資産運用において、「長期投資を心がけよう」という言葉を目にする機会は多い。しかし、そもそも長期投資と短期投資とは何が違うのだろうか。また、長期投資にはどんなメリット・デメリットがあり、成功のポイントはどんなところにあるのだろうか。

目次

  1. 長期投資とは何か
  2. 長期投資と短期投資の違い
    1. 長期投資
    2. 短期投資
  3. 長期投資のメリット
    1. 複利効果を高めやすい
    2. リスクを低減できる
    3. 値動きに左右されにくい
    4. 短期投資に比べてコストがかからない
    5. 流動性プレミアムを得やすい
  4. 長期投資のデメリット
    1. すぐに(大きな)利益を得られない
    2. 将来の予測が難しい
    3. 失敗すると時間のロスが大きい
    4. 若いときの方が始めやすい
  5. 長期投資で成功するためのポイント
    1. 基本ポートフォリオを定めて定期的にリバランスをする
    2. 急落で慌てて売らない
  6. 長期投資を行うときに活用したい「つみたてNISA」
    1. 1.利益が非課税のため、複利効果をさらに高めやすい
    2. 2.非課税期間が長い
    3. 3.あらかじめ長期投資に適した商品が用意されている
  7. 安定的な資産運用が期待できる

長期投資とは何か

長期投資
(画像=PIXTA)

まず、長期投資の定義を確認していこう。「長期投資」とは、短期間で売買を繰り返すことなく、長期にわたって投資商品(金融商品)を保有し続ける投資のことを指す。

長期投資の対となる言葉に「短期投資」がある。こちらは、短期間で売買を行う(繰り返す)投資のことだ。「何日未満の保有が短期投資に該当し、何日以上の保有が長期投資に該当する」という明確な線引きはないが、長期投資というと、一般的には年単位で保有することを指すことが多い。

長期投資と短期投資の違い

ここからは、長期投資と短期投資の違いについて、改めて確認していこう。

長期投資

長期投資とは長期にわたって投資商品を保有し続ける投資のことだ。じっくりと投資対象の価格上昇を待ち、コツコツとインカムゲイン(資産の保有時に得ることができる収入)を積み上げていくことで、利益を狙う投資方法と言える。

長期投資は、資産運用初心者や安定して資産形成をしたい人、忙しくて投資に時間を割けない人などが向いている。

短期投資

短期投資とは短期間で売買を行う投資のことだ。投資商品を保有している期間が短いため、基本的にはインカムゲインよりもキャピタルゲイン(資産の値上がり益)を狙う投資方法と言える。

短期投資は、目先の動きを予測して売買を繰り返すため、重要なことは日々のボラティリティ(資産価格の変動幅)となる。ボラティリティが小さく、値動きが安定した資産であると、日々の値動きから利益をあげづらい。そのため、そうした資産を投資対象として短期投資で大きな利益を得るのは難しい。

もっとも、短期投資は売買を繰り返す投資スタイルのため、毎回の投資の成功確率が高ければ、少ない投資元本でも、短期間で大きな利益をあげることができる。そのため、長期投資に比べて資金効率が高い投資方法と言える。

ただし、これは「毎回の投資の成功確率が高い場合」という仮定の話であり、毎回の投資の成功確率が低い場合は、取引を繰り返せば繰り返すほど投資元本は減ってしまう。

一般的に短期投資は、高い運用スキルや綿密なリスクコントロールなどが必要とされており、資産運用初心者が実践するのは難しい投資方法だ。中級者以上かつ、早期に資産形成したい人や投資に時間を割くことができる人が向いている。

長期投資のメリット

長期投資の主なメリットについて見ていこう。

複利効果を高めやすい

運用で得た利益を再び投資することで、利息が利息を生んで、雪だるま式に資産が増えていく効果のことを「複利効果」と呼ぶ。効率的な運用を行うには、複利効果を高めることが重要だ。

例えば、投資元本100万円を年利10%で10年間「複利運用」すると、10年後の資産額は約259万円までふくらむ。一方、同様の条件で「単利運用」(単利とは元本に対してのみ利息を計算する方法)すると、10年後の資産額は200万円だ。複利効果によって、10年間で約59万円の差がつくことになる。

そして、「投資期間」と「複利効果」には相関性があり、投資期間が長いほど、複利効果も大きくなる傾向がある。つまり、投資期間が長いほど、単利運用とのパフォーマンスの差は大きくなりやすいということだ。長期投資を行えば、資産運用において重要な複利効果を高めやすいメリットがある。

とはいえ、これは狙いどおりに投資した金融商品が値上がりを続けた場合であり、値動きによって利益を得ることも失うこともある。当然、下がり続ければ大きなダメージを負うことになる。

リスクを低減できる

原則として資産価格は常に変動しており、ときには大きく動くこともある。しかし、長期投資は投資期間が長いため、投資による価格変動リスクが小さくなり、安定した収益が期待できる。投資期間を長くすることで、運用成績の悪い時期と良い時期がならされ、運用成績が安定しやすいというわけだ。

「長期投資を行えば必ず利益が出る」というわけではないが、運用期間が長ければ長いほど平均収益率は安定していく傾向にあり、リスクの低減につながる。

値動きに左右されにくい

短期投資であれば、頻繁に金融市場の動向や保有資産の値動きを確認する必要がある。特にデイトレードを行う場合は、パソコン画面の前に張り付いておく必要があるだろう。しかし、「この資産は長期で保有する」と決めていれば、頻繁に値動きを確認する必要はない。

一定の間隔では確認した方が良いものの、時間を必要以上に割かなくて良いことはメリットと言えるだろう。長期で保有すると決めていれば、日々の騰落に一喜一憂しなくて済むため、心理的負担の軽減にもつながる。

短期投資に比べてコストがかからない

長期投資であれば、売買コストがかかるのは「最初に投資したとき」と「将来に売却したとき」の2回のみだ。一方、短期投資であれば、売買するたびに売買コストがかかる。短期投資の場合、1日に何度も売買するケースもあるため、1回ずつの手数料は少額だったとしても、長期間の累計で見れば大きな差になるだろう。

コストは確実に運用パフォーマンスを蝕むものだ。累計コストが低いに越したことはない。なお、金融商品の中には、保有中に保有コストがかかるものもあるが、基本的には短期投資に比べてコストがかからないと言えるだろう。

流動性プレミアムを得やすい

長期投資を行うと「流動性プレミアム」を得やすいこともメリットの一つだ。流動性プレミアムとは、「運用期間が長くなるほど不確実性が大きく、流動性が低くなるため、その対価として有利な運用条件になりやすい」ことを意味する。

運用期間が1年の投資商品と10年の投資商品が同じ利回りであったら、どちらを選択するだろうか。流動性を担保するため、前者を選ぶ人が多いはずだ。つまり、後者は前者よりも高い利回りを提示しないと、なかなか投資家は集まらない。

経済動向や金利状況、投資商品の内容にも左右されるため、長期投資であれば必ず流動性プレミアムを得られるわけではないが、一つのメリットと言えるだろう。

長期投資のデメリット

長期投資にはどのようなデメリットがあるのだろうか。主なデメリットについて解説する。

すぐに(大きな)利益を得られない

長期目線の投資であれば、購入した金融商品をすぐに売却する選択肢はなくなるため、仮に短期で価格が大きく上昇しても保有し続けることが前提になり、売却益は得られない。

短期的に売買するなら、それは短期投資となり、売買する場合は都度手数料が発生し、相応のリスクも背負うことになる。

長期投資はじっくりと投資対象の価格上昇を待ったり、コツコツとインカムゲインを積み上げていったりする投資方法だ。価格変動リスクが抑えられやすい、投資コストを抑えられるといったメリットも享受できなくなる。長期投資をするならば、すぐに利益を得るのは難しいという前提のもとで運用を進めていこう。

将来の予測が難しい

将来の予測は、期間が長くなればなるほど難しくなる。

当初の予測から乖離してしまった場合は、「サンクコスト効果」にも注意したい。サンクコスト効果とは、それまでに費やした労力やお金、時間などを惜しむ気持ちが今後の意思決定に影響を与えることだ。

当初の予測から乖離してしまっているのに、「ここまで時間をかけて投資をしてきたのだから」という気持ちが邪魔をして、撤退(売却)の判断が鈍ることがある。将来の予測は難しいということを前提に、判断を間違えないようにしよう。

失敗すると時間のロスが大きい

長期投資は、基本的に年単位で運用をすることになる。場合によっては10年や20年といった単位で運用することもある。もし、10年間にわたって長期投資を実践し、残念ながら運用に失敗してしまった場合、10年間をロスしてしまうリスクがあることも頭に入れておこう。

若いときの方が始めやすい

長期投資の期間を確保できない人は、そもそも長期投資を実践することができない。例えば、70歳の人が30年単位の長期投資を行うのは、不可能ではないものの、なかなか難しい。投資期間にもよるが、長期投資は、若いときの方が始めやすいと言えるだろう。

長期投資で成功するためのポイント

ここからは、長期投資のメリット・デメリットを踏まえ、投資で成功するためのポイントについて解説する。

基本ポートフォリオを定めて定期的にリバランスをする

長期投資を実践する場合、基本ポートフォリオを定めて、定期的にリバランスをするようにしたい。どのような基本ポートフォリオが適しているかは、各人の詳細によって異なるが、例えば「国内株式25%、海外株式25%、国内債券25%、海外債券25%を基本ポートフォリオとする」といった具合だ。

運用を続けていくと、金融市場の動向によって段々と基本ポートフォリオから資産割合が崩れてくる。これを元に戻す作業がリバランスである。リバランスの頻度に関しては、「年1回行う」や「実際の資産割合が、基本ポートフォリオから5%崩れたら行う」など、一定の条件を設けることが一般的だ。

基本ポートフォリオを定めて、定期的にリバランスをすることで、例えば、「最適なポートフォリオを保てる」「リスクを取りすぎることを防げる」「パフォーマンスの改善が期待できる」といったメリットがある。まずは基本ポートフォリオを定めるところから始めてみよう。

急落で慌てて売らない

金融市場はたびたび大きなショック(急落)に見舞われる。そのときに慌てて売らない、狼狽売りをしないことが重要だ。狼狽売りとは、相場の急落に動揺して、慌てて売り注文を出す投資行動を指す。基本的には、基本ポートフォリオに沿ってリバランスをかけると良いだろう。

過去の急落局面は、長期的な視野で見れば、絶好の買い場になっていることも多い。基本ポートフォリオの考え方や、保有している投資商品によって判断は変わるため、一概には言えないものの、状況次第ではむしろリスク資産の買い増しを検討しても良いだろう。

狼狽売りの最も悪しき部分は、深い考察もなしに、相場急落に慌てて、反射的に売り注文を出すことだ。相場急落の際は、狼狽売りするのではなく、急落の要因や保有資産の状況、今後の展望、基本ポートフォリオとの乖離状況などを考慮しながら行動するようにしよう。

長期投資を行うときに活用したい「つみたてNISA」

長期投資は、特に何も制度を利用せず、通常通りに投資商品を購入しても問題はない。しかし、条件が合えば、長期投資に適した制度を活用することでより効率的に運用ができる。例として「つみたてNISA」を挙げてみよう。

つみたてNISAとは、少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度だ。2018年1月からスタートしている制度であり、新規投資額は毎年40万円が上限で、非課税投資枠は20年間(最大800万円)である。保有している間に得た分配金と、値上がりした後に売却して得た利益が購入した年から数えて20年間課税されないという特徴がある。

ここからは、つみたてNISAが長期投資に向いている理由を3つ紹介しよう。なお、つみたてNISAの新規投資額は毎年40万円が上限のため、それ以上の大きな金額を投資することはできない。また、あらかじめ定められた商品以外は購入できないことにも注意が必要だ。

1.利益が非課税のため、複利効果をさらに高めやすい

資産運用がうまくいった際に、避けて通れないのが「税金の負担」だ。投資信託や株式などの利益には、原則として20%(所得税15%+住民税5%)がかかる。平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額に2.1%を乗じた額を追加で納付するため、15%×2.1%=0.315%を足した「20.315%」がかかる。

本来、この税金は運用パフォーマンスを確実に蝕む要因だが、つみたてNISAであれば非課税となり、税金が取られない。そのため、再投資にまわせる金額が「税金が取られる場合」に比べて大きくなり、複利効果が高まるというわけだ。

前述のように、「投資期間」と「複利効果」には相関性があり、投資期間が長いほど、複利効果も大きくなる傾向がある。もともと長期投資は複利効果を高めやすい投資方法だが、つみたてNISAを活用すれば、さらにその効果が高まりやすいというわけだ。

2.非課税期間が長い

「利益が非課税のため、複利効果をさらに高めやすい」といっても、非課税期間が短ければメリットは限定的だ。その点、つみたてNISAの非課税期間は「最長20年」と比較的長い。つみたてNISAの制度がなければ、20年単位での運用なんて考えもしなかったという人も多いのではないだろうか。

基本的には投資期間が長いほど「複利効果を高めやすい」「リスクを低減できる」「流動性プレミアムを得やすい」といったメリットをより大きくすることができる。比較的長い非課税期間が設定されていることも、つみたてNISAが長期投資に向いている理由の一つだ。

3.あらかじめ長期投資に適した商品が用意されている

つみたてNISAで購入できる商品(投資信託)は、金融庁が長期の積立・分散投資に適したと認めるもののみだ。例えば「販売手数料はゼロ」「信託報酬は一定水準以下」「分配頻度が毎月でないこと」「信託契約期間が無期限または20年以上であること」などが選定条件となっており、長期投資に適している投資信託が選ばれている。

選ぶ工数を削減できることもメリットだろう。一般社団法人投資信託協会の発表(投資信託の全体像2021年6月末時点)によると、投資信託の本数は全体で1万3,891本、公募投信だけでも5,959本存在する。

この中から、自分で「長期投資に適したもの」を探し出すのは一苦労だが、つみたてNISAでは、すでに金融庁が199本まで絞っている(2021年6月18日時点)。

金融庁のお墨付きだからといって必ず利益が出るわけではないが、あらかじめ長期投資に適した商品が用意されていることも、つみたてNISAが長期投資に向いている理由の一つと言えるだろう。

安定的な資産運用が期待できる

元本割れリスクのある商品で運用する限り、長期投資を行ったとしても、運用がうまくいかない可能性はある。しかし、長期投資にはメリットもデメリットもあるものの、総合的に考えると、安定的な資産運用が期待できるだろう。

長期投資を検討している人や実践している人は、本稿で紹介した成功のポイントを意識し、つみたてNISAの活用も検討してみてはいかがだろうか。