老後資金の目標額に向けてコツコツと資産を築いているものの、「経済的にゆとりのある老後を送る上で、本当に十分な金額なのだろうか」と不安に感じることもあるだろう。多くの人は「貯めること」に専念するあまり、「使うこと」に関する情報を見落としている。重要なのは「増やしながら使う」という考え方だ。

近年、注目されている投資信託を利用した「正しい資産の取崩し方」を知れば、老後資金に対する不安を軽減できるだろう。

目次

  1. 人生100年時代、2,000万円貯めても足りない?
  2. 2つの資産の取崩し方
    1. 1.「定額」取崩し
    2. 2.「定率」取崩し
  3. それぞれのメリットとデメリット
  4. 「資産運用=お金を貯める」という固定観念を捨てる

人生100年時代、2,000万円貯めても足りない?

運用資産,正しい取崩し方
(画像=PIXTA)

生活に必要な金額は人それぞれ異なるとはいえ、退職後、年金だけですべての出費を賄うとなると、以前と同じ生活水準を維持するのは難しい時代になった。

数年前に「2000万円問題」という言葉が話題になった。あくまで収支の平均値から算出したものだが、このままでは各家庭の老後資金が2000万円足りなくなるのではないか、という試算だ。

2000万円という金額は平均収入と平均支出から割り出したもので、年々その数字は変わり、いつしか2000万円問題という言葉はあまり耳にしなくなった。とはいえ、人生100年時代と言われ、定年後20年、30年と生きていく中で、老後資金に不安を抱えている人は少なくないだろう。

現役でバリバリ働いて、あるいは投資などで一定の資産を築いたとき、老後を見据えて資産をどう取崩していけばよいのだろうか。

2つの資産の取崩し方

年金以外の収入を確保できるか否かが、理想の老後実現のカギを握っている現在、重要なのは「資産寿命を延ばす」という考え方だ。単に預金を切り崩すのではなく、限られた資産を上手に増やしながら使い、できるだけ長く資産を維持することを目指す。

このような背景を踏まえて、近年は老後も一定の生活水準を維持するために、投資信託などの金融商品を利用した資産運用を検討する人が増えている。投資信託は長期・積立・分散投資に適した投資対象として、「つみたてNISA」にも組みこまれている金融商品だ。

そして、この投資信託を一定のペースで自動的に現金化する手法として注目されているのが「定時取崩し」である。簡単に説明すると、保有している信託を少しずつ解約(売却)・換金するという仕組みだ。取崩し方には、以下の2つがある。

1.「定額」取崩し

毎月5万円など一定期間ごとに一定の金額を解約して、取崩す方法。

2.「定率」取崩し

毎月資産の1%など、定期的に残高の一定比率を解約して取崩す方法。定額のように毎月の取崩し額は一律ではなく、年月とともに減少していく。

それぞれのメリットとデメリット

次に、それぞれのメリットとデメリットと、運用資産額3,000万円という想定でシミュレーションを見てみよう。

定額の場合は受け取る額が安定しているため、計画的にお金を使うことができる点が最大のメリットだ。しかし、基準価額(投資信託の価格)が低い場合は多くの口数を売却することになり、最終的には予想より早く残高が尽きてしまう事態も想定される。また、毎月の受取額を高めに設定すると、資産寿命が短くなる。

一方、定率は定額より資産の減少を抑えることができるため、資産を長持ちさせる効果が期待できる。例えば、65歳から3,000万円を年率2%で運用し、 隔月30万円取崩すと想定した場合、定額では隔月一律で30万円を受け取れるが、21年目(86歳)で残高が底をついてしまう。一方で定率が隔月1%(年率6%)ならば同時期には受け取る金額が13万円まで減るが、残高は1,286万円残っている。残高がゼロになるのは120歳を超えてからだ。

以下、一定期間経過時の隔月の受取額と残高を比較した。

  65歳 70歳 75歳 80歳 85歳 90歳
定額
【受取額30万円】
3,000万円
(30万円)
2,370万円
(30万円)
1,674万円
(30万円)
905万円
(30万円)
56万円
(30万円)
0円
定率
【隔月1%/年率6%】
3,000万円
(30万円)
2,452万円
(25万円)
2,005万円
(20万円)
1,639万円
(17万円)
1,339万円
(14万円)
1,095万円
(11万円)

また、定率の場合、初期にまとまった額を受け取れるため、ゆとりのある生活を満喫したり、他の資産運用に回したりすればさらなる利益を期待することも可能だ。ただし、保有残高の減少に従って取崩し額も減少し、受け取る額が安定しないというデメリットもある。

毎月一定の収入が必要な人は定額、老後の資金計画に余裕がある人、資産を長持ちさせたい人は定率を選ぶとよいだろう。

「資産運用=お金を貯める」という固定観念を捨てる

経済的に充実した老後生活を目指す上で重要なのは、リタイア期に突入したら運用は続けつつ、年齢の経過とともにリスク資産の比率を低くしていくことだ。自分の生活環境や経済状況に合った資産運用法を選び、「老後資金=お金を貯める」という固定観念を捨て、「理想の老後を送るためにはどのようにお金を増やし、使うべきか」という視点に切り替えてみてはいかがだろうか。