コロナ禍の影響から、世界各国で大規模な金融緩和政策が実施される中、「金融引き締め」や「テーパリング」への注目が高まっている。

金融引き締めによって金融市場や資産価値にどんな影響があるのか、コロナ禍の金融政策動向について深掘りする。

目次

  1. 金融引き締めとは?
  2. 注目が高まりつつあるFRBの「テーパリング」とは
  3. テーパリングが注目されるのはなぜか
  4. 巨額のコロナ財政出動で高インフレの米国
  5. 日本の金融引き締めは2022年以降か

金融引き締めとは?

テーパリング
(画像=PIXTA)

「金融引き締め」とは、中央銀行(国の金融システムの中核)が物価の急騰や景気の過熱を抑制するために実施する金融政策だ。伝統的には景気の過熱局面で政策金利や預金準備率を引き上げたり、中央銀行が保有している国債などの資産を売却・圧縮したりすることで、市場の通貨供給量を減らし、経済活動を引き締める(抑える)。

これに対して「量的緩和」は、中央銀行が保有している国債を買い入れて市場の通貨供給量を増やすことで、金利を下げずに景気浮揚を狙う手法だ。2008年のリーマンショックが引き金となった世界金融危機の後には、先進国を中心に量的緩和が広がり長期化したため、近年は量的緩和の縮小も金融引き締めと捉える場合が多い。

注目が高まりつつあるFRBの「テーパリング」とは

中央銀行が実施してきた量的緩和などの金融政策を、段階的に引き締めていく手法を「テーパリング(Tapering/徐々に減らしていく)」という。量的緩和政策下における景気の回復局面ではインフレが過剰となるため、資産の買い入れ額を徐々に縮小しながら正常化を目指す必要がある。

しかし、テーパリングのタイミングを見誤ると市場が混乱し、2013年5月に米国で起きた、「テーパータントラム(Taper Tantrum/市場のかんしゃく)という現象が起こるリスクがある。

米連邦準備制度理事会(FRB)は2012年9月、世界金融危機の復興策の一環として、毎月総額850億ドル(約9兆3,944億円)相当の不動産担保証券(MBS)と長期国債を買い入れる、大規模な量的緩和策第3弾(QE3)を開始した。その後、雇用環境の改善など米経済の回復を受けて2013年12月に縮小を決定し、2014年10月に政策を終了した。

ところが、FRBが市場の予想より早いペースで資産購入の縮小を示唆したことから、大規模な金融緩和に支えられていた金融市場に大きな動揺が走った。長期金利が急騰し、新興国市場からの資金流出で通貨安が生じるなど、まさに市場がかんしゃくを起こしたような混乱に陥ったのだ。

この現象は当時のFRB議長の名前(ベン・バーナンキ)に因んで、「バーナンキ・ショック(Bernanke shock)」と呼ばれることもある。

テーパリングが注目されるのはなぜか

市場関係者や投資家がテーパリングに注目している最大の理由は、資産価格が大きく変動する可能性があるためだ。これには主に、2つの要因が考えられる。

1つ目の要因は、経済活動の抑制だ。テーパリングを実施すると金利が上昇するため、金融機関は以前より高い金利で資金を調達することになり、企業や個人に融資する際に金利を引き上げなければならない。そうなると融資を受ける側は消極的になり、経済活動が抑制される。その結果、企業価値を反映する株価が下がるというわけだ。

2つ目の要因は、株式市場からの資金流出である。通常、低金利環境では債券の利回りが低くなるため、投資家の関心が株式市場に向き、株価を押し上げる。一方、金利が上がると債券の魅力が増し、投資家の関心が株式から債券へ流出する傾向がある。特に値下がりリスクのある株式などは売却され、株価が下落する。

巨額のコロナ財政出動で高インフレの米国

大規模な量的緩和政策や経済支援策、ワクチン接種の進行により、足元では米経済の回復に楽観的な見方が広がっている。しかし一方では、巨額のコロナ財政出動によるインフレ加速への警戒が高まり、2021年5月には米金利の影響を受けやすいIT株が軒並み下落した。同月の消費者物価は過去1年間で5%に達し、約13年間で最大のインフレ急上昇を記録した。

パウエルFRB議長はこのような物価の急騰を「一時的な現象」と主張しており、テーパータントラムの再発を防止する意味でも、当面は金融緩和を維持する姿勢を強調している。しかし、高インフレが長期化し対応が遅れた場合、「30年前の日本のバブル崩壊よりも深刻な状況になる」と懸念する声もある。

米国の金利動向は、世界経済や資産価格に大きな影響を及ぼすバロメーターでもあることから、FRBのテーパリング開始時期に世界中が注目している。

日本の金融引き締めは2022年以降か

米国に限らず、世界中の国々がワクチン普及でコロナ禍の最悪期を脱しつつある。今後は日本を含む他国でも金融引き締めの議論が少しずつ進みそうだ。

カナダ中央銀行は現在過去最低水準(0.25%)にある政策金利を、2021年後半に引き上げる目標を掲げ、すでに毎週の国債の買い入れ額を40億カナダドル(約3,568億9,964万円)から30億カナダドル(約2,676億7,473万円)へ縮小している。一方、日本の金融引き締めは、2022年以降になるとの見方が強い。

米国経済は世界の経済に影響を与える。日本も決して他人事ではない。万が一の市場の変化にも冷静に対処ができるよう、各国の市場動向にも目を向けよう。