「1年間で40兆円弱を稼ぎ出す投資団体」と聞いて、どのような凄腕ファンドを思い浮かべるだろうか。そのファンドとは、日本の公的年金積立金を運用・管理するGPIF(ジーピーアイエフ/年金積立金管理運用独立行政法人)だ。

世界最大規模の運用資産額を誇るGPIFの投資手法やポートフォリオを知ることで、個人投資家も様々なヒントを得られるかもしれない。

目次

  1. 1年間で40兆円弱の利益をあげたGPIFとは?
  2. なぜ1年間で40兆円弱の利益をあげることができたのか
  3. 個人投資家がGPIFから学べる4つのポイント
    1. 1.分散投資
    2. 2.投資を継続する(途中で止めない)
    3. 3.海外資産を一定割合組みこむ
    4. 4.株式資産を一定割合組みこむ
  4. 投資にリスクはつきもの

1年間で40兆円弱の利益をあげたGPIFとは?

投資手法,ポートフォリオ
(画像=PIXTA)

厚生労働省所管の独立機関である「GPIF」とは、Government(政府)・Pension(年金)・Investment(投資)・Fund(ファンド)の頭文字をとったものだ。信託銀行や投資顧問会社といった運用受託機関を介して、国民年金保険料から徴収された公的年金積立金を国内外の株式・債券市場で運用する。その収益が、年金給付の原資となる仕組みである。

運用資産額は2005年以降100兆円を超えており、「世界一のクジラ(巨大な資金力を有する機関投資家)」の異名をもつ。100兆円というと、日本の一般会計歳出(社会保障・国債費・地方交付税交付金等)とほぼ同じ規模だ。当然ながら、資金の動きが世界の株式・債券市場に与える影響は極めて大きい。

なぜ1年間で40兆円弱の利益をあげることができたのか

GPIFの運用資産額は過去20年間で約5倍増加し、2020年度には過去最大の186兆1,624億円、運用実績は37兆7,986億円の黒字(収益率25.15%)を記録した。コロナ禍で8兆2,831億円の赤字(-5.20%)となった前年度と比べると、にわかには信じがたい快挙である。

なぜ、わずか1年でここまで形勢が一変したのか。決め手の一つとなったのは、基本ポートフォリオ(資産構成割合)の大幅な変更だ。GPIFは長期運用戦略として、各資産の期待収益やリスクを考慮しながら、積立金のベースとなる基本ポートフォリオを定めて運用している。

リスクの最小化を狙った第1期中期目標期間(2006~2009年度)は国内債券が全体の67%を占め、外国債券と株式は10%未満だった。しかし、2014年10月以降は運用改善狙いでリスク運用の比率が高まり、第4期中期目標期間(2020年4月~5年間)は以下のように各25%前後に変更された。

  構成割合 収益率 収益額
国内債券 25.92% -0.68% -2398億円
外国債券 24.61% 7.06% 2兆6,738億円
国内株式 24.58% 41.55% 14兆6,989億円
外国株式 24.89% 59.42% 20兆6,658億円

収益率からわかるように、外国株式と国内株式からの収益が圧倒的に高く、不調だった国内債券を強力に補う結果となった。コロナ禍の2020年度は主要国で大規模な金融緩和政策が継続され、国内外の株価が高騰。これが過去最大の運用実績につながった。

個人投資家がGPIFから学べる4つのポイント

このように巨額の資金を運用しているGPIFだが、実はその投資手法から個人投資家が学べることもある。以下、GPIFが重視している4つのポイントをまとめてみた。

1.分散投資

「卵を一つのかごに盛るな(Don't put all eggs in one basket.)」という相場の格言があるが、分散投資は投資対象を多様化させることで、価格変動リスクを抑えると同時に好リターンを狙う常套手法だ。

「〇〇銘柄が急騰している」といって安易に資金を集中させると、価格が下落した場合に大きな損失を被り、それが資産全体に影響することもある。市場環境の変化を考慮し、バランスよく臨機応変にポートフォリオを見直すことが重要だ。

2.投資を継続する(途中で止めない)

「底値で買い、天井値で売る」というのが投資の理想だが、現実の世界ではそううまくはいかないものだ。

そこで重要となるのは、安定した収益を得るために、短期的な市場の変動に影響されず、長期的・継続的な運用を行うことである。運用期間が長くなるほど収益のプラスマイナスは相殺されやすく、年率収益平均の変動を最小限に抑える効果が期待できる。

3.海外資産を一定割合組みこむ

国内だけではなく国外の資産にも投資することで、より広範囲な分散投資が可能になる。市場変動による大きな損害を回避すると同時に、収益獲得のチャンスを広げることもできる。

海外資産は為替や金利の変動の影響を受けやすい点が難点だが、様々な地域や通貨に分けて投資することで、リスクを抑制できる。GPIFは2021年3月の時点で、15ヵ国以上の資産に分散投資している。

4.株式資産を一定割合組みこむ

あらかじめ金利と償還金の受取期限が決まっている債券は、元本を保全してくれる安全資産ではあるものの、超低金利時代の現在、高リターンは期待できない。コロナ禍で超低金利がさらに長期化すると想定されている環境では、なおさら収益の高い投資対象が必要だ。

短期的な価格変動リスクの観点から見ると、株式は債券よりリスクが大きいかもしれないが、長期的に見れば十分な収益が期待できる。

投資にリスクはつきもの

市場は常に変動しており、未来を正確に予想することは不可能だ。必勝の投資戦略も存在しない。どのような投資にもリスクがあることを理解した上で、念入りに状況を調べること、鋭利な洞察力と冷静な判断力を養うことも、投資を長く続けるのに重要な要素である。