最低ロット(投資に必要な最低購入金額)が大きくなりやすいなどの特徴があるため、個人投資家が同じようなアセットアロケーションを構築するのは難しいかもしれない。

しかし、「なぜハーバード大学基金はそのような資産を大量に抱えることができるのだろうか」という視点に立つと、2点目の個人投資家が学べることが見えてくる。

寄付から成り立っているエンダウメントは、基本的には債権者が存在せず、資金を返還したり、決まった期日でファンドが解散したり、運用について口出しされたりすることがない。資金返還・解散期日・運用制限がないことで、腰を据えた運用が可能となる。だからこそ流動性が低かったり、回収期間が長かったりする資産をたくさん組みこめるわけだ。

実は「資金返還・解散期日・運用制限がないこと」は個人投資家も同様だ。自己資金で運用している以上、誰かに資金を返還したり、運用を解散(停止)しないといけなかったり、運用に口出しされたりすることはない。ハーバード大学基金と同様、腰を据えて、長期視点かつオリジナルの運用ができるというわけだ。

全体の7割弱がオルタナティブ投資

ここまで、ハーバード大学基金のアセットアロケーションを紹介し、個人投資家はどのような点を参考にできるのか解説してきた。実に全体の7割弱がオルタナティブ投資であり、伝統的な資産配分に慣れている人からすると、やや驚きが大きいかもしれない。

ハーバード大学基金と全く同じアセットアロケーションを組むのは難しいかもしれないが、資金返還・解散期日・運用制限がないため、自由な運用ができることは個人投資家にも共通する特徴だ。ハーバード大学基金の分散投資も参考にしながら、資産運用を進めていくのも良いだろう。